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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「テッド・バンディ」鑑賞感想

ポスター画像
2019年12月日本公開

監督:ジョー・バーリンジャー

原作:エリザベス・クレプシャー

脚本:マイケル・ワーウィー

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あらすじ:1969年、ワシントン州シアトルのバーで恋に落ちたテッド・バンディとエリザベス・クレプシャーはエリザベスの娘といっしょに幸せな生活を送りはじめた。しかし、テッドが誘拐事件の容疑者として逮捕される。さらに、異なる州の誘拐事件や殺人事件の容疑もかけられて裁判となった。それでもエリザベスは愛し続ける。

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 実在する猟奇的殺人者のお話でして、結果的には1974年から1978年にかけて30人以上の女性を殺したことになります。

 その情報は知っていたので、殺しているときの様子を次から次へと見せられる作品なのかなと思ったら、違いました。

 目をそらすような場面はほとんどありません。裁判中に被害者の遺体が写真で見せられますが、見ていられない場面はそのときだけでしょう。テッド・バンディが何か悪いことをしている場面がありません。なので、テッド・バンディは犯人ではないのかもしれないと思いました。この映画は裁判の様子ばかりなのです。その裁判では確実な証拠が提出されませんでした。目撃証言と状況証拠ばかりなのです。

 周防正行監督の「それでもボクはやってない」という映画を彷彿とします。痴漢の罪で刑事裁判となった人を描いた作品ですが、胸糞悪い映画ですけど作中で彼が確実にやっていませんという様子は描かれていないよという指摘を知人からもらったことがあって衝撃的でした。

 さてアメリカといえば、確実な証拠がなければ決して有罪にならない正義の国だと思ってしまいますが、州によっては目撃証言や状況証拠でも有罪になるというわけです。

 30人以上の女性を殺した件も裁判などで明らかになったわけではありません。死刑判決となった彼が死刑間際に告白したのです。ということは、本当に彼がやったのかわかりませんよね。

 どう見ても彼がやった。そうなのでしょうけど、確実な証拠がないのであれば、無罪とするべきです。

 有名な殺人者の物語なのに、なぜこのような構成となったのか、最後のスタッフロールで理解しました。彼のことが大好きな女性の原作なのですね。女性視点なのですね。女性視点なのであれば、裁判中の彼の様子が見えてくるのはおかしいですよねとなります。ところが、この裁判のすごいところは全米初の公開裁判となったところです。テレビカメラが入って裁判を生中継したのです。だから、女性視点なのに裁判の様子がわかったわけです。

 公開裁判となったのも驚きですが、もうひとつは彼の弁護を彼自身が行ったことも面白い点です。彼は大学で法学を勉強していて、裁判前に図書館で対策を立てる様子もありました。

 この映画は、彼が犯人なのかどうかというよりも法律を勉強しているめっちゃ頭のいいやつであり、そんな彼を愛している女性がいる、全米初の公開裁判となった、そういうものを見せたい作品なのでしょう。

 公開裁判の判事がジョン・マルコヴィッチです。もう、それだけで裁判がこちらの頭に入ってこなかったりしました。ただ、この判事がテッドを犯人だと決めつけた状態で裁判を進めている節がありますので私はイライラします。

 法律とか裁判とか冤罪とか警察とか検察とか、そういう観点でいくと彼は犯人じゃないと思いますけれども、そのため、私は「どうか、確実な証拠が提出されませんように」と願っていましたけれども、最後の最後にとある場面がありましたよ。

 最後にもってくるんかーい! ぜひ劇場でご覧ください。感染症のこともあるので映画館の指示には従ってくださいね。