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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「ゼロ・グラビティ」(3D)を観た感想


2013年10月アメリカ公開、同年12月13日日本公開
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン、ホナス・キュアロン
製作:アルフォンソ・キュアロン、デヴィッド・ハイマン
製作総指揮:スティーヴン・ジョーンズ
音楽:スティーヴン・プライス
撮影:エマニュエル・ルベツキ
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 医療技師のライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は宇宙ミッションに初参加した。船長のマット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)が支援する中で、慣れない彼女は宇宙遊泳をしていた。そのとき、ロシアが自国の人工衛星をミサイルで破壊処分したという情報が入る。その後、破壊された人工衛星が猛烈な速度で飛ぶ宇宙デブリとなって次々とほかの人工衛星を破壊し、ついにはライアンたちを襲った。
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 はっきり言ってすばらしい映画です。舞台は宇宙空間で、それをとことん再現した映像と音がすばらしいです。宇宙で作業をしていると、音はこんなふうに聞こえるんだなあという感じで、宇宙遊泳の入門書として使えるんじゃないかとまで思ってしまいます。
 作中で出てくる人はサンドラ・ブロックジョージ・クルーニーのみで、あとは宇宙特有の状態で死んだ人と声のみです。脚本も洗練されていて、余計なものがいっさいなく、ストーン博士の私生活も映像で見せることはせずにセリフのみだけで想像させます。冒頭の作業場面でストーン博士がボルトを危うく宇宙に捨てそうになったのは印象的です。演出が細かいです。コワルスキー船長は宇宙の経験が豊富な頼れるリーダーだと理解させてくれますが、それも一見くだらない会話と宇宙遊泳の動作だけで想像させてくれるのみです。無駄なものが本当に何もない、現代の宇宙船のように必要最低限なものしか積み込まれていない映画でした。
 意味のないようなセリフもそれは音がないし何よりも多大な危険の伴う宇宙での作業を円滑にするためのものばかりで、ちょっと字幕を見逃すとダメかもしれません。
 91分という短い作品に仕上げたその手腕に拍手です。
 それにしても宇宙の映像をどうやって撮影したのでしょうか。すべて無重力ですし。スペースオペラやアニメではなくて、このような現代の地球からすぐそこの宇宙を舞台にした映画はどうやって撮影しているのでしょう。
 宇宙空間では光の当て方も大切な演出となりますし、ほかの映画と違って難しいイメージがあります。
 本当に映像も美しいです。宇宙服のヘルメットに反射する地球が最も感動する場面かもしれません。
 さて、主役を演じたサンドラ・ブロックについて、当初はアンジェリーナ・ジョリーの起用が考えられていたようです。そのあと、マリオン・コティヤールスカーレット・ヨハンソンブレイク・ライヴリーナタリー・ポートマンなどが出演のためのテストを受けるなどして結果的にサンドラ・ブロックへ行き着いたようです。
 Twitterである方が「サンドラ・ブロックはスピードでバスを運転しているし、重大な事態をなんとかしてしまう安心感があってダメ」とおっしゃっていました。それもそうだなと思いました。これまで候補として上がった女性たちを見ていると、皆がサンドラ・ブロック同様に窮地を脱する力強さがある人たちばかりです。
 アロフォンソ・キュアロンは、難局にあっても大丈夫そうな人を主役にしたかったということでしょうか。何を任せても大丈夫そうな女優よりも安心できない人のほうがよかったかもしれません。
 とはいえ、鑑賞中は、行けるのか行けないのか、つかめるのかつかめないのか、間に合うのか間に合わないのか、凄まじい緊張状態が繰り返されます。合間のちょっと息抜きできる場面もあり、緩急も申し分ありません。だから、力強く見えるサンドラ・ブロック主演でよかったわけで、頼りない部分がありそうな女優だと圧倒的緊張感というか宇宙に押しつぶされてしまいそうです。
 最後に、この映画で、国際宇宙ステーションが失われ、ほかにも中国は天宮を、その他多くの人工衛星が破壊されたと思われます。これにより人類は不便な生活に戻り、しかも、宇宙に再び出ていくことのできない状況に追い込まれたのではないかと思われます。そのあたりの状況を描いた映画がスピンオフとして作られたら面白いかもしれません。
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