やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「ファイナルジャッジメント」を観てきた感想(ネタバレ)


あらすじ:1996年、オウラン人民共和国南アジア自治区。食卓を囲む幸せそうな南アジア人家族は食事の前の祈りを捧げていた。そこへ突如オウラン人民解放軍が突入してくる。オウランでは宗教が一切禁じられているのだった。家族の中の少女は金をちらつかされて、祈りを諳んじてみせた。そのために家族は連行される。
 2009年、東京渋谷。
 仕事のためにオウランで営業をしていた鷲尾正悟はオウランの軍事力増強、覇権拡大に危機感を覚えて未来維新党を立ち上げる。衆議院選挙に立候補し、渋谷で訴えかけるが選挙は大敗した。
 その数年後、オウランが日本を占領した。日本は、極東省とされ、宗教の自由が奪われる。

 幸福の科学はこれまで7作の映画を公開しています。ほとんどがアニメですが、今回は18年ぶり2作目の実写映画となりました。
 どう見ても中華人民共和国のオウラン人民共和国は、思いきり中国の漢字を使っていました。南アジア自治区はどう見てもインドですし。作中で実在する国名が出てくるのは日本とアメリカ合衆国です。あとは、オウランが沖縄の領有を主張したり。
 作中の09年衆議院選挙はどう見ても民主党である民友党が圧倒的勝利で政権交代します。その後、民友党の失政により日本は占領されてしまうことになります。皆さんは覚えているでしょうか、あのときの選挙には幸福実現党という政党も出ていたことを。
 さて、冒頭の数分は「お、まさかの良作か」と思わされる演出でした。しかし、そんな思いはすぐに打ち砕かれます。外人タレントといえばここという稲川素子事務所の外人タレントが南アジア人役で、オウラン軍に殴る蹴るの暴行を受ける場面になります。役者を見ただけでがっかりすることになるとは。
 そのあともとにかくツッコミどころ満載の物語が展開されることになるのですが、この映画の言いたいことが問題ですよ。
 主人公の鷲尾正悟が渋谷で訴えたのは「今の憲法ではオウランの武力攻撃に対して何もできない」とか「オウランの脅威はすぐそこまで迫っているのにそれに気づいているのは日本の中ではわずかに2%」などでした。
 その主張に耳を傾ける国民はほとんどおらず、選挙は大敗します。
 占領された後の日本、宗教を大切にし続ける人々と出会った鷲尾は活動をあきらめたものの再び立ち上がります。そこから彼の宗教的な発言が爆発し始めます。車椅子から立つ勇気のない少女を立たせてみたり。このあたりはまだいいですが。
 実はこのあたりで09年衆議院選挙での演説風景が世界で注目されていたことも知ります。
 最終的には、渋谷でもう一度演説をすることになります。その内容ときたら「世界中の人々は、お互いのちがいを理解しあうべき。そうすれば世界の危機的状況は終わる」とかそういうものでした。
 冒頭の鷲尾は具体的なことを言っていてその内容は世界的に注目されていたのに、鷲尾の発言がだんだん抽象的になっていくのですよ。抽象的というか、なんというか。
 映画は鷲尾の演説で終わり、そのあと世界がどうなったのかというと、鷲尾の演説のおかげで世界は平和になりましたよという文章が流れるのです。
 マジでふざけんな。
 これ以外にもいっぱいツッコミたいところがありますよ。占領と同時に東京の建物が中国的な様式に変化しますけど、そんな短時間でどうやったんだよ。
 死刑になった2人が逃亡して、悪逆非道を尽くしたオウラン軍がその2人を追跡するものの、持っている銃をほとんど使わないとか。さっさと撃てよ。
 最後の鷲尾の演説も簡単に阻止できたはずなのにモタモタして阻止しようとする気配がないし。鷲尾たちも堂々と演説を始めるところはまるで仮面ライダーの変身する瞬間を攻撃しない敵そのものでした。
 さて、私はこのファイナルジャッジメントを観た同じ日に、「ソウルサーファー」という映画も見ています。まさか、この2本の主張が同じだったとは、驚愕しました。2本とも「愛こそすべて」のような主張なのですが、「ソウルサーファー」のほうがはるかに観客に主張を届けることに成功していましたよ。
 映画なんですから、主張したいことを映像にしてくださいよ。演説じゃなくて映像です。演説したいなら本で十分ですから。映画は映像なんですから。
 それにしても映画が終わったときおばちゃんが「意味が全然わからんかった」と言いながら出ていったのは印象的です。