やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「痛み」を観てきた感想(ネタバレ)


 痛みを感じない体の男性ナムスンと、血友病の女性ドンヒョンが出会うお話です。
 ナムスンは自分の体を利用して借金取りをしています。相手を傷つけることなく自ら傷つくことで相手を困惑させて借金を回収するというやり方です。また、彼は殴られ屋もやっています。
 ドンヒョンは父の借金を返済しなければならないのですが、彼女の前に借金取りとしてナムスンが現れるわけです。
 2人の恋路が、基本的なお話の流れです。
 さて、ドンヒョンは血友病ということで、普通に考えたら映画の最後はドンヒョンの死亡ということになりそうですが。そうはなりません。ナムスンは土地の住民を立ち退かせるための犠牲者となるのです。再開発事業者がナムスンに犠牲者となることを依頼するわけです。正しくは、ナムスンの兄貴分ボンノが再開発事業者から無理やり犠牲者となる仕事を請けさせられるわけです。
 それで、ナムスンは犠牲者として死んでしまうのです。
 この映画を観た同じ日、私は「パーフェクトセンス」を観ています。さらに、殴られ屋として借金を返済する男の映画「CUT」もちょっと前に観ました。それらの映画のことが少し過ぎりながらの鑑賞となりました。
 まず、パーフェクトセンスに比べたら無痛病の男と血友病の女の恋路のほうがよほど見ごたえがありました。また「CUT」並みにナムスンが痛々しい状態になるのもまたなかなかきついものがありました。
 不器用で感情を表に出すことがないナムスンと、血友病だけどたくましいドンヒョンの日々の慣れ合いが微笑ましいですよ。
 病気をネタにして観客を泣かせようとする安易な作品ではないかという疑いもありました。しかし、韓国の首都ソウルが抱える暗い面もまたこの映画では重要な部分を占めています。くだらん恋愛映画ではなかったわけです。病気ネタで泣かせるだけではありません。
 出演者の顔がそれぞれの役柄にぴったりなのもすばらしいです。ウサギとか、ナムスンの兄貴分ボンノとか、ナムスンとドンヒョンの二人もぴったりです。
 ひとつだけ文句を言うとしたら、最後です。ナムスンのもとへ急ぐドンヒョンは血友病なのに釘を踏んでしまい大けがをします。それでもドンヒョンは足を引きずって、ぐったりと倒れるナムスンの傍に寄るのです。息を引き取るナムスンと泣き崩れるドンヒョン、そこで映画は終わります。それなら、釘を踏む場面はいらないと思うのですが。血友病にとって危険な大けがをしたらそこからまた次の展開があるはずなのに、何もないままでした。だったら、釘を踏ませる必要はないでしょうに。
 というわけで、釘以外は良い映画でした。韓国は良質の映画を多く生み出していますが邦画はそうでもないと思います。それが悔しいですよ。そろそろ邦画も全体の底上げが欲しいところです。