やくもとうずしおをがっつりと

「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。

映画『終の信託』を観た感想(ネタバレ)


あらすじ:折井綾乃(草刈民代)は、患者からの評判も良い呼吸器内科のエリート医師だ。しかし、長く不倫関係にあった同僚の医師・高井(浅野忠信)から別れを告げられ、失意のあまり自殺未遂騒動を引き起こしてしまう。そんな彼女の心の傷を癒したのは、重度の喘息で入退院を繰り返していた患者、江木秦三(役所広司)だった。互いの心の内を語り合い、医師と患者の関係を越えた深い絆で結ばれてゆく。やがて、病状の悪化によって自分の死期が迫っていることを自覚した江木は綾乃に懇願する。「信頼できるのは先生だけだ。最期のときは早く楽にしてほしい」と。2か月後、江木が心肺停止状態に陥り、綾乃は決断を迫られる。約束どおり治療を中止するのか、命ある限り延命の努力を続けるのか……。“愛”と“医療”の狭間に揺れる綾乃は、ついに重大な決断を下す。3年後、その決断が刑事事件に発展した。綾乃を殺人罪で厳しく追及する検察官の塚原(大沢たかお)。綾乃も強い意志を持って塚原に向き合う。

 重い映画です。
 重度の喘息で苦しむ患者を描いたのが前半で、後半は検事と対決する医師を描く後半の二部構成です。
 映画冒頭では、綾乃が検察局に出頭する場面となっており、なぜ検察局に呼ばれることになったのか、過去を思い出すという形で患者の江木とどんなことをしていたのかが描かれます。
 役所広司の演じる喘息患者の姿がひどく痛々しくて、苦しみつつもいろいろ悟っているような患者に惹かれてしまう女医です。観ていられないですよ。医療費を払う家族に気をつかう江木さんには涙腺が緩みます。
 さて、後半は綾乃が厳しい追及を受ける場面となりますから、これがまたひどく重いです。
 「それでもボクはやってない」を撮った周防監督ですから、検察の追及のやり方がひどいです。
 ただ、ここで重要になるのは、大沢たかお演じる検事の言い分も間違っているわけじゃないのですよ。
 患者から人工呼吸器をはずして安楽死させようとしたら患者が突然暴れだして、大量の薬物を投与し、死なせようとします。この場面があるから、検事が「あんたのやったことは殺人なんだよ」が刺さります。
 とはいえ、苦しみから逃れたい患者の言い分もあり、それを理解した医師の気持ちもあり、医師と検事の言い分は、どちらが正しくて間違っているとは言い難いのです。
 難しい映画です。
 供述調書を勝手に作成したり、誘導のような尋問をしたり、検事の方法が間違っているのは見逃せませんが。
 医療行為をしたつもりが、殺人のような形になった江木の安楽死は、あまりにも悲しいことです。
 最後の最後に、綾乃を殺人容疑で逮捕したあとの検事の少し考える表情もずるいです。完全に悪の検事というわけではないのですから。
 少々だるい場面が多い作品ですが、判断の難しい状況を扱った考えさせられるものでした。