2014年2月公開
監督:山下敦弘
脚本:菅野友恵
製作:藤島ジュリーK
・・・
あらすじ:出所した大森茂雄(渋谷すばる)は腐れ縁のタクヤ(川原克己)に出迎えられる。彼らと別れたあと、茂雄は何者かに襲われて記憶を失った。公園で催されている赤犬のライブに乱入して和田アキ子の「古い日記」を歌ったあと倒れた。赤犬を仕切る少女佐藤カスミ(二階堂ふみ)に助けられた彼はポチ夫という新しい名前で佐藤の経営するスタジオを手伝いつつ記憶を取り戻そうとする。
・・・
近所の映画館で限定公開となりましたので鑑賞しました。
これ、もう、絶対あかんやつやんと思いましたよ。だって、茂雄が出所したところからお話が始まるんですよ。記憶を取り戻したらすべてが崩壊するだろうと思いました。
目頭が熱くなるのはしかたのない物語です。
何と言いますか、普通じゃない女の子を演じさせたら二階堂ふみの右に出る者はいませんなあ。
そんなこんなで少しずつ記憶を取り戻すこの作品も上映時間はなんと100分強です。よく短時間に収めました。無駄な場面がないので見逃したらダメですよ。ダラダラと無駄な場面を流さない流れも良いです。
茂雄を迎えた男は、あれ? なんか見覚えあるぞ? と思ったら天竺鼠のボケのほうじゃないですか。テレビなどでは絶対笑わそうとしない独特のコントに呆きれつつ笑ってしまっていました。こんな演技もできるんだなあ、でも天竺鼠のコントのときのような感じでもあるなあと変に感心しました。
さて、そんな物語も2点のダメ出しをさせていただきます。
まず、抜群の歌唱力で赤犬のボーカルをすることになったポチ夫ですが、そうなるともともといるボーカルが弾き出されます。記憶を取り戻した茂雄は、舞台に再び立つことのできた本来のボーカルをついには舞台からダイブさせてしまいます。
そのボーカルを救済する何かがほしかったです。ボーカルがかわいそうでした。
次に、記憶を取り戻した茂雄は、タクヤに命を狙われます。邪魔者だったんですね。寸でのところをカスミに救われた茂雄でした。
この助けられた場面がダメです。まずカスミが、襲われている茂雄の居場所を知った方法です。それがわかりません。
襲われている茂雄は何人もの武装した男たちに囲まれていたのに次の場面ではカスミと茂雄が無事に逃れていました。逃げてこられるわけがないのに、どんな方法で逃げてきたのでしょうか。武装した男たちは、少女が代わりに茂雄をバットで殴って殺してくれたから手間が省けたとでも思ったのでしょうか。そういうことにしておくしかありません。
この2点さえ何とかしてくれたら突っ込みどころのない映画になったのではないですか。
それにしても、真っ当に生きているカスミと過去に罪を犯した茂雄の物語ですけども、茂雄のような人間を受け入れる社会があってもいいじゃないかと思いますよ。ごく普通に何も悪いことをしていない人々がバカを見るから罪を犯した人間は放り出せというのではなく、そんな人間を受け入れていかないと再犯の可能性がありますし、再犯を防ぐという意味でも大切だと思います。
ところで、味園ユニバースですが、どこかで見たことがあるなあと思ったら千日前に実在する建物なんですね。作中に出てくる飲食店の並ぶ通りはおそらく新世界の南じゃないですかね。うまい店があるようですのでそのうち行きたいです。動物園前駅の南部や新世界北部は行ったことあるのにその間をまだ知らないという地方民の私です。
ユニバースというのは味園ビルに実在したキャバレーであり、貸しホールとして再開されたようです。ちなみに、この味園ビルでは、デビュー前の和田アキ子が専属歌手として歌っていたそうです。そのあたりのつながりもありました。
赤犬も実在します。監督と赤犬のメンバーは大学で同期だったのですね。
最後に、カスミの卵焼きがおいしそう。茂雄のシーチキンもおいしそう。