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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「違国日記」鑑賞感想

ポスター画像

2024年6月公開

監督、脚本、編集:瀬田なつき

原作:ヤマシタトモコ

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あらすじ:両親を事故で亡くした朝を母方の伯母の槙生が葬儀の場で引き取った。勢いで朝を連れてきたが、槙生は元カレの笠町や親友の醍醐に支えられながら朝との生活を続けていく。

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 139分という長尺ですが、それでも原作を消化しきれていない感が原作未読の私にも感じられました。

 それよりも朝の両親が死ぬ原因となった事故がちょっとありえない状況でして、作品に入っていくことができませんでした。開始数分で事故が起きて朝の目の前で両親が亡くなります。道の駅のような複雑な形状の駐車場で両親が乗り込んだ車にトラックが突っ込むというものです。かなりの速度で突入しないと死亡まで至らないと思いますが、道の駅というそれほど広くなくて場内のカーブもあるところへ駐車目的以外に考えられないトラックが高速で突っ込むのは無理があります。道路脇に停車している状態でトラックが突っ込めばいいのに、なぜわざわざそんな状況にしたのでしょう。

 さらに、事故後に警察が亡くなった母を解剖するというのです。え? どうして? 車の事故死で解剖って意味がわからないのですが。不審な死に方でもないし、そもそも不審な死に方なのに滅多に解剖しない日本なのに、なぜですか。

 その後も朝には母の声が聴こえる演出が複数ありました。そのときの演出が声だけではなく周囲から突然ヒトがいなくなって朝だけになるなどのホラー演出がありました。この映画はやさしくてほんわかした雰囲気なのに一部演出がホラーになるのは違和感がありました。

 朝の友達のえみりという子はクズだと思います。一度朝を裏切っています。その一度というのは朝の両親が死んだことを学校に知らせた件ではなく、大勢の子たちといっしょに歩いているえみりを呼び止めた朝を無視したときです。残酷な描写ですけど、それがなぜか無かったことのようにえみりとの関係は続きます。いったいどういう演出なのでしょう。残酷えみりを描くなら別に30分ほどの描写が必要になると思うのですが、そのあたりのえみりが描かれないからわけわからんことになります。

 だからこそ、事故の様子をばっさり切って、学校での関係もばっさり切って、朝と槙生の描写に集中した映画にしてしまえば良かったのではありませんか。原作のいろいろを詰め込みすぎて消化しきれていない印象があります。原作は11巻あるとのことですが、2時間にまとめるのがそもそも難しそうな題材です。

 槙生と、槙生の親友の醍醐と元カレの笠町と後見人関連で助けてくれる塔野がすっごく良いキャラでした。それぞれの日々を別の映画で観たいくらいです。そちらへ振り切った映画にしてほしいです。

 槙生の「いってらっしゃーい」とか醍醐の餃子とか笠町のワインとか塔野の質問とか、かなり良かったです。