やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「予告犯」感想


2015年6月公開
監督:中村義洋
脚本:林民夫
原作:筒井哲也「予告犯」
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あらすじ:始まりは動画投稿サイトに投稿された動画だった。新聞紙をかぶった男が不祥事を起こした食品加工会社への制裁を予告した。実際にその会社で火災が発生する。犯人は複数犯であり、予告を繰り返した。いつしかネット内での賛成意見が大きくなっていく。警視庁サイバー犯罪対策課警部吉野(戸田恵梨香)はシンブンシ一味(生田斗真)を逮捕できるのか。
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 この手の邦画は観ないのですが、なんだかよくわかんないけど観ちゃいました。
 監督さんの名前は「ほんとにあった!呪いのビデオ」シリーズでよく存じております。ただ、中村監督の映画作品は何も観ていません。
 結論から申しますと、面白かったです。
 人生に挫折したり、社会不適合者などの4人組が殺人を犯してしまったことをきっかけに「シンブンシ」となります。4人の境遇と彼らを追う吉野警部の境遇と主張になかなか観てて辛いものがありまして、社会不適合者の一員としましてはシンブンシを応援してしまうのでした。
 吉野警部も苦しい幼少時代を送った過去がありました。しかし、その後は自分の努力で警視庁の警部へと上り詰めたわけです。吉野警部からしてみれば派遣や無職や社会の弱者は努力の足りない怠け者ということです。
 しかし、シンブンシからしてみれば自分の努力だけではどうにもならない部分だってあるわけですよ。ねえ、そうだよねえ。シンブンシ「がんばることができた人は幸せです」のセリフが沁みます。怠けているだけの人間もいて自業自得なんでしょうけど、やっぱり弱者への保護は必要だと思います。
 社会保障制度は、社会が弱者を保障するする制度ではなくて社会を保障する制度でもあるわけですよ。あんまり弱者を保護しないでおくと犯罪が増えて良くないことが起こるよという意味で、明日は我が身、自分の今の生活を守るという意味も含めて社会保障制度の充実は必要です。
 ただ、シンブンシたちの本当の目的というのがあるわけですね。SNSで不適切発言した者への制裁、企業への制裁、それらは実は、フィリピンから死ぬ思いをしてやって来たネルソン・カトウ・リカルテの夢をかなえるためだったのです。日本人である父親に会いたいがために日本にやってきて苦しい思いをして死んでしまった彼を、遺骨になってしまったけどそれでも父親に会わせたいからシンブンシは計画を実行したのでした。
 その計画に、吉野警部も巻き込まれて、吉野警部は遺骨を父親に渡すこととなりました。
 インターネットの問題と非正規雇用問題を絡めつつも本当はお涙ちょうだいの父親探しだったわけです。
 それよりも一番感心すべきなのは、インターネットを絡めた映画ながら、PCの操作中にカチャカチャピーというアホみたいな音がしない点だと思います。今でもキーボードを操作していたら恥ずかしい音がする映画があるじゃないですか。
 真の目的がこんなものだから、というわけではないでしょうけど、なぜシンブンシ一味がここまで作戦を実行できたのか、どのようにして拉致監禁、飲料への異物投与などを為し得たのか、そのあたりはいっさい描いていません。それがまた疑問をはさむ余地を与えていませんし、すっきりした映画になってよかったのではないでしょうか。
 最後に、スタッフロールでは歌詞無しの曲が流れました。衝撃的です。売りたい歌手の曲を流すものとばかりに思っていたのですが。
 この作品に好意を持ちました!