やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドをがっつりと

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [DVD]

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド [DVD]

「おまえは拾ったゴミクズだ!」
「傾斜掘削だ!」
「俺が第三の啓示だ!」
 最後の最後にぶつけてこられる言葉の数々に私はもうボロボロです。宇多丸さんのシネマハスラー2008年映画ランキング第2位という本当のおすすめ映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」を今回は観ましたが……。なんだろうね、もうね、宇多丸さんは主人公ダニエルを怪獣だと言いましたが、ダニエルは何もかも破壊しました。参った! へこむわ〜。
 wikipediaのこの映画のストーリーは『舞台は20世紀初頭のアメリカ西部。ダニエルは幼い息子のH・Wを伴って油田を探す稼業をしていた。あるとき彼は、サンデー牧場に石油が出る兆候があるという情報を見知らぬ青年ポールから得る。現地へ赴いたダニエルは貧しいサンデー家から権利を買い取り、仲間を呼び寄せて試掘を開始、まもなく豊かな油脈を掘り当てる。しかし、同業者との競合、村人に強い影響力を持つ若き宗教家イーライとの確執、試掘中の事故、息子の難聴といった問題が、強欲で偏屈なダニエルを苦しめる。』とありますがダニエルは苦しんでいるように見えるときもあるけれども、むしろ周りのほうがダニエルによって苦しめられ破壊されていますよ。
 一番へこんだのは息子HWへの最後の仕打ちです。これまでダニエルはHWに対してそれなりの愛を注いでいたようにも思えるし、HWが試掘の事故によって難聴となったとき、試掘が成功して石油が出たことを喜ぶよりも先にHWの体を心配していたのです。心配したことが私は意外でした。意外と息子のことをこのとおり愛しているのですよ。ところが、最後の最後で息子に「拾ったゴミクズだ」って。今までのはいったい何だったんだよとなりましたけどよ〜く思い返してみればダニエルはHWに対して大勢の前で「早くしろ」と少々ひどいことをしていました。へこむわ〜。
 双子の兄弟が出てきたときダニエルは弟であることを少し疑いますがすぐに信用しました。しかし、実は弟ではなかったのです。弟は「特別扱いしてくれなくていいから働かしてくれ」と言うのですが、あるときふと本音を漏らしました。「女を抱いて遊ぼうぜ」みたいなことを言うわけです。それを聞いたときのダニエルの表情ったら、無いね! 怖かったね! ホラーだね! 「俺様のことをだましやがって。偽物だとわからなかった自分が恥ずかしいわ」ってそんなセリフはありませんでしたけどそのあとのダニエルの行動が、騙されたこと、信じてしまった自分、この2点を悔やんで怒り大爆発で、もうすごいです。
 石油を運ぶパイプラインを通す土地のひとつをおざなりにした仇が後からダニエルについてくるのですが、それを解決するためこれまで負けることのなかった宗教家イーライに負けてみせました。でも、それも負けたのではなく手段を選ばず負けてみせただけであり、私は何もかもすべてダニエルの完全勝利にしか見えませんでした。息子をゴミ呼ばわりして映画は終わりかと思いきやさらにイーライを傾斜掘削で破壊してようやく映画が終わって、私も破壊されました。
 ダニエルにとって少しでも裏切るなら敵、とにかく敵、すべて敵、破壊の対象でしかないようで、いっしょに掘る仲間は仲間というよりもただの道具です。敵と道具とダニエルしか出てこない単純明快な映画でした。ストーリーは本当に単純明快ですよ。
 ここだけの話、「沈黙の要塞」を少し思いだしつつ観ました。油井が火災を起こしたとき爆発で解決したりとか。沈黙の要塞はダニエル側が完全敗北しますけどね。
 少し長い映画ですが、へこんでみたいならおすすめです。どうして名作映画はへこむものばかりなんでしょう、げらげら笑ってすませられる名作をだれか作ってください。