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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「リチャード・ジュエル」鑑賞感想

ポスター画像

2020年1月公開

監督:クリント・イーストウッド

脚本:ビリー・レイ

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あらすじ:アトランタ五輪のライブ会場で警備をしていたリチャード・ジュエルはカバンを発見した。爆発したが周囲の人々を避難させて英雄となった。ところが、FBIは彼を第一の捜査対象とした。また、それを地元紙が実名報道して彼は一転して地獄の状況に陥る。そんな彼を昔知り合っていた弁護士が救おうとするが。

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 まず、大切なのは、リチャードジュエルは捜査対象となりましたが逮捕されていません。ということは参考人ってやつであって容疑者ではありません。そもそも逮捕されてもまだ犯人と決まったわけではなく、犯人かどうかは裁判が決めることです。

 逮捕された人が本当に悪いやつかどうか、それは裁判が終わってみないとわからないのです。

 ところで、アメリカは推定無罪とかニューオーリンズトライアルなどの法廷が舞台となる映画は多くありますよね。法廷の場で有罪なのか無罪なのかを明らかにする、冤罪を防ぐ、そのような作品が多くあります。けれども、今作は逮捕される以前の状況なのです。

 アメリカというのは、法廷が正義を為す場なんだな、冤罪は法廷が防いでくれるんだな、アメリカの法廷というのは良いものなんだなと思っていました。日本とはちがう。証拠がなくても有罪にする日本とちがって、アメリカは証拠があるかどうかが大切なのです。

 だけれど、今作はまだ逮捕されていない人物が悪者にされて生活を破壊されていたのでした。アメリカというのは、日本と同じようにマスコミはクソだし、証拠がなくても捜査対象にしてしまう捜査機関が存在する、というわけで、なんだ日本と同じじゃないかというわけでした。人物の過去や人物がどういうにんげんなのかで犯人扱いしてしまうのです。作中の記者の「犯人が魅力的な人物でありますように」に戦慄します。

 あの記者については、手のひら返しがかなり気になりますけども、記者だったらもっとちゃんと裏を取ってから報道しろっつうの。

 リチャード・ジュエルがあんな感じの疑われてもしょうがない人物であるわけですよ。そういうところも、観ている我々を試している感じですよね。人物の印象だけで犯人かどうかを判断している我々を見透かしていますね。これは、この作品のバランスの良さでもありませんかね。あと、リチャード・ジュエルが南部の底辺白人なのです。しかも銃大好きですし、典型的な共和党トランプ政権支持者です。でも、彼なら銃愛好家でも問題はありません。いい人ですから。

 それはさておき、本作のリチャード・ジュエルはイライラさせてくれました。黙ってろって言ってんのに! 黙らないから! でも、それが彼の良さでもあったのですね。そんな彼を救うことになるサム・ロックウェルが最高です。サム・ロックウェル最高です。こないだ観たジョジョラビットに続いて最高です。リチャード・ジュエルにうんざりしつつも正義を為すサム・ロックウェルが最高です。

 途中のわざとらしいBGMはイーストウッド監督らしさでしょうか。しかもそのBGMが繰り返されるあたりは苦笑です。

 冤罪が世界からなくなりますように。