やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「AI崩壊」鑑賞感想

ポスター画像

2020年1月公開

監督、脚本:入江悠

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あらすじ:AIによって人々の健康が管理されるようになった2030年、開発者の桐生は総理大臣賞授賞式出席のためシンガポールから帰国した。現在の管理者である西村たちに新しいデータセンターを案内されて式典会場へ向かう途中にAIが異常な行動を起こす。それは桐生の仕業だと断定した桜庭の指揮する警察は桐生をテロリストとして追跡しはじめる。桐生の娘がデータセンターに閉じ込められて命の危険が迫るときAIは人類の選別をはじめた。

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 まず最初に、入江監督がサイタマノラッパーだけの一発屋なのではないかと申しましたことを深くお詫び申し上げます。ビジランテの存在をすっかり忘れておりました。あれは名作です。太陽という作品もあるらしいのですがその存在はまったく知りませんでした。

 さて、本作です。前評判が気になって少し検索してみると桜庭役の岩田剛典の名前がよく上がっているのを見ました。

 岩ちゃんが出ているから絶対観に行く。

 あー、これはあかんやつですわ。と思いました。これはさすがに入江監督だからってなんでもかんでもいいわけじゃないよねーと思いました。結果的には、悪くない作品だなという印象です。ちなみに岩田剛典は町田くんの世界にも出ているのですね。あれは名作です。

 AIというのは、たとえばターミネーターでも反乱を起こして人類を滅亡させようとしていました。でも、そういうふうに人類に反旗を翻すAIというのは人類の技術が未熟だからこそ起こることなんだと思います。今作でも人類のミスというか、ちょっと言いづらいのですが、人類が原因なんですよ。そのヒューマンエラーを防ぐことができなかった人類の未熟さがダメなのです。だから、AIが人類の思い通りに動くようにもっと技術を高めていかないといけません。

 AIというのは、ベーシックインカムが成功する前提として人々の代わりに仕事をしてくれて稼いでくれる存在なのだという話を昔聞いたことがあります。けれど、今作ではAIが人々の仕事を奪って不況になっているようですね。仕事を奪う……そういう存在にしかならないのでしょうか。多くの識者がAIに仕事を奪われないようにスキルを磨きなさいとおっしゃっていますけれども。AIが人類の救世主になる、そういう未来は来ないのでしょうか。

 なんだか本作は暗い未来しか見せてくれません。AIが死ぬべき人々として老人や無職などを選んでいました。そうしないと日本はつぶれるとのことでした。今日本が抱える問題をぶつけてくる作品でした。ただ、それに対してどうしたらいいのか答えは言ってくれませんでした。答えがほしいですなあ。

 あと、桐生を追う警察が「あいつはテロリストだから射殺してもいいっしょ」って猛烈な追跡を仕掛けるのでした。見た目はよくあるやつだけど聞き慣れない名称の特殊部隊が発砲しまくりです。テロリストだったら殺してもいいし殺さないと危ないということで、国家にテロリスト認定されてしまうとおしまいです。そういう権力を許してもいいですかということです。

 怖い作品です。

 沖合の船から落ちた桐生が生還した場面は都合が良すぎるのと、特殊部隊がなんだかんだで射撃をためらう廃墟の場面はよろしくないと思いますけど、邦画がハリウッドの真似をして失敗してきた過去作に比べたらうまくまとめた感じはあります。あと、RORO船に一般の普通車が乗っていたのもあまりよろしくありません。RORO船は一般客を運ぶことがありませんので。作中ではRORO船ではなくて普通のフェリーだという設定なのでしょうけど。実在する船なのですが、旅客定員が11人しかありません。それと、桐生に問い詰められた桜庭がけっこう大切なことを明かしてしまうわけですが。周りにいる人たちが「マジかよ」って顔をしてるじゃないですか。そんなに簡単にしゃべったらダメでしょうに。

 作中に出てきた岸副総理は役者の見た目が現政権の官房長官で、名前が現政権の総理に関係しているのは狙ったのでしょうか。暗に現政権を批判していると思いました。現政権の官房長官が自分のいうことを聞く官僚を選別しているあたりも本作に通じるものがありませんか。

 本作の総理大臣について、シン・ゴジラのときの防衛大臣です。ゴジラによって死んでしまったと思われたのですが奇跡的に生還して政界に戻ってきた、そして、総理大臣の地位を得たという感じでしょうか。国民のことを考えてくれている総理大臣でした。

 シンガポールにはあんな浜辺があるんですか!?