やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「シン・ゴジラ」(MX4D)鑑賞感想(ネタバレ)

シンゴジラは最高なのでネタバレ無しで絶対観てください。お願いします。
この記事ではネタバレしています。

2016年7月29日上映開始
脚本、編集、総監督:庵野秀明
監督、特技監督樋口真嗣
准監督、特技統括:尾上克郎
撮影:山田康介
音楽:鷺巣詩郎伊福部昭
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あらすじ(ネタバレ):東京湾無人プレジャーボートの船内が海上保安部によって捜索されたがわずかな遺留品が発見されただけだった。直後に東京湾アクアラインで出水事故が起きた。その海上では海底火山が爆発したかのような変色と水蒸気噴出が発生していた。かつてない事態に、政府は原因の特定と事故や経済への影響などの対策に追われた。その後、噴出する水蒸気の中から巨大不明生物が出現して東京都大田区の川を遡上しはじめた。首相は会見で「上陸する恐れはない」と発表した直後に生物が上陸し、都内を蹂躙しはじめる。やがて、その生物は姿を変えて被害が増えていく。政府は戦後初の自衛隊防衛出動を許可するかどうかで紛糾する中、事態が変化していく。米国からの非公式の接触もあり、政府は対応に苦慮した。
 巨大生物は東京湾へ戻り、ひとまず事態は沈静化した。しかし、生物がさらなる変化をみせて相模湾から上陸して、東京の中心部を目指した。多摩川で足止めするため、ついに自衛隊の防衛出動が決定、戦後初の自衛隊による攻撃が開始された。しかし、攻撃に効果はなく、ゴジラと呼称された巨大生物は千代田区まで到達してしまった。航空攻撃が引き金となったのか、ゴジラが口から放射線を大量に含む光線を吐く。日米安保に基づいて出動した米国のB2爆撃機すら光線の餌食となり、東京の中心部が光線の直撃と高い放射線によって地獄と化す。首相など大臣の多くが死亡、360万人の疎開、国連による熱核攻撃が決定、生き残った矢口内閣官房副長官など若い政府要人たちによる対ゴジラ作戦の計画、果たして、日本はどうなってしまうのか。
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 デッドプールを鑑賞した私は、今年後半の大作映画に良作となりそうな作品がなくマイナーな作品で良作が来ない限り間違いなく「やくもとうずしおをがっつりと映画ランキング2016」の1位はデッドプールで揺るがない、ましてシンゴジラなんか絶対ない、と申しました。
 鑑賞する前日29日金曜日はネット上にシンゴジラ絶賛のコメントが溢れかえってしまいました。そんなものを見てしまうと期待してしまうではありませんか。でも、期待とは裏切るものです。あまり期待させないでほしいですね。
 そんなこんなで鑑賞を始めた30日土曜日の朝です。開始すぐ、『東宝』の文字が出たところでもう既に私のデッドプール鑑賞後の一連の発言を撤回しなければならない感じがしました。
 プレジャーボート発見から捜索のあたりでもう既に2016年の1位は「シン・ゴジラ」で決まりつつありました。
 後半は泣いていました。上映が終わって、街中を歩く私は泣いていました。場面を思い出すとまた胸が熱くなって泣いていました。
 東京のことが嫌いなんですよ。なんつーか地方のことを見下しているというか、地方から若いもんを奪っていくというか。大阪のことは大好きなんですけどね。ところがですよ。さすがに東京は日本経済の要ですからね。日本は東京無しでは生きていけない国になっています。そのことに言及する場面もありました。日頃ひがみ妬んできた東京もこんなことになってしまうとね……。大田区の川遡上をしたところでボートが東日本大震災津波みたいにあふれるあたりから「うわあ、どうなってしまうんだ、これ」と頭を抱えていました。東日本大震災の報道を見ていた私は3日目あたりで精神的にやられてテレビを見なくなりました。大田区川遡上はそのときの苦しい記憶がよみがえる場面でしたよ。
 川遡上からの上陸、道路を蹂躙しはじめると今度は車が蹴散らされて津波みたいになっていました。ますます胸が苦しくなりました。このあたりで泣いていたかもしれません。
 東京湾でしっぽだけが見えたときは「あれ! ゴジラじゃないのか」と思いました。もしやこれはゴジラ対何か新しい怪獣なのか。
 その怪獣が上陸してみるとエラがついているし顔がキモいわけです。すさまじい怪物でした。やっぱりゴジラ対何かなのかなと思っていると、ゴジラの特徴である背びれがついていました。まさか、こいつがこのあとゴジラになるというのか。
 なりましたね、ゴジラに。ゴジラに近い形まで進化したら体が光って、東京湾に戻っていきました。しばらくすると相模湾からいきなり出現です。そのときは完全にゴジラでした。1954ゴジラで山の向こうに頭だけ見えたチラ見せじゃなくてこのときはがっつり全身見せでした。そして! あのゴジラテーマ曲が流れた! 来たぞー!
