やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「悪人伝」鑑賞感想(ネタバレ)

ポスター画像

2020年7月日本公開

監督、脚本:イ・ウォンテ

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あらすじ:刑事のチョンは立て続けに起こる殺人事件を同一犯と見ているが上司はその見立てを否定した。一方、無差別殺人を繰り返す連続殺人犯がヤクザのボスであるチャンを狙った。しかし、返り討ちに遭って逃げる。怒り心頭のチャンは独自に犯人を捜す。やがて、チョンとチャンはひそかに手を結んでお互いの長所を生かした捜査を展開することとなった。

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 たいへん長らくお待たせいたしました。こちらではようやくの公開です。

 チャンが悪すぎて、連続殺人犯もめちゃくちゃ悪いのですが、チャンのやっていることがひどすぎて困惑しております。

 さて、今作では私のとても好きな展開になってしまいました。すごく好きです。何が好きって、ネタバレになりますけども、クソ映画でしかネタバレはしませんが、今回は特別にネタバレします。

 チョン刑事は悪徳警官のようにも見えますが、実は法による裁きを重視しているわけですね。なので、チャンは私刑を目指して犯人捜しをしつつ、一方でチョン刑事は犯人をチャンよりも先に逮捕して裁判にかけようとしているのです。そこまでだったらまだ普通ですけど、ここからがネタバレですけど刑事が犯人確保に成功しました。そしたら舞台は法廷に移ります。

 さて、私は恐れていたことがひとつありました。チョン刑事は上司に内緒でヤクザのボスと手を組んで捜査しているのですね。証拠の数々はヤクザが先に見つけています。その証拠をもとに犯人捜しをしています。ということはですよ。これらの証拠は違法な手段で手に入れたものになるわけですね。そうすればそれらの大切な証拠は裁判では採用できないことになりますね。

 というわけで、法廷では状況証拠しかないことが問題になりました。日本だったら状況証拠や目撃証言だけで死刑になっちゃいますけど、そうならないのが韓国の裁判でございますよ。

 それで、なんだかんだでチャンは違法賭博などなどをやっていたのでその件で警察から逃げる羽目になりました。ところがそのチャンが証人として法廷に登場したのです。チャンは連続殺人事件で唯一の生還者であり犯人の顔を見ています。だからこそ犯人逮捕を可能にしました。

 でも、ちょっと待ってください。チャンの目撃証言だけでは有罪にならないでしょう。不安になる私でした。そんなチャンの法廷での証言が被告を有罪にする決め手になるのですよ。カーッ、痺れる展開です。

 まあ、でもね、それも証言ですし、物的証拠ではないので私としては苦い勝利になったと思っています。確実な物的証拠が欲しかったですね。

 さてさて、法による裁きを目指していたチョン刑事の勝利となりました。となると、ヤクザのメンツを潰されたままのチャンは法廷の場に出てきて自分の罪で逮捕されて収監されるわけです。そのあとまさかの……なるほど納得な丸く収まる展開にしてくれました。ありがとうございます。

 劇中のチャンの張り手はヤバくて、映画史上稀に見る残忍さがありました。こいつの体が凶器です。あと、ヤクザどうしのいざこざで経営する店を襲撃する場面がありました。その襲撃場面である男がガラスをガシャーンとぶち破って逃げていきました。これはちょっと笑ってしまいました。

 前半では車が走っている場面を俯瞰するものがいくつかありましたけど、北野武っぽいですね。

 ところで、韓国の苗字といえばキムですけど、映画でキムさんってあんまり出てこないですよね。ちょっと調べてみるとキム姓は全体の2割だそうです。思ってたよりも少ないです。最後にもうひとつですけど、チョン刑事の上司が使っている机に置かれている名前ですね、あれは何というのでしょうか。韓国に限らずいろいろな国の警察署の場面で見るものですが、今回の上司の名前が漢字で書かれていました。あら、珍しい。