やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「リボルバーリリー」鑑賞感想(ネタバレ)

ポスター画像

2023年8月公開

監督:行定勲

原作:長浦京

脚本:小林達夫行定勲

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あらすじ:幣原機関というスパイ養成機関の最高傑作といわれた小曽根百合は16歳の若さで57人を殺害した凄腕だったが、突如として姿を消した。それから10年後の1924年関東大震災から復興しつつある東京に彼女の姿はあった。一方で、秩父では一家惨殺事件が起きていて、犯人は百合の知る国松という男ということになっていた。その国松も自殺したとされていた。惨殺事件を逃れた少年の慎太は死んだ父から預かったものを隠し持って、埼玉県熊谷から東京府上野へ向かう列車に紛れこんだ。車内で大勢の男たちに遭遇した慎太は、秩父から東京の玉ノ井へ帰宅途中の百合に助けられた。走る列車から飛び降りた百合と慎太は山中や野原を抜けていくが、その先では陸軍の追跡を避けつつ、幣原機関の後輩だという若い男にも襲われながらもなんとか埼玉県東部を逃げていった。陸軍が慎太を追う理由は、慎太の父が生み出した1億6千万円という莫大な資金(当時の国家予算の1割)を軍のものにするためだということがわかってきた。海軍もその資金を狙っていた。百合に恋をしている元海軍士官で今は弁護士の男がふたりを助けつつ、慎太の父が百合の死んだはずの元夫だということもわかり、百合は慎太を必ず守ると決意した。上海の銀行にある資金はあと10日で銀行のものになるため、陸軍は市街で百合たちを銃殺しようとするなどなりふり構わない行動に出た。そんな危機も抜けつつ、海軍の山本五十六大佐が資金ほしさに慎太を保護する約束をしたため百合は慎太を海軍省へ届けようとした。濃霧の中で陸軍は兵士を展開させて資金引き出しの鍵となる慎太を捕まえようとしたが百合との激しい銃撃戦の末、慎太は海軍省へ届けられるのだった。

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 原作未読です。

 久々に、ちゃんとダメな映画を観たような気がしました。

 いろいろダメなところがありまして、特に気になったのは慎太の父の目的です。

 慎太の父(百合の元夫)は幣原機関に関与して戦争の惨さを痛感して、日本を経済的に強い国へ変えようとした、その経過で生み出されたのが1億6千万という今なら1兆円近い資金ではないかと思われるのですが、それも陸軍の資金を欧米列強に売って作ったっぽいんですよ。戦争ではなく経済で国を強くしようとするために兵器を国外へ売ったわけですよね。なんだか平和のための大義が薄れる行為ですよね。それはそれとして、今でいうところの1兆円近い資金をたった一人で生み出すなんて化け物ですね。

 慎太を山本五十六に届けた百合は、五十六に問いました。資金を何のために使うのか。開戦を10年遅らせてその間に日本が生き残る手段を探すという答えでした。山本五十六は、これまでのフィクションにおいては平和主義で非戦派の天才指揮官という描かれ方でしたが、近年は化けの皮が剥がれてきたところだと思います。そんな中で、今作では旧来のイメージで描かれた人物でした。私も昔は山本五十六を英雄視していましたけどねえ。

 今作では、理想に燃える慎太パパ、現実的な山本五十六といった感じですかね。百合は現実的な山本五十六に慎太を渡しましたねえ。

 というわけで、本作が訴えたい平和というものがふわふわしていて、慎太や百合のほうに大義を見出せません。

 他にもいろいろあるんですけど、アクション映画なのに夜や濃霧の戦闘が多くてアクションが見えづらくなっています。綾瀬はるかの無駄遣いです。

 カメラワークというものはよくわからない私ですが、動きがない場面では綾瀬はるかの顔をアップにしつつその顔を撮る方向をガチャガチャと変えていました。さすがにウザくてうんざりしました。

 ネットでは作中に出てくるツイッター灸ババアが話題になっていましたが、なるほどね、そういうことですね。でも、このババアだけはめっちゃファンタジーでしたね。夢の中で現れて重症の百合を助けてしまうのでした。あのババアは原作にも出てくるのでしょうか。

 せっかくあと10日というタイムリミットがあるのに、そのドキドキも感じられません。何よりこの映画は139分ありますが、冒頭では百合が幣原機関出身の凄腕スパイで57人を殺害したがその後姿を消したという説明がテロップで流れました。これをほんの少しでも映像で見せてくれたら良かったのになあ! 5分くらい百合の過去を見せて、あとは余計なガチャガチャした20分を削ったら120分の良作に仕上げることができたと思います。アクション映画なのにダラダラガチャガチャしすぎなんですよ。ただ、原作でも百合の過去が本作のテロップみたいに説明だけで終わっているらしいです。このテロップであれば、百合という人物は殺人マシンなのかしらと思ってしまいます。でも、人間味のある落ち着いた人物でした。50人以上殺しているのになぜ人間味があるのか、そういうところを5分くらい映像で見せてくれたらよかったのになあ!

 2点だけ良い場面があります。

 1点目は冒頭の惨殺現場です。陸軍の男たちが慎太の家族を惨殺していきます。首を斬るとドロリとした血が流れだして床下に隠れている慎太の頭へ垂れていく演出がありました。これは新しい、なかなか良い場面でした。

 2点目は慎太が父から預かった拳銃を使わなかったことです。試射はしたけど人間を撃ちませんでした。えらい!

 以上の2点以外は何も良いところがないでしょう。ダメ映画になると饒舌になってしまう私も反省しまーす。サーセン

 ところで、イオンシネマは今年が周年記念らしいのですが、ろうそくがボッ! ボッ! ボッ!と3本燃え上がる演出は30周年みたいなことを表現しているのでしょうか。