やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「炎のデス・ポリス」鑑賞感想

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2022年7月日本公開

監督:ジョー・カーナハン

原案:マーク・ウィリアムズ、カート・マクロード

脚本:ジョー・カーナハン、カート・マクロード

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あらすじ:ネバダ州の砂漠地帯、警察の覆面パトカーで逃走する詐欺師のマレットがカジノで暴れた上に駆けつけたヴァレリー・ヤング保安官を殴って逮捕された。一方、事故を調べていた保安官に酔っ払い運転していたボブ・ヴィディックが突っ込んで逮捕された。それぞれが警察署に連行されて留置場で拘束された。その警察署では証拠品保管係の保安官が怪しい動きを見せている。彼らがつながっていき、やがて警察署へ突然現れた殺人鬼によって事態はますます混沌としていく。

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 ネバダ州で渦巻く陰謀も関係してくる壮大な物語が狭い警察署をめちゃくちゃにしてしまうのでした。

 こいつら全員悪党だとわかっているのに、あれ? もしかして信用してもいいのかなと思えてきます。でも、やっぱり信じてはダメでした。

 脇役も含めてどいつもこいつもいいキャラしてます。なんでもないようなキャラがいい味を出してしまいます。

 気になるところがいくつかあるのですが、たとえば留置場からどうやって出たのかなという点です。そういうのが物語の足を引っ張ってしまうけど、それでも面白い映画でした。

映画「キングメーカー 大統領を作った男」鑑賞感想

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2022年8月日本公開

監督、脚本:ビョン・ソンヒョン

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あらすじ:1961年、韓国東北部の江原道で薬局を営むソ・チャンデは世の中を変えたいという一心で政治家を目指すべく野党新民党所属のキム・ウンボム選挙事務所を訪ねた。選挙に勝つ方法を提案して、選挙参謀として受け入れられた。勝ち目のなかったキム・ウンボムは選挙で逆転勝利し、さらに2年後の選挙でも強力な対立候補に勝利した。新民党の大統領候補党内選挙が近づく中、ソ・チャンデとキム・ウンボムの協力体制は続くかのように思われたのだがすれ違いが起きる。果たして、彼らの運命は。

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 めちゃくちゃ面白いんですけど、これ。ぜひご覧ください。

 作中でやっている選挙の裏工作はほとんど史実だそうです。あまりにも突飛で、まるで孔明の罠のようなことばっかりが繰り広げられているので嘘臭いのですが、本当にあったことです。

 史実をもとにしている物語ということで、キム・ウンボムは金大中に相当します。強い光を放つキム・ウンボム、その光が作っている真っ黒な影に隠れているソ・チャンデ、作中の絵作りに感心したのは初めてのような気がします。

 ソとキムが事務所で話している場面は照明の天才かよと思いました。螺旋階段の場面は舞台作りの天才かよと思いました。こんなの初めてです。

 物語の運び方も軽妙で、たいへん見やすくてポップな作品というのが私の印象です。

 よくできたエンタメ作品です。

映画「ブラックフォン」鑑賞感想

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2022年7月日本公開

監督:スコット・デリクソン

脚本:スコット・デリクソン、C.ロバート・カーギル

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あらすじ:コロラド州デンバー北部の町で少年の行方不明事件が連続して起きていた。少年フィニーはある日、マジシャンだという男に突然連れ去られてしまった。地下室に閉じ込められた。そこには電話線の切れた電話機があった。その電話が鳴り、恐る恐る受話器を取ってみると少年の声がする。一方で、フィニーの妹グウェンは夢でフィニーの行方のヒントを見ることがあった。しかし、父はその夢を完全否定してしまうのだった。果たして、フィニーの運命は。

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 今の若い子たちは黒電話なんて知らんでしょうな。私は幼い頃に自宅にあったのでもちろん使ったことがあります。

 はい、というわけで、今作はホラーなのですが、まさかのジュブナイルですよね。少年たちが協力してフィニーを助け出そうとするわけです。

 ところで、作中のフィニーはめちゃくちゃ頭がいいですね。極限状態に追い込まれているから思いつくのかもしれませんが、それにしてもよく頭が回ります。

 フィニーとグウェンの父、そして、フィニーを連れ去った男、悪い奴らでございます。とはいえ、ラストについては他にもうちょっとやり方があったんじゃなかろうかと思います。フィニーにあんなことをさせるなんて、彼のトラウマになってしまうかもしれません。少年にあんなことをさせないでほしいです。ところで、あの結末はミストみたいだとは思いませんか。

 納得いかないラストだけど、面白い映画でした。

映画「とら男」鑑賞感想

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2022年8月公開

監督、脚本:村山和也

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あらすじ:1992年10月1日、石川県金沢市でスイミングクラブのコーチをしていた女性が何者かに殺害された。石川県警の刑事である西村虎男は捜査を続けたものの、2007年に時効を迎えて未解決事件となった。その後警察を退職していた西村虎男は、東京の大学からメタセコイアという植物の調査のためにやってきた大学生かや子と偶然出会う。虎男と事件に興味を持ったかや子は事件を再捜査するために行動を起こすのだったが、果たして。

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 全国未解決事件ファンの皆様ならよくご存じの金沢女性スイミングコーチ殺人事件がこの映画の題材となっています。何がすごいって、西村虎男さんは実在する刑事であり、この事件を担当していて、しかも今作で本人役として出演していることです。

 西村虎男さんは電子書籍『千穂ちゃん、ごめん!』を書いています。その書籍を読んだ村山監督が製作を決めたということです。ちなみに、この書籍においては当時の県警の体制への批判が中心であり、事件の真相に迫る内容は含まれていないとのことです。

