やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画『ニーチェの馬』を観た感想(ネタバレ)


あらすじ:吹きすさぶ風の中、農夫は馬車馬に鞭をいれながら町からの長い道のりを走ってきた。そして、一本の裸木の生えた荒野の一軒家にたどり着く。迎えに出た娘と共に風暴風の中、厩の扉を開け、馬を休ませる。その間に娘は馬のくびきを外し、荷車を納屋に入れる。日々やり慣れた動作だ。父も娘も一連の動作を無駄なくこなしていく。
 翌朝、暴風がまだ続いている。
 粗末なベッドで目覚めた娘は服を着る。厚ぼったい靴下、重そうなスカート、これも重そうな上着だ。それらを身につけると、風の中を井戸まで水を汲みに出る。
 お湯を沸かし、じゃがいもを茹で、父を起こし、片手の不自由な父の着替えを手伝う。
一杯の蒸留酒と茹でたじゃがいも1個の朝食を済ませ、父は町へ行くために馬車の用意ををする。しかし、馬がなぜか動こうとしない。父が鞭で叩いても動かない。娘が父を止める。娘はいつものように厩を掃除し、馬に飼葉を与えます。
 次の朝が来た。暴風は止まず、馬も動こうとしない。餌も減っていない。少しずつ、父と娘の生活が狂いはじめる。

 白黒映画ですが、2011年製作です。こないだ、高松ソレイユで鑑賞しました。
 思っていた内容とちがいました。でも、すさまじい映画を観ました。
 1889年、イタリア・トリノの家族の6日間が描かれます。ドイツのニーチェの逸話を元にしている映画であり、ハンガリーの鬼才と呼ばれるタルベーラ監督作品です。
 貧しい一家の日常がわずかに狂っていく様をひたすら淡々と流すだけの映画です。長回しが多いですね。
 どんな終わり方をすると思います?
 衝撃的な結末が待っていますよ。
 服を着る、水をくむ、じゃがいもを食べる、暴風だから作業ができなくて寝る、それを5日間繰り返します。ところが、5日目に井戸が枯れます。荷物をまとめて移動しますがすぐに戻ってきました。その日、なぜか真っ暗になります。ランプに灯りがつきません。6日目、真っ暗な中でじゃがいもを茹でることができずに生で食べようとします。そのまま、暗転して作品は終わります。
 たぶん、この文章では意味がわからないですから、観てください。
 この映画はすごいよ。
 本当に少ないセリフです。父と娘の会話がほとんどありません。
 それに、窓から暴風の様子を見る父と娘の背中がなんとも言えません。
 5日目には、窓から眺める娘を外から撮る場面があります。そこはややホラー気味です。

 学生時代、ゆでたじゃがいもを塩だけで食べていた時期もあったので、食事の場面は懐かしさもありました。久々にゆでただけのじゃがいもを食事にしたいなあ、なんて。