原作は20年以上前にだいたい読みました。確認したところ1995年7月17刷となっています。当時は青き波濤(羅門祐人)なんかも読んでいました。日本の勝つお話が好きということです。でも、高城男は違うなあと思ったのです。勝ったあとのお話ですもんねえ。勝ってしまえばあとは落ちる一方です。
原作との違いはたくさんありますが、田上のキャラが全然違っていますね。そもそもお話が大きく変わっています。同じ部分は、世界が日独に占領されている、高い城の男の存在がカギになるという程度でしょう。
この世界なら国鉄が赤字で苦しむこともないのでしょう。太平洋戦争で破壊された鉄路の復旧や戦後の輸送量減少やGHQによる経営体制の変革がないのだから、黒字のままですよ。新幹線開業も大幅に早まることでしょう。一方ナチスは超音速旅客機がバリバリ飛んでいてモノレールが張り巡らされて、ジェット推進のモノレールが走るのでした。ジェット推進モノレールが高速でカーブを通過する場面がありましたけど車内で立っている人がよろめきませんでした。いやあ、ドイツの技術はすごいですね。
さて、今作ですが、やっぱり作中で「ジャップジャップ」と連呼していて机をバンと叩く手を止めるのに必死になります。こういう感じの作品では日本人がやたらと黄色い猿と言われるのでたまったもんじゃありません。
若い皇太子が出てきますけど、平成天皇は1933年生まれなので本作だと29歳ということですね。まさに平成天皇の皇太子時代ということですね。皇太子よりも皇太子妃が出てきますけども。
主人公のジュリアナが合気道を習っているのに、持ち物を奪われる場面でなぜ合気道を使って抵抗しなかったのでしょうか。ジュリアナの合気道はシーズン1で習っている場面がある以降はシーズン4で少し生かされる程度です。もうちょっとなんとかならなかったのでしょうか。
ユダヤの血を引いている召使をクビにしただの、日本は人種政策が甘いだの、クソどうしの会話が展開されますし、白人を使役する日本人、日系米人と日本人の違いにも言及しますし、人種問題が地獄です。日米の立場が逆転したとき迫害される日本人も地獄です。だいたいですね、この日帝は植民地政策に失敗してるんですよ。欧州列強が植民地政策を成功させた歴史を学んでいないのかっていう話ですよ。日帝は学習能力がないんですかね。アジア人には他国を支配するなんて向いていないのかもしれません。
日系と黒人と白人の叩き合いが地獄です。
ナチスの場合は、白人が白人を支配しているのでやりやすそうです。白人以外はすべて殺してしまうという徹底ぶりです。ところで、ナチスには何をしてもいいのよというのは少し疑問があります。フィクションではナチスがやたらめったらボコボコにされますが、それってどうなのでしょうか。だけど、ナチスに対しては何をしてもいい、しっかりした根拠があるというのをどこかで見た気がします。
あと気になるのは、日本人どうしなのに英語をしゃべっています。だけど、ドイツ人どうしではドイツ語を話しています。なぜですか。それと、日本軍がカタカナの単語を話していますね。この世界の日本では敵性言語とかないんですかね。あと、作中で仏式の結婚式を見ました。仏式は見たことがないのであれで正しいのかどうかわかりませんが、きっと正しいのでしょう。そういえば、日本人がやたらとお辞儀をしますね。そのお辞儀が汚い人もいまして、マナー講師に怒られそうな気がします。上体を曲げるとき腕の形が汚いと思います。それにですね、ミスして切腹なんて、そんなことをやってるからいつまで経っても日帝はダメなんですよ。皇太子妃は政治に口出しするなというそこの軍人さんも、軍人が政治に口出しするなですよ。
サンフランシスコに日本海軍艦隊が現れた場面は胸熱です。大和型戦艦もいますし、新型空母もいます。そうか、この世界の日本も大和型を作ったのですね。よくそんなので戦争に勝利できましたね。真珠湾攻撃や日中戦争などすべての戦いで奇跡的に勝利していったのでしょうね。オセアニアとアジアを支配する戦費もどうやって調達しているのやら。ちなみに、作中では日本陸軍が悪者で海軍は日帝の支配に疑問を持っています。
作中でも日本に対して石油輸出が止められてしまいましたが、どうしてそれで日本が困らないといけないのですか。東南アジアの石油を採掘すればいいじゃないですか。
しかし、日本は支配する力が弱まり、ナチスがつけ込もうとしているのでした。ナチスが強すぎます。欧州での支配体制が完全なものになっています。英仏の話なんかいっさい出てきません。挙句の果てには、並行世界にまで手を伸ばし、他の宇宙から技術を盗もうとする始末です。ついでに占領してやろうとしているようですね。
さて、問題のシーズン4第10話が最終話となりますが、第10話後半になっても物語の締めくくりを見えない感じになっています。クライマックスは少々わけわからんことになりました。ドラマ制作陣は完璧な結末だと胸を張っているらしいですが、どうせ言わされているだけでしょう。全然お話をたたむことができていません。
はい、というわけで、木戸警部のおどろおどろしい吹替は聴き応えがあります。クライマックスでヤクザにカチコミする場面はなんじゃそりゃですが、帝国に翻弄されるばかりの彼をぜひご覧ください。The Man in the high Castleでした。