 そのゴジラが鎌倉からまっすぐ東京霞が関を目指すルートを取りました。あああああ日本がああああああ!
 キモい状態のときに防衛出動しておけば倒せたかもしれません。でも、攻撃しようとしたら偵察ヘリが逃げ遅れた人を発見してしまいましたので攻撃中止となりました。国民を巻き添えにしたらダメじゃないですか。しかし、今度は川崎の武蔵小杉で、今回は避難の完了を確認しました。ついに、満を持して自衛隊が戦後初の攻撃を始めます。堤防に並ぶ10式、駐屯地の自走砲、富士山のMLRS、上がる光景ですね。
 まずは戦闘ヘリの機関砲ですが、無傷。効果認められず。
 続いて、無制限の火器使用を開始。戦闘ヘリがミサイルを発射。全弾命中。効果無し。10式戦車と99式自走砲、富士山演習場からの長距離射撃、全弾命中!
 繰り返す! 全弾命中!
 全弾命中! そう、これが自衛隊なのです。全弾命中するのです。
 しかし。効果は認められず。
 F2戦闘機が爆弾を投下、なんと、ここでゴジラがたまらず進行方向を変えました。そのおかげで10式が逃げ遅れて下敷きに……。クソッ!
 全弾命中というのはゴジラシリーズで画期的な演出だと思いませんか。実際の戦闘で、ほぼ動かない大きな的なら間違いなく全弾命中するでしょう。それをそのままリアルにやってくれたわけです。今までのゴジラだと自衛隊の撃った弾が逸れて周りのビルに当たっていました。そんなことは今回では皆無でした。それこそがリアルなのです。
 ところが、無傷なのですから。ゴジラは神のような存在なのでした。
 多摩川を渡河してしまったゴジラ、住民避難が終わっていないし残弾無しとなった自衛隊は作戦を終えました。残弾無しというあたりもリアルですね。自衛隊は火器に備えている弾の数が少ないということです。ここで日米安保に基づき、グアムから米軍のB2爆撃機がやってきました。
 霞が関に到達したゴジラに向かって爆弾が投下されました。なんと、これは効果がありました。大きな傷を負わせました。さすが米軍やで!
 しかし。ところが。
 ここから地獄がはじまりました。
 ゴジラが光って、口が開いて、さらに下あごが割れて……例のアレを放射しました。
 これまでのゴジラシリーズで最悪の放射となりました。一瞬にして東京の政治と経済の中心部が火炎の海となりました。
 しかも、放射されるものがやがて光線となります。その光線がギャオスみたいに超高層ビルを切断します。さらに、なんと、高い空を飛ぶB2に直撃します。このときばかりは(アメリカざまあみさらせ!)となりましたが。背中から同じような光線が発射されました。それはB2の第二次攻撃で投下された爆弾を正確に破壊して、2機目、3機目のB2が撃墜されるのでした。
 もはや、ここで私は精神的に崩れつつありました。
 日本の経済の中枢が崩壊したのですよ。炎の海と化した東京の中枢。崩れ落ちる高層ビル群。日本経済の崩壊です。
 いったい日本はどうなってしまうのか。明日からの生活はどうなってしまうのか。
 それだけに留まらず、ゴジラの光線が莫大な量の放射線を東京にぶちまけていました。東京の中心部が帰還困難区域になってしまったのです。
 最悪です。復興もできない状況に追い込まれるのです。
 あ……ああ……もう日本ダメだ……。首相などを乗せたヘリも巻き込まれたのはあまりがっかりしなかったですけどね。
 ところで、ゴジラにはレーダーみたいなものがあるようで、正確に航空機を迎撃できてしまうようです。
 さて、こんな感じの流れでしたが、政府内のやりとりや若い連中によるゴジラの対応が最高に面白いのです。
 まず、次官が大臣にメモを渡す場面は笑います。芸が細かいですね。
 そのあと、設置された対策室でゴジラを解明していく様が本当に最高じゃないですか。各省庁から集められた鼻つまみ者によるやりとりが仁義なき戦いのやりとりみたいで最高なんですよ。こいつらなら日本を救ってくれそうだという期待ができてしまうのです。
 このまま見捨てられるのか、日本。そんなことはなくて、スパコンを持っているどこぞの国の機関の奥様が「喜んで使わせてあげなさい」とおっしゃったところで泣きながらありがとうございますとなりました。この場面で本格的に泣きはじめました。
 国連による熱核攻撃が近づく中、日本だけではなく海外でも動いてくれる人がいました。ありがとうございます! ありがとうございます!
