2013年8月公開。アメリカ。マーク・フォースター監督。
主演ジェリー役にブラッド・ピット。
マックス・ブルックスの小説を原作としている。
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突如発生した謎の病原体が瞬く間に世界中へと広がり、各国の政府などが崩壊していった。元国連調査官のジェリーはフィラデルフィアの中心部を家族とドライブしていたが、フィラデルフィアもまた病原体に犯された人々が溢れ大混乱に陥った。そのときジェリーの携帯電話に旧知の仲の国連事務次官ティエリーによって家族とともに救出されて、大西洋上の艦隊で過ごすことになった。ただし、それは人類の危機を救うために働くことが条件であり、その条件を飲まないなら安全な艦内にはいられないという。ジェリーは感染症学者とともに韓国へ飛び、謎の病原体について調べていくことになった。果たして人類はどうなるのか。
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観終わって、映画館を出ていくときはかなりテンションが高くて、2013年俺ランキングでジャンゴに次いで2位かもしれないと思いました。ものすごく面白かったです。
ただ、冷静になってみると、ダメなところが思い出されたりして、でもそんなダメなところも忘れてしまっていたくらいにこの映画に夢中になっていたということです。
まず、この作品が上映されるまでにどのような宣伝がされていたのかについて一部で批判が出ていました。ゾンビ映画であるにもかかわらず家族を守って戦うブラッド・ピットの映画でありゾンビが隠されている感じの宣伝だからダメだというのです。
私も「そのとおりだ」と思っていました。
映画館のチケットカウンターで並んでいると後ろの家族が「ワールドウォーZは家族を守るお話だろ」と言ってて(こりゃだめだ)と思いましたし、その同じ人が「風立ちぬは子供向けだし」とも言っていました。
ところがですね、映画を観終わった後でネット上の感想を観ていると「ゾンビが出てくるとは思わなかったが面白かった」「想像していた内容と違ったが面白かった」というのがたいへん多いのです。これは宣伝のしかたの大勝利ではありませんか。
宣伝のしかたが間違っていなかったのですよ。宣伝を批判した私が間違っていました。
それはさておき。
116分の長さですが、冒頭すぐにジェリーが異常事態に巻き込まれますので116分なんてあっという間ですよ。
ちなみに今回のゾンビは走ります。音に反応します。
ジェリーが同行した感染症学者が韓国に着いた途端に死ぬというまさかの展開にこちらも混乱しました。しかし、ジェリーがひとりで世界を巡りはじめます。
結果的に、ゾンビは健康な人間しか襲わないということがわかり、天然痘などを注射して病気になることでゾンビから襲われないようにする方法を編み出しました。それを世界に配布していくところで映画は終了です。こんな感じで世界が救われるエンドが大好きでして、宇宙からの侵略など人類終末映画で人類勝利してくれないととても欝になります。ゾンビ映画は人類敗北エンドが多いですよね。そうでもないか。
作中はずっとブラッド・ピットが地獄巡りします。ていうか、行く先がどんどん地獄と化していく感じです。最初の韓国米軍基地が地獄と化したのはブラッドピットが原因かもしれませんが、次のイスラエル、その次の機内はブラッドピットが原因ではないですね。
次から次へとゾンビの集団が現れて仲間が死んでいき、どうにかこうにか切り抜けていくのはハラハラドキドキとしか言い様がありません。
いけるのかいけないのか、やれるのかやれないのか、そういう感じです。
イスラエルでの調査は皮肉だなと思いました。自分たちの土地を守るために作った壁がゾンビから守ることとなったのは皮肉です。ただ、そんなイスラエルも世界がこのような事態に陥って、外部の人々を救うために招き入れます。救う理由は「ひとり救えばひとりのゾンビが減る」というツンデレみたいなものでしたが。
ところが、壁の中に入った集団が喜びのあまり歌いはじめます。その歌が広がっていきます。すると、壁の外のゾンビたちが反応して壁を超えてしまうわけです。これもまた皮肉です。
それにしてもジェリーが行く先には必ずいいひとがいました。悪い人間が出てきませんでした。これは驚きです。こういうパニック映画は少なからず悪い人が出てきて迷惑を被ることすらあります。それがないんですよ、この作品では。すごいことです。みんながジェリーに協力します。
いいひとばかり出てくる映画も好きです。ああ、だから、私は大好きになれたのかもしれません。
なんだか、この感想文を書いていると、映画の悪いところがどこだったのか忘れてしまいました。もういいんじゃないかな。あ、ひとつだけ思い出した! ジェリーと家族がヘリに救出されて連れていかれた艦を字幕は空母といってましたがどう見ても空母じゃありません。たぶん強襲揚陸艦です。
そんなこんなで、ワールドウォーZはおすすめです。(219)