2015年11月13日公開
監督:なかむらたかし、マイケル・アリアス
脚本:山本幸治
音楽:池頼広
原作:「ハーモニー」伊藤計劃
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あらすじ:2019年に始まった大災禍の後、世界は極端に健康を追求する社会になった。世界保健機関WHOは軍隊や警察の機能まで吸収して絶大な権力を持った。WHO上級螺旋監察官トァン(沢城みゆき)は目の前で友人の自殺を目撃する。それは世界各地で起こった同時多発自殺の1人だった。捜査を始めたトァンは学生の頃にいっしょに自殺を図ったミァハ(上田麗奈)という少女とトァンの父に原因があると考える。そんなときに同時多発自殺の首謀者と思われる者が「健康・幸福社会を壊すため、1週間以内に誰か1人を殺さなければ、世界中の人間を自殺させる」と宣言したため世界は混乱へと向かう。
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まずは原作未読であることをお伝えしておきます。
いや〜、おじさんにはこんな難しい話はわかりませんけどね、少なくともトァンが劇中で飯を食ってる場面がひとつもないんですわ。キアンと再会してレストランにいるときトァンの前には飯が何一つ並んでいません。そして、口に何も運んでいません。父と再会してカフェイン(コーヒーなのか茶なのかペプシなのか)を出されたはずですがそれも口にしていません。
食べ物はいろいろな場面に出てきます。冒頭の取引ではワインらしきものが大量にありました。羽田に着いたときもディスプレイだけですが季節の野菜、冷製パスタ、スイーツなどがありました。レストランに行ったし、バクダットの旧市街でもいろいろな食品が市場にあふれていました。
でも、トァンは劇中で何も口にしていないのです。
ということは、フード理論によるとトァンは悪人なのです。だからこそあの結末なのでしょう。
ただ、トァンだけではなくて、レストランのときのキアンも含めて、劇中で誰かが何かを口にしている場面が一切無いと思うのです。私の見落としかもしれませんが、とにかく目の前に食べ物があるけどそれが口に運ばれている瞬間が全く存在しないではありませんか。錠剤を飲んでいる映像はありました。
この世界にいる彼ら全員が悪人だということです。誰ひとりとして食べ物を口にしていないなら、もはやそれは悪人かどうかを通り越して、そういう世界なのです。旧市街の人々も何も食べていないのだから、新旧問わず、何もかもおかしくなっているのでしょう。
ウォッチミーによってそんな世界ができあがってしまったのでしょう。狂った世界です。トァンが最後に言ったように、人類がいずれ向かう道だというなら、それもそれですけどね。
それにしても、この世界のワインは丈夫ですな。放り投げても割れない瓶です。どんな素材なのでしょうか。あと、気になったのは作画です。羽田のときのモブの顔がちょっとアレでした。
劇中の地下鉄は「9」となっていました。東京メトロの9号線は千代田線で色は緑です。代々木上原〜霞が関〜北千住〜綾瀬なので劇中の紫色の地下鉄羽田〜墨田とは大きく食い違います。それくらい未来の世界は大きく変わっているのです。行先表示「羽田ー墨田」が車体に大きく表示されていたのは良いですね。実際にあのような表示ができるようになればいいのですが。
でも、こんな世界、私は絶対に嫌です。
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