あらすじ:大リーグの伝説的なスカウトのガス(クリントイーストウッド)もいつしか年を重ね、最近では視界の不良に悩まされているが、そのことを認めようとしない。弁護士をしている娘ミッキー(エイミーアダムス)は所属法律事務所でパートナー選抜に勝つためがむしゃらに働いている。ガスの友人が、この頃のガスの様子を心配してミッキーに相談した。そこでミッキーはガスのスカウト旅行に数日の間、同行することを決める。
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面白かったんですけど、唐突なものが多かったなあという印象です。
マネーボールに反論するかのごとく、目だけで良い選手を発掘するしようとするガスの姿は、イーストウッドそのものなのかなと思いました。この映画は、イーストウッドが製作したものではありませんが。イーストウッドが歩んできた映画人生を反省しつつ、良いところだってあったでしょ、俺ってすごいでしょ、というのを言いたそうな映画です。
何せ、ガスは目で選手発掘をやっていたわけではなかったのですから。実は、耳で打音などを聴いて選手の良し悪しを判断していたのです。白内障で見えなくなりつつある目など関係なかったのです。イーストウッドはそんな感じで映画を作ってきたのでしょうか。目ではなく、耳で。
イーストウッドも高齢ですから、そろそろ映画人生の終わりも近いわけです。そこで、弟子に映画製作を継がせたい。今回は、ロバートロレンツが初監督ですし、新しい才能を世に送り出したいイーストウッドの親心なのかもしれません。とはいえ、ロバートロレンツもプロデューサーなどは長くやっています。
ガスという男は、スカウトが当たり前のように使うPCによる分析を取り入れようとはしません。選手は人間であり、PCが見る数字以外に大切なものがたくさんあってそれが選手の成績に影響していると主張します。
コンピュータによるCG以外に、大切なものが映画にはあるというのでしょうか。
映画は、結果的に、PCが敗北しました。ガスの耳が勝利します。以前スカウトしたバッターがずっと成績不振でしたが親と会うことで打率急上昇、誰もが認める高校生のスラッガー:ボーもガスの耳によるとカーブが打てないとのことで、まさにそのとおりでした。PCにはわからないものがあるようです。
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さて、唐突なものがあると申しました。
それは、例えば、終盤に娘のミッキーが投手候補を突然見つけてきます。まさかの豪腕なのですが、ミッキーが宿泊しているモーテルの前でいきなり投球練習をしているところを見つけるというのは唐突でした。ただ、この豪腕は、作中の前半でも出ています。ボーにピーナツを投げつけた男でした。そんなの覚えてないよ!
豪腕はすぐに球団へ入ることになりますが出来すぎですね。
あとは、ガスとミッキーの親子関係です。仲が悪いようで、良かったりしますが、まさかの過去がありました。ガスが告白します。幼いミッキーを犯そうとした奴がいて、ガスはそいつを殺害してしまったというのです。その事件は明るみに出なかったのですが、いきなりそんな告白をされても困ります。
これも一応、伏線がありました。ガスのスカウトに同行しているときバーでミッキーに暴行しようとした男をガスは人が変わったように怒り狂う場面があります。
ミッキーも幼い頃に突然ガスから引き離されたという過去を何度か話す場面はあるものの、あまりの重大な告白に、観ているこちらは戸惑います。
唐突とはちがいますが、作中に出てくる悪人がとことん悪人です。ボーなんか、人としてダメだし、ガスのライバルであるスカウトも周りのことをボロクソに言いますから。勧善懲悪映画ですね。わかりやすい構図ではあります。
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とはいえ、イーストウッドの演技も相変わらずです。ガルルという唸り声を出したりしていますし。
イーストウッドは映画人生を長く続けたいためにプライベートで健康的な生活を送っています。たばこは吸わない、野菜を食べるなど。でも、ガスは葉巻吸いまくり、肉食べまくりです。正反対のキャラを演じるのも、楽しんでいるかもしれません。
今後のイーストウッドについて、2013年は「スター誕生」という過去のリメイク作を予定しています。ただ、予定していた主演ビヨンセが降板したとのことで、果たして製作は順調なのでしょうか。気になります。
ロバートロレンツ監督作品なのに、イーストウッドのことばかりを書いてしまいました。ごめんなさい。