2024年11月公開
監督:白石和彌
原案:笠原和夫
脚本:池上純哉
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あらすじ:戊辰戦争において新政府軍は越後長岡で激しい戦闘を繰り広げて長岡城を陥落させた。同じ越後の新発田は奥羽越列藩同盟に名を連ねつつも新政府軍への合流を模索していた。そんな新発田に同盟軍が居座り、新政府軍への合流を阻止しようとした。だが、新政府軍も新発田を味方につけるため先遣隊を派遣していた。もし新発田で両者が鉢合わせすれば新発田が戦場になる。それを防ぐために山中の砦で先遣隊を足止めしようと決死隊が結成された。それは罪人で構成された部隊だったのだが、果たして足止めはうまくいくのか。
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2022年に公開された「峠 最後のサムライ」は長岡での戦いが描かれていますので合わせて観ると予習になります。ただし、新発田での決死隊による新政府軍足止めは史実ではないはずなのであくまでこんなこともあったかもしれないという程度に観るべきです。同盟軍は新発田の幼い君主を拉致しようとしたり、農民による激しい抵抗はあったようです。
さて、本作は面白かったかどうかで申しますと、うーん、ちょっと厳しいかなー。
まず、舞台となる山中の砦について、全景がわかりません。どこにどのような設備があるのか、新政府軍先遣隊と砦はどのような形で睨み合ったのか、いまいちはっきりしません。全体を見せてほしかったです。砦の全体像がよくわかっていれば、クライマックスの新政府軍ドッカーンももう少し魅力あるドッカーンにできたと思うのですが。
爆破した橋も実は……というところはいかがなものかと思います。あんなに爆破しておいてそりゃないだろう。
新発田と長岡と砦の位置関係もあまりはっきり説明してくれません。地理に詳しい方なら砦が加治川上流なのかなと推測できるかもしれません。新政府軍先遣隊は長岡から新発田まで現在の県道14号に沿ったルートを通ろうとしたのでしょうかね。新発田の経済を支える重要な道だという説明はありましたけども。史実ではないからテキトーなのでしょうかね。
暗い場面でのアクションがありまして、何がどうなっているのかよくわかりません。
聞き取れないセリフが多くて、音声に難ありです。
本作では越後訛りが多用されていたのですが、「ぶっ殺す」「ぶっつぶす」というセリフが何度も出てきました。これらは広島弁なので当時の越後で話すはずがありません。
それはさておき、出てきた奴らが賊軍も新発田も新政府軍も同盟軍もどいつもこいつも悪くて、全員悪人です。感情移入できる人物などいっさいいません。仲野太賀演じる侍がまだかわいそうですし、孤軍奮闘する場面が多くて応援したくなる人物ではありました。ていうか、本作の主演は仲野太賀ですよね。仲野太賀のアクションは見事でした。
主演のはずの山田孝之は自分のやりたいことをひたすらやろうとして、周りを振り回すのみです。あまりの頭の悪さにイライラします。大切な妻のために必死なんでしょうけど、それらがすべて裏目に出るから同情できません。たまたま良い結果につながった行動もありますけども。最初は良かっただけに、あとはひたすらがっかりさせられます。
家老溝口の行動につきましては、理解する余地があります。溝口のおかげで新発田は戦場にならずに済んだのですから。
というわけで、本作はあの笠原和夫原案ということで、やっぱり仁義なき戦いを思わせる作品ではありました。新政府軍は明石組、同盟軍は親和会、新発田は広島山守組、家老溝口は武田、砦と決死隊は呉と広能といった感じでしょうか。山守組が明石と親和会のどちらにつくのか、広能はそれに振り回されるといった感じでしょうか。