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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「ソロモンの偽証 後篇 裁判」感想(ネタバレ)


2015年4月公開
監督:成島出
脚本:真辺克彦
原作:宮部みゆき「ソロモンの偽証」
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あらすじ:開廷まであと10日余りとなったところで、神原君は大出君を被告として出廷させることに成功した。証人の出廷も続々と決まっていく。いよいよ5日間の裁判が始まった。藤野さんと神原君が証人に尋問をしていく。裁判の途中で明らかになった真実は、裁判の行方を左右する。
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 *この子たちは中学生です。
 上記の一文を常に画面の隅に置いておくべきでしょう。前篇のときも(こんな中学生いるのかな)と思っていましたが、いざ裁判となるとその違和感がますます大きくなりました。前篇とのギャップがたいへん大きいです。
 前篇はこんな中学生いるのかなという以外は、中学生が裁判をやる荒唐無稽さを感じつつもテンポの良い流れにぐいぐい引き込まれて、それなりに楽しみました。
 しかし、後篇はなんだか空気が違いませんか。
 学校周辺に張り付いていたマスコミのおじさんが藤野さんと出会う場面ですが、おじさんの顔がアップになりました。それはいったい何を意味するのか。その後おじさんは出てこなかったです。名前は出ましたけどね。物語にほとんど絡んできませんでした。顔のアップは、藤野さんの強い決意に気圧されたことを表現しただけということですか。そうなのですか、はいかいいえで答えてください。
 おじさんのアップ以外にも藤野さんの謎のカメラ目線もありました。前篇ではこんな撮り方をしていなかったと思うのですが。
 ほかにもおかしいところはあります。大出君の家の家事は保険金目当ての放火でした。その犯人が大出君のアリバイ立証に必要だったのですが、犯人の弁護士が出廷しました。その弁護士が放火犯のことを「犯人」と言いました。いやいやいや、ダメだろ。その放火犯だって本物の裁判の前だから有罪か無罪か決まっていない状態ですよ。ということは容疑者か被告なんです。まだ犯人ではありません。それなのにこの弁護士ときたら「犯人」と言いました。裁判の映画なんだから、そういうところは正していただきたいです。
 そもそも藤野さんと神原君の尋問のやり方も少し誘導している感じがありました。「異議あり! その質問はこの事件と何の関係もありません!」くらい言ってほしかったですね。
 結局、柏木君が学校の屋上から飛んだとき、屋上で会ったのは神原君でした。だったら、なぜそのことを裁判をやろう!と言う前にもっと早く言わなかったのでしょう。藤野さんが神原君に尋問しましたが、その理由は釈然としないものでした。この裁判なんて、所詮は神原君の仕掛けた茶番なんですよ。この裁判の目的は、大出君の悪行三昧をぶちまける、校長先生などの名誉を回復する、というものなんです。判事の井上君が単なるお飾りでした。
 三宅さんは無駄に傷ついただけだろうし、松子ちゃんの名誉を無駄に汚しただけではないですか。出廷させないほうが良かったでしょう。まあ、最後は反省したようなので良しとしましょうか。
 後篇で最も気になった部分は、柏木君という人間です。正直なところ、柏木君は面倒くさい奴だなと思いました。そんな感想しか持てないくらいの子なんですよ。モリリンのおっしゃるとおりです。これじゃあまるで柏木君は死んで当然じゃないですか。柏木君を救うなんて到底無理な話です。
 こんな映画を見せられたら「自殺を防ぐにはどうしたらいいんだろう」なんて考えなくなります。「こうすれば自殺は防ぐことができた」という答えを一端でも見せてほしいです。柏木君のキャラ設定がひどいからこんなことになったと思います。だいたい、柏木君のひどい面を神原君と藤野さんが裁判でぶちまけたわけですよ。その裁判を傍聴している柏木君の両親はいったいどんな気持ちだったのでしょうかね。
 あとは、空気が多すぎです。前篇で裁判を妨害していた先生などが後篇は空気でした。大出君の悪行に加担した2人の中学生が後篇にはまったく出てきません。
 モリリンを瓶で殴った女性の動機などがよくわからないままです。あの女性を追い詰めたのはその夫でして、夫を平手打ちしたモリリンは偉いです。
 最後の最後に、柏木君を殺したのは僕だから罰してくれと騒いだ神原君は藤野さんたちと楽しそうにしていました。裁判で真実が明らかになれば辛くなるだろうと言われていたのになんだかすがすがしい終わり方です。沈痛な面持ちの松子ちゃんの両親や三宅さんを後目に、楽しそうにしている藤野さんたちは、あかんでしょう。
 というわけで、真実が明らかになってよかったねー。ねー。