やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「ゴジラ」感想

1954年日本
監督:本多猪四郎
特撮監督:円谷英二
脚本:村田武雄、本多猪四郎
原作:香山滋
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 伊豆沖大戸島で原因不明の沈没事故が多発した。それは大戸島に古くから伝わる「ゴジラ」の仕業だという。調査が続く中、ゴジラは現実のものとなった。北上したゴジラは東京を破壊する。
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 2014年6月21日からデジタルリマスター版の上映が始まりました。というわけで映画館へ行ってきました。
 だいぶ前にDVDで観ているので初見ではないのですが、はっきり言ってそのときの記憶なんかちゃんちゃらおかしいです。
 ゴジラ第1作は本当にすばらしい! 再確認しました。ゴジラシリーズで最も好きな作品はゴジラ初作です!
 ゴジラ誕生60周年の今年、ハリウッドで本格的な、まじめなリメイクが進められて公開となります。そのためゴジラ関連の話題をちょくちょく耳にするようになりました。ラジオ番組「荻上チキのセッション22」でも特集がありそれを聴きました。ゲストたちのゴジラ談義は参考になりました。
 もともと今回のリバイバル上映は観に行くつもりでしたが、こんなラジオ番組でますます気分が高まりました。ただ、一方でDVDで観たときの記憶はほとんどなくて、古い映画で面白いと思ったものはそんなにないものですから、今更ゴジラを観たところで楽しめないのではないかという恐れもありました。
 初作のゴジラはひょろひょろで顔の形がブツブツのガタガタという変なイメージを持っていました。いつこんなイメージを持ったのか自分でもよくわかりません。
 しかし、映画館の大画面で観たゴジラは最高でした。どっしりした肉付きの良い胴体と足、顔もキリッと恐くて良いじゃないですか!
 よくこんなデザインができたもんです。ゴジラというネーミングセンスもすばらしいじゃないですか。ゴリラとクジラからきているなんて。
 1954年の日本で観たら本当の意味もわかるのでしょうが、現代だと少々伝わりづらいところもあるでしょう。そのあたりは町山智浩の解説が参考になります。
 当時の日本は外交的に孤立していたんですね。国会でのやりとりの場面「事実は公表しろ」「公表は外交上まずい」が当時の日本にとってはそのままの意味で取れるわけですね。しかし、現代だと福島第一原発事故の隠ぺいを想起させます。
 何より列車内の会話があまりにも重いです。「長崎の原爆から逃れてきた」にもかかわらず「また疎開」ですからね。当時の日本はまだ太平洋戦争で焼かれたばかりだったわけですよ。ゴジラの吐く放射熱線は焼夷弾も想起させました。
 さらに、破壊された街から救出された人々が病院に大勢運びこまれていました。野戦病院のような状況で、その中ではガイガーカウンタで患者を測定して「もうだめだ」と首を横に振る場面がありました。
 ビキニ環礁実験と第五福竜丸だけではない、太平洋戦争の再現です。
 この映画は現代日本から観ると原発事故の悲惨さを訴えているようでもあります。太平洋戦争と水爆実験だけで終わってほしかったのに、日本は自ら核の事故を起こしてしまって、再びこの映画を観るべきときが来てしまったのです。2011年の原発事故は、芹沢博士が恐れたオキシジェンデストロイヤー使用が最悪の形で現れたものといってもよいはずです。この作品のメッセージはあまりにも重いものとなりました。
 さて、作品として良い面ばかりとは言いたくありません。
 ドラマ部分が緩慢だなと思いますし、戦闘機(F86?)による攻撃が全然当たっていないのは笑いました。戦闘機を払おうとするゴジラの小さな手もかわいいです。メッセージと特撮はすばらしいものですが。
 最後に、劇中で流れる音楽について。オープニングの不気味な足音とゴジラ主題曲は背筋が寒くなります。それはさておき、私がずっと自衛隊マーチだと思っていたものが流れたわけですが、1954年といえば自衛隊法ができたばかりでした。だから、自衛隊マーチが流れるには少し早すぎるのではないかとも思うわけです。
 調べてみると、自衛隊マーチはもともと1943年に旧軍が伊福部昭に制作を依頼したものなんですね。吉志舞と呼ばれる古典音楽風の軍楽だったのです。それが後に自衛隊マーチになっていくわけですね。なるほどそういうことだったんですね。
 そんなゴジラ、ぜひ映画館でご覧ください。1000円で観れると思います。お願いします。