 米国にだって熱核攻撃を反対する人がいるんですよね。
 ゴジラのしっぽの先端で不穏な動きがあるものの、どうにかこうにかゴジラは血液凝固により活動を停止しました。
 新幹線と在来線による攻撃は、もう、なんというか、最高です。血液凝固剤を注入するためにゴジラの足を止めないといけませんからね、そのために鉄道を使うのですよ。そうきたか! 正直なところ、鉄道をそんなことに使うのはやめてくれと思いましたが、ゴジラの件が終わったあとの復旧に何年も必要だろうし、少々の鉄道車両を犠牲にするのも仕方ないことです。
 ただ、この作戦に鉄道車両を提供してくれたJR東海JR東日本には本当に感謝します。
 血液凝固剤を作るために全国の化学工場が協力したことも泣きました。日本が一丸となっているのですから。
 特殊なホース車両を提供してくれた民間会社にも感謝です。
 泣いた理由は、なくなってしまうかもしれない日本の絶望的状況と、そんな日本のために動いてくれた人々の2つですな。
 國村隼演じる統幕長の「仕事ですから」なんてしびれるでしょ。
 石原さとみ演じる日系の米国大統領特使は、あまりにも胡散臭い英語に呆れました。でも、本当は日本のことを思って動いていたし、実は彼女の祖母が広島原爆の犠牲者だったことですっかり見方を変えてしまいました。いずれは大統領になるんですってよ。そのときはお願いしますね。ここだけの話ですが、予告のとき黒いレザージャケットを着た石原さとみ尾野真千子に見えていましたけど。
 それ以外の役者の演技も最高じゃないですか。
 言っておくべきことはたくさんあって、音楽です。エヴァの有名な曲が流れたときはニヤニヤが止まりませんでした。進化前のゴジラで流れる曲と、相模湾に出現したときのゴジラのテーマと、ヤシオリ作戦開始で流れた自衛隊のテーマと、正直なところどうしてもその音楽が使いたくて使った感じがしつつもやっぱり気分が上がります。
 最悪の状況に追い込まれた日本ですが、まだ! まだいけるかもしれんのです。ゴジラがその鍵になります。血液凝固で活動を停止したゴジラが原因で放射線量が急激に下がりつつあります。ゴジラには未知の物質があります。
 なんだかこれ、今後の復興も描くとしたら攻殻機動隊みたいな話になりそうですけどね。壊滅する東京、放射線量を下げる技術、もしかして関西が日本の中心になる?
 ゴジラを作ったかもしれない牧教授、いや、ゴジラそのものになったかもしれない牧教授は日本を恨んでいるけれど、人類を助けてくれるかもしれません。
 でも、核の利用を続けるのであればきっとまたゴジラは活動を再開します。
 国連の熱核攻撃は停止したのではなく中断なのです。そのことがまたゴジラに影響を与えるかもしれません。
 もはや核の被害を増やすべきではありません。そのことをゴジラが教えてくれました。1954年のゴジラに続いて、真っ当に核と相対した今回のシンゴジラは、1954ゴジラを超えたのではありませんか。ゴジラFINALWARSであんなひどいことをやった東宝がまさかこんな作品を作るなんて、とても信じられませんが、本当に最高です。音楽と石原さとみの英語などすべてが完璧とは言いませんが、最高です。シンゴジラ最高です。でも、サントラはほしいなっ!
 日本の政治や東日本大震災放射線被害など、あらゆることに正面からぶつかっていったこの作品、皆さん、絶対見てねっ!
 まだまだ日本は捨てたもんじゃないです。まだやれます。そんな気持ちになりました。
 1954年ゴジラを超えて、オールタイムベストにも食い込むかもしれないシンゴジラ、最高です。まだ言い足りない気がするけど、最高です。
 あ、そうそう、MX4Dや4DXで鑑賞したらもう少し楽しいのかな、2Dのほうがいいような気もしますがそのあたりはまだ2Dを観ていないのでなんとも言えません。対策室でノートPCの画面を動かすときに座席も動いたのは面白かったですけどね。1954ゴジラみたいに遠くからゴジラの足音が聞こえたのは最高でした。
 あとからいっぱい付け足してすみませんね、最高です。