やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「エンジェルウォーズ」を観てきた(ネタバレ注意)

http://wwws.warnerbros.co.jp/suckerpunch/index.html
 客はわずか3人。初日とはいえ平日昼間なのでしかたないのでしょうか。
 15日初日に邦題エンジェルウォーズを観てきました。この邦題、どうにかならないですか。原題は「sucker punch」です。サッカーパンチ。これの意味はsucker:乳飲み子、だまされやすい人、吸う人、吸着盤など。punchのほうはそのままパンチです。ううん、どういう意味なんだろ。センター試験で200点満点中45点しか取れなかった私には二つの単語をつなげられないのですが。だまされやすい人を殴る、とか???wikiによると「予想外の殴打」だそうです。
 この映画の監督は300スリーハンドレッドウォッチメンなどでおなじみのザックスナイダーです。この映画の内容は、20歳前後の女性たちが精神病院に閉じ込められて逃げ出すという話なのですが。なぜか、セーラー服とかボンテージ衣装に身を包んだ彼女たちが、小銃や日本刀を持って化け物みたいな侍や化け物みたいな軍隊やドラゴンやロボットと戦うのですが。意味わからないでしょ?
 初めて予告観たときは化け物たちと戦っている場面が中心でして、ザックスナイダーは頭がおかしくなったのかなと思いました。
 さて、一抹の不安を抱えて観始めました。映画が始まって、終わるまで私は失笑の連続でした。頭の中はクエスチョンマークで満たされました。何がなんだか。意味わからない映画でした。
 自由になるためには自分自身の心を解き放て、ということを言いたい作品なのでしょうけど、ナレーションでそう言ってるんですけど、人物の行動がそういうところへつながっていかないんですよ。
 彼女たちがいる場所は精神病院のはずでした。ところが、急に設定ががらりと変わって、彼女たちは金持ちを満足させるためのストリップ小屋(?)に監禁されて踊らされていることになってるんですよ。ダンスの練習のとき、この場所へ来たばかりの主人公が踊らされます。皆に注目される中で主人公が目を閉じた瞬間、日本の寺みたいなところに彼女は立っています。これと言って不思議に思うこともなくその寺の中へ入ると「唯我独尊」や「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」と書かれた垂れ幕がかかっています。それを見た瞬間私の失笑が始まりました。これはもともと日本じゃなくて中国の孫子でしょうに。だから、中国なのかなと思いきや主人公に渡された武器は拳銃と日本刀なんですよ。あ、やっぱり日本なんだなあ、って思いました。出てきた敵も日本の戦国時代の鎧を着た化け物なんですよ。それが3体です。右と左に武将のような化け物、真ん中に足軽。なぜ真ん中が足軽なのか! あーあ、この映画も日本のことをものすごく良く知ってるというわけじゃないんだな、とがっかりしました。苦戦しつつ化け物3体を倒します。足軽は最後です。
 それで、彼女がもとのダンス練習の場で気づくと、歓声が上がります。「あなたのダンスは最高だった」と。映画を観ている私にはダンスがどのようなものだったのか分かりません。実は、ダンスについては最後までわからないままでした。
 さて、そのあと、主人公は閉じ込められているこの建物から脱出することを決意します。この決意をいつしたのか、よくわかりませんでしたが。主人公は4人の女性に対して、いっしょに脱出しようと誘います。ひとりが強く反対しますが、結局は脱出を決意しました。それで、さっき妄想世界?で、5つのアイテムを見つけるべきだということを知ったので、そのことを4人に伝えます。そのアイテムが脱出に必要なアイテムだということでなぜかすんなりと主人公も4人も理解していました。ううん、観てるこっちはだいぶ首をひねりましたけどねえ。彼女たちは疑問を抱かないんですねえ。
 そのあと主人公が踊って建物の管理者の気をそらすことでアイテムのひとつを盗むことになりました。盗む役は4人のうちの1人です。主人公が管理者たちの前で踊りはじめます。目を閉じます。すると、再びブラックファンタジーな世界に立っています。ここで、なぜか4人もいっしょにその世界にいるんですよねえ。エーッとなりましたよ。4人は全然踊ってないんですよ? 主人公が踊り終わって目を開けたら4人から「ダンス最高だったよ」と褒められてるくらいですからね。意味わからんですよ。とにかく、そのファンタジー世界の中では化け物軍団がアイテムのひとつを持っているということで、主人公がそのアイテムを奪うことに成功します。あれ? 主人公はダンスで管理者の気をそらして4人のうちの1人がアイテムを盗むんじゃなかったっけ? ますます意味がわかりません。
 映画は終始こんな感じで、主人公が目を閉じてファンタジー世界に行く意味がさっぱりわからないのです。ファンタジー世界でやってることが現実とつながっていないですよ。まったくとは言いませんよ。ファンタジー世界で1人死ぬのですが、それは現実だと刺されて死ぬわけですよ。それについてはつながっています。でも、ほかの部分がつながってないでしょう。主人公だけ目を閉じて夢の世界に行くはずが、目を閉じた描写のない4人もいっしょに夢の世界で戦っているんですよ。これはいったいどういうことなのか。
 二つ目のアイテム入手でも、現実に入手を担当するのは主人公じゃないのに、夢の世界のほうではアイテムを入手したのは主人公だったんです。こんなの絶対おかしいよ。
 ほかの人の批評を読んでみると「カッコーの巣の上で」などの過去の名作映画を踏襲している部分があるとのことです。言われてみればまさにそうなのですが、だからと言って夢の世界での行動と、現実世界の行動が関係あるように思えないので首を傾げざるをえません。
 自分自身を自由にするためにはまず自分を変えろみたいなことを言ってますけど、主人公たちは夢の世界に行っちゃってるじゃないですか。自身を解き放つどころか心の中に閉じこもっているじゃないですか。逃避しまくりじゃないですか。どうなんですか、これ。
 ただ、音楽はすごく良いです。数々の音楽が流れるのですが、どれもこれも場面に合っていて本当に良いです。あと、吹き替えで観たのですが、主人公たちの声を担当しているのは女性声優を知っている人ならすぐわかるでしょう、スフィアの4人と甲斐田という方です。最後のスタッフロールでは、吹き替え映画はいつもなら完全に終わったあとに声優などが紹介されるのですが、今回はスタッフロールが流れる中で日本での吹き替えスタッフも流れる仕組みになっていました。
 この映画、少女たちがアレな衣装で日本刀とか持って戦うものですが、エロい場面とかサービスシーンは一切ないのでご注意ください。「女性」を武器にはしていませんので。
 もしかしたらこの映画は今年観た映画ランキングでワーストになるかもしれません。ちょっとひどいぞ、これ。個人的な収穫は少女のひとりロケットがかわいかったことです。何しろ主人公にいち早く近づいてやさしくしてくれた人物ですから。絶対吹き替えの声に騙されてると思いますけどねっ!