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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「預言者」を観てきた感想(ネタバレ)


あらすじ:主人公は公務執行妨害で懲役6年を課せられたアルジェリア人のマリク(タハール・ラヒム。この映画でセザール賞受賞)だ。彼の収監された刑務所は「コルシカ派」と「ムスリム派」という2つの派閥に分かれている。マリクはどちらの派閥にも入らずに刑期を満了しようとしていた。コルシカ派のリーダーであるセザール(ニエル・アレストリュプ。スピルバーグ監督の「戦火の馬」にも出演)に脅されてムスリム派の人間の暗殺を命じられたため、ムスリム派の人間から疎まれてコルシカ派の人間に良いように扱われる、という孤立状態に陥って厳しい刑務所生活を強いられてしまう。そんな状況で果敢に生きていこうと必死にもがき成長していく。

 2009年カンヌ映画祭でグランプリを受賞し、2010年アカデミー賞で外国語映画部門にノミネートされたフランス犯罪映画です。世界的に評価された映画が、3年も遅れて日本で公開されることとなりました。監督は「天使が隣で眠る夜」や「真夜中のピアニスト」で知られるジャック・オーディアールだそうです。彼は実力派で実績のある監督のようです。
 2時間半もある長い映画なのですが、終わってみると長さを感じない作品でした。
 バイオレンス描写が多いです。マリクが暗殺する場面では首からブシャーと血が吹き出します。鹿をひき殺す、人を殴る、基本的にマリクはセザールからたびたび殴られる、殴られるとき本当に痛そう、ということで、そういうのが苦手な方はご注意ください。
 刑務所という閉鎖された空間で、マリクは犯罪組織を作り上げます。刑務所の中から拡大させていきます。マリクという青年の成長でもありますし、マリクが組織を作り上げていく物語でもあります。
 マリクはセザールの指示に、それはそれは馬鹿みたいに従います。力をつけてきたマリクがセザールに従い続ける姿を見て私は意味がわかりませんでした。でも、それはマリクが彼を利用しているからに過ぎず、最後はセザールとコルシカ派を一掃するのです。彼が最後に怒りを爆発させるのです。これでもかっていうくらいの仕返しを見せつけるのです。
 マリクは勤勉ですよ。新しいことをどんどん吸収していきますし。その勤勉さが犯罪ではなく正業に向いてくれたら良かったのですがねえ。残念です。
 「預言者」というタイトルですが。マリクが暗殺した男は、亡霊としてマリクの傍に時折現れます。それが関係するのか、夢などで近い未来を見ます。たとえば、車に乗っていると鹿が飛び出してくる、とか。その夢のおかげでマリクは、力を強めていくことに成功しています。そういう場面もある映画ですから、不思議な作品ですよ。
 DVD化されたら、皆さんにも是非ご覧いただきたい。