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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画『キャプテンハーロック』(3D)を観た感想(ネタバレ)


 2013年9月公開。監督:荒牧伸志、脚本:福井晴敏・竹内清人
 ハーロック小栗旬、ヤマ:三浦春馬、ミーメ:蒼井優、ヤッタラン:古田新太、ケイ沢城みゆきなど。

 全宇宙に進出した人類は成長の限界を迎え、今は故郷である地球への帰還を夢見るようになっていた。だが衰えたとは言え、一度は宇宙全体に広がった人類5000億を地球が収容しきれるはずがない。人類は地球帰還を争って「カムホーム戦争」を引き起こし、統治機構であるガイア・サンクションは全人類の地球を立ち入り禁止と引き替えに紛争に幕を引いたのだった。それから100年。全宇宙を「あきらめ」という名の秩序が覆う中、ガイア・サンクションの支配にひとり反旗を翻す男がいた。それは宇宙海賊キャプテンハーロック。ガイア・サンクションはハーロックを暗殺するため、青年ヤマをハーロックの船アルカディア号に潜入させる。彼はガイア・サンクションの下部組織ガイア・フリートの長官イソラの弟だ。ヤマはアルカディア号の一員となり、ハーロックが企む恐るべき計画の真相を知るのだった。

 某氏が「福井晴敏が脚本なので苦悩するハーロックが出てきますよ」と言っていました。そのとおりでした。
 こいつはトンだ偽ハーロックですよ。まさに宇宙の大罪人ですよ。
 地球はカムホーム戦争によって生命のいない死の星となっていたのでした。ただ、戦争が直接の原因ではなくて、地球が荒廃したのはハーロックの責任だったのです。そのことをアルカディア号乗組員にも明かしていません。
 ガイア・サンクションのごく一部の人間だけがこっそり地球に降りて住もうとしていました。それを知ったハーロックは怒り狂って、デスシャドーのダークマター機関(ミーメは古代異星人の唯一の生き残りで、この機関もその遺物)を全解放して地球に誰も近づけないようにしようとしました。そしたら地球を包むつもりだったのが暴走して地球をめちゃくちゃにしてしまったのです。
 ハーロックはそのことを悔やんで、宇宙諸共消滅させて『やり直し』しようとしたわけです。
 結局やり直しを思いとどまったハーロック、そして、ハーロック同様に右目を失って顔に傷を作ったヤマが新たなキャプテンハーロックになるという物語だったのでした。とにかく、キャプテンハーロックの誕生を綴った物語だったのですね。
 ガイア・サンクションに比べたらハーロックのほうがよほど悪いです。ガイア・サンクションが明らかに何か悪いことをしているという描写もないですし。もちろん、人類の衰退を黙認している老害の集まりではありますが。その老害も、最後には、地球が実は死の星でしたということがバレてアルカディア号共々破壊してしまおうとしました。それだけといえばそれだけです。
 そのガイア・サンクションの総監とやらが悪そうなヤツですし、何かやらかしそうではあるのですが、結局は正体など明らかにしないままでした。もしかしたら、アルカディア号を勝手に動かしていたトチローの存在もほのめかしたものの完全に明らかにしたわけではないので続編を考えているのかもしれません。
 ガイア・サンクションの軍隊であるガイア・フリートに捕まったあと助けられたハーロックはケイたちからもう一度アルカディア号に乗りましょうと誘いを受けますが、ここで出ました。こいつはウジウジ悩みました。あーあ。やっちゃった。まあ、偽者のハーロックだから別にいいですよ、別に。
 それにしても、俺のハーロックをこんな形でリメイクしやがって、許せません。
 漫画は読んでいませんが、ハーロックのアニメはすべて観ています。ハーロックに対して畏怖の念を抱いています。でも、今回のハーロックには怖れや尊敬などの気持ちを持つことなどできません。
 だいたい、最初のヤマが乗り込む場面ですが、新しい乗組員を4人の中から選ぶというものでした。その前に、アルカディア号に乗り込むため垂直の高さ数百メートルはありそうな崖を登った4人も恐るべきことです。その4人ですが、乗りたい理由を聞かれて金や名誉と答えると、はるか下方へ突き落とすなんてそんなのはアルカディア号のやることではありません。
 アルカディア号は敵艦に乗り移って白兵戦をやるのが得意です。そのとき乗り込むのに使う筒みたいなやつをどうして敵のガイア・フリートが使うかなあ。おかしいでしょう。アルカディア号がやるべきだったでしょう。
 アルカディア号の敵艦への突撃も本来は巨大な衝角を突き出して実行するのですけれども、それがいっさいなかったです。髑髏の艦首をそのままぶつけていました。
 ハーロック以外のキャラもそうですよ、特にヤッタランですよ。副長ヤッタランはプラモデルに必死で仕事などしませんし、ここぞというときしか仕事しませんし。戦闘機の模型を持って口で「ブーン!」って言いながら走りまわるキャラなのに。そんなヤッタランが白兵戦で先頭に立つわ、艦橋で常に機械を操作するわ、ありえませんな。
 ケイはあまり、影が薄いキャラだったように思いますけど今回は大活躍ですね。
 ハーロックは「前だけを見つめて おれは旅立つ 終わった昨日に 悔いはないから」というキャラのはずで孤高の存在のはずで、それが後ろ向きまくり、しかも宇宙ごとやり直しをしようとは、最悪です。
 それにしても、物語の最後です。ヤッタランもケイも明らかに死んだように見えて、ハーロック自身も血がポタポタと落ちる描写をやっておきながらピンピンしていますし、意味がわかりません。何事もなかったかのようにヤッタランやケイが起き上がるんですよ。悪夢ですね。
 スタッフロールの直前、新しいハーロックとして舵輪を握るヤマも、その後ろで死にそうにないハーロックがふんぞり返っています。どうなの、これ。
 製作総設定:松本零士となっていますが、本当にこんな脚本に納得したのでしょうか。
 さて、絵はきれいです。3Dで観る必要は感じませんでした。その絵ですけど、ヤマもケイも撃たれているのに傷がついていないのはどういうことでしょう。
 吹替については、ううん。
 以上です。
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