2022年11月日本公開
監督:オリビア・ニューマン
原作:ディーリア・オーエンズ
脚本:ルーシー・アリバー
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あらすじ:1969年、ノースカロライナ州の湿地帯でチェイスという若い男が遺体となって発見された。確実な証拠はなかったものの、湿地で独り暮らしをしている若いカイアが疑われて逮捕された。街の人々から疎まれているカイアの素性をわずかに知っている老いた弁護士がカイアを弁護することで、カイアの半生が明るみになっていく。一方で、チェイスはなぜ死んだのか。
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感想を言ってしまうと、どうしてもネタバレになりますのでこの先を読む場合はご注意ください。ただ、できるだけネタバレはしないように気を付けます。
好物の刑事事件、法廷ものです。どうやら当時のノースカロライナ州は確実な証拠がなくても有罪にできてしまうようで、陪審の判断で決まってしまいます。チェイスの衣服にはカイアの服の繊維が付着していた、日頃からふたりは密接な関係にあった、それ以外にはチェイス殺害の証拠は一切無い状態です。アリバイは、ないと言えばない、あると言えばある状態です。チェイスは事故死の可能性も高い状態です。
確実な証拠がないなら、当然、もちろん、無罪にすべきです。
ただ、本作はカイアの半生がどんなものだったのかというところが主題です。チェイスとの関係も大切だけど、チェイスがなぜ死んだのかなんて正直どうでもいい感じです。
カイアの辛く厳しい半生を知ってしまうと、チェイスを殺すわけがないんですよ。目頭が熱くなりました。
ところが……涙を返せという展開がスタッフロールに入る直前にありました。
確かに、「昆虫のメスは生きるためにオスを騙し討ちすることがある。昆虫の社会に善悪なんてないのかもしれない」ということも言っていましたねえ……。必死にバスの時間をメモしていましたねえ。
でも! でも、ちょっと待ってください。裁判においてカイアがチェイスを殺害したという確実な証拠を検察側が提示できなかったのですから、やっぱり無罪になって当然です。街の人々がカイアに手を差し伸べたという事実は変わりません。
原作ではどんな描かれ方をしたのでしょうね。カイアという子は、誰かが助けてあげなければいけない、誰かに頼ることを知らないからなおさら助けてあげたい、でも、そうじゃなくて実はめっちゃ強い子だったのかもしれません。手を差し伸べなくても彼女は立派に強く生きていくことができたかもしれません。シンデレラストーリーのような昔ながらのファンタジーかと思いきや現代的な強い女性だったのでしょうか。
女はこんな感じであってほしいという男の願望を形にした作品なのかなと思ったけど、監督と原作者と脚本が女性だったので、やっぱりカイアは強い子です。