やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「凶悪」を観た感想

 2013年9月公開。
 監督:白石和彌(長編作品は今作が2作目)
 脚本:高橋泉白石和彌
 原作:新潮45編集部編『凶悪 -ある死刑囚の告発-』

 スクープ雑誌「明潮24」に東京拘置所収監中の死刑囚須藤(ピエール瀧)から手紙が届いた。記者の藤井(山田孝之)は上司から須藤に面会して話を聞いてくるように命じられた。話の内容は、警察も知らない須藤の余罪、3件の殺人とその首謀者である先生と呼ばれる男:木村(リリー・フランキー)の存在だった。
 藤井は取材を進めるうちに告発の信ぴょう性が高まってきて事件に没頭していった。藤井は同時に自身の自宅の問題から逃げるばかりだった。妻(池脇千鶴)は藤井の母の世話で疲れきっていた。

 観終わって、映画館の洋式トイレに入り、しばらく座りこんでしまいました。強烈でした。須藤と木村の凶悪ぶりと藤井の家庭問題にボコボコにされました。もう、私、限界……。
 某ラッパーの宇多丸さんが今作品の評論をしましたけど、「ぶっこむぶっこむ」と楽しそうにしていましたけど、とてもそんな気持ちにはなれませんでした。
 須藤たちの殺人に圧倒されていました。たまんない。
 映画にここまでやられたのは、2011年アンチクライスト以来です。
 牛場のおじいちゃん殺害は、自殺に見せかけるため大量の酒を飲ませて意識を失ったところを雑木林に捨ててくるというものでした。それで、飲ませていた酒が巨大な焼酎ボトルのやつなんですよ。何リットルもあるでっかいやつで、安酒の代名詞です。おそらく金をかけないで大量に飲ませるのにそれを選んだのでしょう。
 でも、効率悪いからスピリタス飲ませたらいいんじゃないかなあと私は映画を観ながら思ったわけです。すると、木村が何か思いついた様子で酒の棚から瓶を1本持ってきました。なんと、それがスピリタスだったのです。世界最強のアルコール度数96度です。
 瓶をおじいちゃんの口に突っ込んでラッパ飲みさせて、おじいちゃんは死んでしまいました。
 この場面には戦慄を覚えました。やっぱり、俺も、木村や須藤の側なんだな、と。本当に恐ろしいです。
 さらに、こんな殺人を繰り返した須藤と木村に対して、裁判の場面では死刑になってしまえと思いつつ観ましたよ。この2人は生きていてはいけない人間だと思いました。藤井記者を応援していました。
 恐ろしい映画です。須藤がキリスト教に入信して改心していくあたりにも怒りを覚えました。
 リリー・フランキーは「そして父になる」のほうでは良い父親だったのに、演者というのは怖いです。
 さて、映画全体の雰囲気として演者がみんな演技くさくて気になりました。藤井が牛場電機へ初めて訪問したとき藤井の質問に答えたくなくてわざとらしく台帳の計算を続けたおばあちゃんの演出がひどいなあと思いました。
 あとは、須藤が木村から裏切られていたことを知った経緯がなかったようですが、いかがでしょうか。
 そんなツッコミどころなんか正直どうでもいいです。あまりにも強烈な映画でした。家庭問題から逃げる藤井も、雑誌が売れて藤井の取材に反対し続けていた上司が態度を変えたのも、みーんな、凶悪です。藤井の母だけは悪くありません、仕方ないです。
 ちなみに「ぶっこむ」というセリフは劇中6回ありましたが、正解でしょうか。(275)