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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画『パシフィック・リム』(2D字幕)を観た感想(ネタバレ)


 2013年8月公開。アメリカ。ギレルモ・デル・トロ監督。
 主演のローリー役にチャーリー・ハナム、マコ役に菊地凛子ほか。

 近未来、太平洋のどこかにある裂け目から突如として巨大な生物が現れた。それは『カイジュウ』と呼ばれる。1匹目は軍隊によってなんとか退治することができたものの、人類に大きな被害が出る。カイジュウの出現は続き、世界は協力することとなった。
 2人のパイロットを乗せてそのパイロットと神経を接続することにより動く巨大ロボット「イェーガー」をカイジュウと戦わせた。当初は人類が優勢だったものの、カイジュウは強力になり、しかも知恵をつけているようだった。
 数十あったイェーガーは次第に破壊されていき、4体となってしまう。
 太平洋にある裂け目は核爆弾によって閉じることができるかもしれない。そこでイェーガーを使用して核爆弾を投じて裂け目を閉じる作戦が立案されたが、イェーガーが保管されている香港の基地にカイジュウが近づいてきた。カイジュウとの最後の戦いへと向かうこととなる。

 現実を見せつけてんじゃねえぞ、このクソデルトロがっ!
 映画そのものはすばらしいです。巨大ロボットと怪獣の戦いを実写で観ることができるようになるとは夢にも思わなかったです。よくぞ映像化してくれました、ギレルモデルトロ監督。
 パイロットの人生、その過去に何があったとか、マコを助けたのは実は彼らの司令官だったとか、そんなことはどうでもいいですよ。マコの幼い頃を演じたのが芦田愛菜でしたけど、うまかったんじゃないですかね、あの演技は。
 デルトロ監督の造形美は最高です。怪獣とイェーガーのデザインはデルトロ監督あってこそのすばらしいものになっています。
 それよりも、巨大ロボットと怪獣の戦闘シーンです。それをたっぷりと見せつけられます。主に海上での戦闘が多いですが、香港のビルに囲まれた中での戦闘も、どの戦闘も鳥肌が立ちました。
 こないだローン・レンジャー金門橋の建設途中を観ましたけど、今回は金門橋が破壊される様子を観てしまいました。わずか1週間のことです。
 では、なぜクソデルトロなのか。
 怪獣から地球を救った方法がクソだと思います。
 今日の日本は東日本大震災により福島第一原発が事故を起こし、たいへんなことになっています。原子力に対する風当たりが強い状況であり、浜通り:磐城地方(あえて福島とは言いません。福島と言ってしまうと会津地方まで含めてしまうので。)は居住の困難な状況でもあります。日本の電力事情にも大きな影響が出ています。
 さて、デルトロ監督はイェーガーのデザインについてガンダムに出てくるザクからヒントを得たものもあるとか。イェーガーの中で最も活躍したジプシー・デンジャーなんてマジンガーZもしくはグレートマジンガーそのものじゃないかという感じです。ロケットパンチとかブレストファイヤーとか、頭部にパイロットが乗り込み、その頭部が胴体に装着されたりとか、チェーンソードとか。ならばデルトロ監督は少しは日本のことを知っているのではないかと思うわけです。東日本大震災原発事故も知っているはずです。
 スタッフロールの最後に「レイ・ハリーハウゼン本多猪四郎に捧ぐ」と出ていましたし、ということはゴジラを知っているし、ゴジラは原爆が原因で生まれたことも知っているはずです。
 にもかかわらず、なんだ、映画の最後の解決手段は。
 アメリカ映画の大作は、やたらと核爆弾で解決することが多いじゃないですか。今回もまーた核爆弾で解決ですよ。実際は核爆弾を裂け目に投下することが不可能となり、核爆弾を搭載したイェーガーはカイジュウといっしょに自爆、原子力を動力としているジプシー・デンジャーが裂け目に身を投じて動力を暴走させて爆発、そして裂け目は閉じられました。
 結局は原子力を使って解決してしまったのです。
 ギレルモ・デル・トロ監督はスペイン内戦をもとにした映画を作っているので戦争などに対する強い考えがあるはずなのでがっかりの解決手段です。
 劇中で怪獣や裂け目を研究している科学者が2人出てきます。その一方が裂け目を閉じるために核爆弾を放り込む作戦を提示します。強烈な爆発によって裂け目を閉じることができるようです。もうひとりがその方法に待ったをかけます。核爆弾を放り込む前に怪獣をもっと調べるべきだと主張します。てっきり怪獣を調べたがっている科学者が核爆弾ではない何か違う方法を提示してくれるのかと大いに期待しました。でも、裏切られました。裂け目へ核爆弾を投じるためにもっと確実な方法が見つかっただけでした。
 人類の窮地を救うには原子力しかない。
 そういう現実を見せつけた映画です。
 デルトロさん、あんたも同じことをやっちまうのかい。
 怪獣を倒すためにせっかく巨大ロボット:イェーガーを作ったのに、イェーガーではなくて原子力が事態を収拾してしまうのです。SF映画なんだから、未知の何か新しい方法で解決して、夢を見せてほしかったです。
 あと、怪獣を倒す方法としてイェーガーが計画されて実行となったわけですが。なぜ通常の軍隊が持つ兵器ではなくてイェーガーでなければならないのか、その理由を説明してほしかったです。バンカーヒルなどの巡洋艦からトマホーク、B2爆撃機からバンカーバスターを何十発も撃ち込めば倒せると思うのですがね。アウトレンジから安全に倒すことができずイェーガーを作ったという、ガンダムみたいにミノフスキー粒子があるからというくらいの理由がほしかったです。ああ、でもバンカーバスターは誘導兵器じゃないから難しいのか。でもでも、イェーガーを作る技術があるならバンカーバスターを誘導兵器にするくらいの技術があってもいいはずですけどね。
 それと、怪獣の出現頻度が狭まっているにもかかわらずイェーガーによる撃退をあきらめて壁で怪獣から人類を守る方法に切り替えた政治の判断もよくわかりません。何の意味もないことはわかりきっているのになぜでしょう。進撃の巨人じゃないんだから。相手は怪獣なんだから。しかも出現するタイミングが早くなっているのに。
 日本製イェーガーのコヨーテ・タンゴが出てこなかったと思います。見逃したはずはないのですが。
 もうひとつ、菊地凛子が日本語のセリフを話すのですが、片言に聞こえます。それと、幼いマコが東京で怪獣に襲われた場面ですが、やっぱりどうしてもおかしいんですよ。日本語の看板とか。欧米人がイメージしている日本の都市でしかなく、違和感がありました。デル・トロ監督でもこんな日本になってしまうのでしょうか。残念です。
 なんだか、この映画を否定しているかのようですが、すばらしい怪獣映画だと思いますよ。胸が熱くなる戦闘シーンです。おすすめです。(218