あらすじ:
パンを盗んだ罪で19年の服役後、仮釈放となったジャン・バルジャン。彼は宿を借りた司教の家の銀器を盗んでしまう。しかし、司教はバルジャンを許し、バルジャンは実も心も生まれ変わることを決意する。8年後、彼は市長にまでなっていた。バルジャンはファンテーヌという娼婦と知りあい、彼女の娘・コゼットを里親から取り戻す約束をする。しかし刑事ジャヴェールの出現をきっかけに、彼の過去が暴かれることとなり、彼は自分の正体を告白し、コゼットを連れて逃亡する。
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ヴィクトル・ユゴー原作の小説であり、その後ミュージカル化された有名すぎる作品です。1985年にロンドンで始まったミュージカルはなんと27年という超ロングランで、6000万人を動員したとか。
映画化も何度かされています。
そんな有名大作ですが、私は内容をほとんど知りません。今回、映画を観たことでついに物語を知ることとなりました。
まず、バルジャンにめちゃくちゃ感情移入しました。しつこく追ってくるジャヴェールからなんとかして逃げてほしいと願い続けました。さらに、フランス革命の成功を祈りました。
それにしても、ジャヴェールに対して「必ず戻る」とか言いつつ、逃げていきますね。それくらいのウソなんか、誰もが許しますよ。ジャヴェールも悪い人じゃないんですけど、少しくらいは見逃してくれてもいいじゃないか、融通が利かないなあと思いました。
さて、映画が始まって10分くらいで、この映画はヤバイなと感じるようになりました。セリフがすべて歌なんですね。そうとは知らずに観に行ったので驚きました。焦りました。
映画でも舞台でもなんでも、特にミュージカルとなるとですね、歌が多ければ物語進行が鈍重になり、物語を追いづらくなると思うわけです。
さらに、物語にとって重要な内容を歌でやってしまうと、物語に集中しづらくなる、理解しづらくなると思うわけです。
ところが、見終わってみるとそんな懸念は飛びました。
まさかセリフがすべて歌だとは思わなかったという驚き以上に、物語をしっかりと理解できたわけです。
何が起きているのか、ちゃんと把握できていたのです。
役者たちの演技、物語の演出などでしっかりとそれらを把握できたからこそだと思うわけです。その点で、この映画はすごいです。
おそらく、この映画は、物語の余計な部分を徹底的に削ぎ落としています。そのため、物語の進行がものすごく早く感じられます。158分というかなり長い作品となりましたが、うまくまとめているのではないでしょうか。
これほどまでに見やすい映画にしたことこそに驚くべきでしょう。
それにしても、ジャヴェールがかわいそうです。まさか、自殺をしてしまうとは。
ジャヴェールがバルジャンを許すとか追う必要がなくなったという場面がほしかったし、最期は自殺となるとジャヴェール自身も救われずに終わったみたいで嫌な感じです。このあたりについては、小説によると自殺の前にバルジャンをはっきりと見逃して法が間違っていたことを報告書にする場面があるようですね。もちろん、本作でも下水で見逃してはいるものの、物足りない見逃し方です。
あとは、サシャバロンコーエンですね。出演していることは知っていました。こんなまじめな作品で彼ができることなんてあるのかなと思いきやちゃんと道化役として活躍していました。安心のサシャバロンコーエンでした。
とにかく、民衆が血を流して勝ち取った民主主義万歳です。 (26)