やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」を観てきた感想(ネタバレ)


 2001年9月11日、この日、世界は大きく変わりましたが、その一部を切り取った作品です。小説が原作として存在するようです。小説のほうでは今までにない試みが紙面上に施されているようですよ。
 同時多発テロで父を失った息子を中心としたお話ですが、決して同時多発テロに焦点が当てられているわけではなく、父を失った息子、夫を失った妻、子を失った父の悲しみに焦点が当てられています。国際関係とか歴史とか、そういったものには触れられません。
 ある日父の遺品の花瓶を割ってしまったところからこの映画は動き始めます。息子が割れた花瓶から鍵を見つけて、その鍵が合う鍵穴を探せば父と再会できるような気がして、息子の大冒険が始まるわけです。
 知識が豊富で、落ち着きがなく、よくしゃべり、公共交通機関を恐れて乗らないというお子さんが、ニューヨークのブラックという苗字を持つ人々と出会います。鍵の入っていた封筒にブラックと書かれていましたから。
 お子さんにしてみれば、鍵穴を探すことで父を失った悲しみを乗り越えられると思ったのでしょう。ただ、なかなかうまくいかない鍵穴探しに、お子さんの悲しみは増すこともあります。それでも、その先で出会う人々がお子さんの悲しみを癒していくのです。これが映画の最後にしっかりと伝わってきますから。
 夫を失った妻は、事件のことを早く忘れたいようです。でも、息子は忘れたくない。妻と息子はぶつかります。しかし、妻は実は息子の鍵穴探しにものすごく深く関与していたのですなあ。このくだりは間違いなく泣きますよ。
 妻と子の住むマンションの向かいにはおばあちゃんが住んでいます。そのおばあちゃんは事件以降同居人を住まわせるようになりました。おばあちゃんはお子さんと同居人が会わないようにしますが、実はこの同居人がおじいちゃんなんですね。
 おじいちゃんは正体を明かさないままお子さんの鍵穴探しに協力します。いっしょにニューヨークを歩き回るのです。お子さんが鍵穴探しをやめるように画策するものの、やがてお子さんが正体に気付きます。そして、おじいちゃんはドイツに帰ってしまいます。お子さんは辛辣な言葉をおじいちゃんに向けてしまいますが、このあたりもまた泣けます。
 鍵穴が見つからないまま、暴れてしまうお子さんですが、突然鍵穴の謎が明らかになります。それはまさかのところから判明するんですけども。最初に会ったブラックさんが実はヒントだったんですよ。このあたりが面白いところです。
 そこから次々とお話が収束していき、お子さんも妻もおじいちゃんも悲しみを乗り越えていき、お子さんは再び大勢のブラックさんとつながりを作ります。スタッフロールに向かうまでお涙頂戴です。
 生前の父がお子さんに与えていた謎もしっかりと明かされます。すべての謎が明らかになっていく様を涙とともに鑑賞しましょう。
 原作があるからこその秀逸な脚本、謎が明らかになって収束していくお話の持っていき方なんて最高ですよ。
 久々に泣ける映画を観ました。