 ドキュメンタリーではなく、あくまでフィクションなのですが、なかなかきわどいことをやっているなあという印象です。なぜなら、遺族やスイミングクラブにもかや子が聞き込みをやっていて、目撃者を探し出そうとしているうちに、なんと、まさかの真犯人にたどりついてしまうからです。

 もちろん、真犯人はフィクションとしての真犯人ですよ。一方で西村元刑事の捜査に基づく内容でもあります。

 関係者から訴えられたりしないかなと不安になる内容でした。

 陰キャのかや子が成長していく物語でもありますが……この事件の真相はこういうことだったのかと未解決事件ファンなりに納得していいんでしょうか。

 それにしても、未解決事件が未解決事件になってしまう経緯は何でしょう。youtubeでは未解決事件を追うチャンネルがいくつかありまして、そのうちのひとつのチャンネルである「だてレビ」さんを観ていてわかったことがあります。警察が散々捜査してもわからないものは我々外部の者にわかるわけないということです。ただ、一方で未解決事件には警察の捜査の不備もあった可能性も高いわけで、西村元刑事は県警の体制を批判しています。当時の石川県警にはDNA捜査をする設備がなかったために凶器となったオーバーオールを調べることができなかったのですが、よその県警ではすでにDNA捜査を取り入れていました。もし、県警どうしの壁を超えて捜査協力があれば逮捕につながった可能性もあります。

 現場の状況と数々の証拠があった事件なので解決できそうなものでしたが、未解決になってしまい本当に残念です。

映画「激怒」鑑賞感想

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2022年8月公開

監督、脚本:高橋ヨシキ

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あらすじ:富士見町の刑事である深間は悪に対峙するとき過剰な暴力を奮ってしまう。不祥事が重なり米国で治療を受けることになった。数年後、富士見町へ帰ってきた深間は、街の異変に気付く。警察署長が部下だった男に代わり、入り浸っていた店はなくなっていた。「安心安全、犯罪ゼロの町、富士見町」のスローガンのもと警察よりも強い権力を行使する自警団が犯罪者に過剰な暴力を奮っている。果たして、深間はどのように対処するのか。

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 本当に悪い奴らがいたものでございますよ。めちゃくちゃ悪党です。

 今の日本は自警団が闊歩する状態で、いろいろと隅に追いやられて辛い思いをすることもあるという感じですので、そんな自警団を懲らしめてやるわけです。

 そんな悪党を深間がぶちのめしてくれますのでご期待ください。だけど、そんな深間さんも痛々しい姿になっちゃうから爽快かといえばそうでもありません。お互いにボコボコになっちゃいます。

映画「この子は邪悪」鑑賞感想

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2022年9月公開

監督、脚本:片岡翔

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あらすじ:窪の一家は父司朗、母繭子、長女花、次女月の4人なのだが、依然起きた事故によって司朗は足が不自由になり、繭子はいまだに意識不明、月は顔面に大やけどを負って毎日家族の前でも仮面をつけていた。無傷だった花が月の世話をして、司朗も精神科医として患者の治療を続けていた。一方、彼らの住む甲府市内の一角では行方不明事件や精神を病んだ者が多い。花と同級生の四井純は街の異変と窪家につながりがあると考えていたのだが、果たして。

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 予想外のストーリー、想定外のラストというのは確かにそうなんですが、どうしましょうね。何を言ってもネタバレになってしまいます。

 このタイトルが作中のどこで回収されるのか、そこに注目してみるのもまた面白いかと思われます。作品全体が面白いのか、面白くないのかというと、まあまあそれなりでした。何か言えるとしたら、父司朗のやろうとしていることは、否定しづらいということです。決して間違いではないが、やり方がまずかったということです。

映画「シーフォーミー」鑑賞感想(ネタバレ)

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2022年8月日本公開

監督:ランドール・オキタ

脚本:アダム・ヨーク、トミー・グシュー

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あらすじ:元スキーヤーのソフィは視力を失っていた。視覚障碍者となった彼女だが、誰にも頼らず生きていこうとしている。しかし、その立場を利用して金品を盗んで多額の貯金を持っていた。ある日、ペットシッターとして裕福な家庭に入り込み、そこでも高額のワインを盗もうとしていた。ところが、その夜に強盗がやってくる。シーフォーミーという視覚障碍者用アプリでケリーという女性に助けを求めるがスマホの充電は残り少なくなっていく。果たして彼女の運命は。

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 ソフィってやつがなかなかの悪党でした。

 強盗が狙っているのは700万ドルの現金がある隠し金庫なんですけど、ソフィが意を決して強盗と交渉します。分け前をもらう代わりに警察が来たら追い返すという内容です。てっきりこれまでの盗みを反省して強盗をギャフンと言わせるために交渉したのかと思いきやまさかのガチで分け前をもらうための交渉だったことが後で判明します。

 びっくりしちゃいましたよ。おかげさまで警官が無駄死にです。

 ソフィは元スキーヤーでもありまして、舞台となる豪邸も雪深い山中なので彼女のスキーヤーとしての技術が生かされるのかと思いきやそんな場面はいっさいございません。

 さらに、アプリで出会ったケリーは若い女性なんですがイラクへ砲兵として派兵された経験があり、それがどうやらケリーにとってトラウマになっているということが短いセリフで説明されます。そんなケリーの過去がこの作品にどのように関係してくるのかというと、ソフィが銃で強盗を撃つときに少し役立つ程度でした。

 経験や過去が生かされず、ソフィとケリーの間に生まれた友情みたいなものもこれといって回収されず、いったいこの映画は何をしたかったのでしょうか。

 最後の最後に、ソフィは視覚障碍者スキーヤーに復帰しますけどそんなソフィの滑走をケリーが助けるのかと思いきやそれも無しでした。助ける流れが作中にあったんですがね。