62.第十七捕虜収容所
ビリー・ワイルダー監督、脚本。1953年公開のアメリカ映画。第二次大戦末期のドイツ第十七捕虜収容所第4キャンプは、米空軍の軍曹ばかりを収容していた。あるとき、そこから2人の捕虜が脱走しようとするもあえなく射殺されてしまう。米兵たちはこの中にドイツ軍スパイがいるのではないかと思い始め、悲観論者のセフトンが真っ先に疑われる。
これは面白い映画でしたよ。
軍曹たちのキャラがどいつもこいつもよく立っています。アニマルのキャラが最も好きだったかな。映画が始まってすぐに脱走兵が死んでしまうものの、それ以外は基本的にコメディタッチです。
キャンプ内で日々どんな生活を送っているのかが描かれているだけですから。
本当のスパイを探すことはミステリになっていますし。本物のスパイが明らかになるところで、再び脱走があります。冒頭の脱走と重なる描き方で、当然最後の脱走は成功します。最初は失敗した脱走の作戦も今度は成功してみせる、良い終わりでした。
これはいい戦争映画です。
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63.戦場にかける橋
1957年公開の英米合作。デヴィッド・リーン監督。
太平洋戦争、1943年、タイとビルマの国境付近にある捕虜収容所を舞台に、日本軍の捕虜となった英軍兵士と鉄道建設をさせようとする日本人大佐の対立と交流を描いた作品。
この映画は、劇中で英軍兵士が口笛で吹く『クワイ川マーチ』が有名ですね。今作でようやく元ネタを知ることとなりました。
それにしても虚しい映画です。
捕虜たちは、途中から必死で架橋工事を進めるようになります。完成すれば後世に残るからとか、何か理由があってがんばるのではなくて、ただ捕虜としての時間を無駄に過ごさないための工事でしかないでしょう。
結局は、同胞の連合軍によって完成した橋が破壊されます。このエンディングがあまりにも虚しいです。
何のために橋を作ったのか。
一点だけ申し上げたいのは、日本軍に架橋の能力が無さすぎることです。日本軍をバカにしすぎでしょう。
いわゆる泰緬鉄道となるわけですが、ミャンマーの民主化、自由経済化が進めばいずれは再びつながる日が来ます。
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64.潜水服は蝶の夢を見る
2007年公開のフランス映画。ジュリアン・シュナーベル監督。
世界最大手ファッション誌の編集長だったジャン・ドーは突如脳溢血に襲われた。3週間昏睡して、意識と記憶は回復したものの、左目以外の全身がマヒして動かない閉じ込め症候群となった。そんな彼は、自伝を書く事を決意する。
実話だそうです。最近だと2012年公開の「最強のふたり」という映画に近いかもしれません。
意思疎通がめちゃくちゃたいへんなんですよ。左目でウインクする以外いっさい何もできないのですから。付き添いがアルファベットを1文字ずつ読み上げていき、ジャンがほしいアルファベットのところでウインクする。それを繰り返して文章を作成していくのですから。気の遠くなる作業です。
言語療法士が付き添って、文章を作っていきます。初めて作った文章が「死にたい」。
その場面で泣いてしまいました。そりゃそうだよな、こんな状態になったら死にたいよな。
しかし、そんな彼は自伝を作っていくことを決意するのです。
なんという強い人間でしょうか。
しかも、彼を大切に思う大勢の人々が登場しますからね。うらやましい!
映画は最初の40分ほどがジャンの目から覗く視界だけです。なので、退屈です。しかし、そのあと彼が夢の世界を展開させると映像は一気に広がります。はっきり言って、彼の姿が見えるようになってからは楽しいです。