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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「一命」を観てきた感想(ネタバレ)

 三池監督っていろんな映画を撮りますね。こんなものもやっちゃうんですね。面白かったです。
 時代は1630年ということで、観る前のイメージからすると江戸時代中期以降かなと思っていただけにちょっとちがいました。テーマは「武士の面目」で、生活に窮する一部の浪人の間で流行ったという狂言切腹を扱った内容でした。
 実在の井伊家が出てきたり、関ヶ原以降今の広島へ移った福島藩が出てきたり、完全な創作でもなさそうなんですね。
 この映画ではまず1630年冬から始まり、そこへ至るまでの話が語られます。時系列どおりだと、福島藩の城が大雨で崩れます。それを補修するには幕府の許可が必要ですが、その許可が下りません。それで、許可のないまま修理をしてしまい、幕府から津軽へ移るように命じられてしまうのですね。そのために大勢の武士をリストラしなければならず、そのひとりの、市川海老蔵が演じる主人公は浪人となってしまいます。彼には娘がいて、この娘が重要。
 さらには上司が病気で死亡したためにその息子を引き取ります。貧しい暮らしをしつつ成長する娘と男の子。成人したところで、娘(満島ひかり)と男の子(瑛太)が結婚、子どももできました。
 貧しくとも楽しく暮らしていましたが、満島ひかりが病気で倒れてさらに二人の子どもまで病気となります。その状況を救うために瑛太が噂に聞いた狂言切腹を井伊家でやろうとして、狂言が通用せず切腹する羽目になります。
 この切腹が悲惨でした。
 瑛太は自分の刀を金に換えていて、脇差はなんと竹だったのです。その竹ですんなりと切腹できるはずもなく、井伊家の庭でひどく激しく醜態をさらしながら切腹したのでした。壮絶な場面でした。
 瑛太の死体が運ばれて、市川海老蔵は彼に何が起きてしまったのかを把握、さらには子供が死に、瑛太の死体と子供にショックを受けた満島ひかりも自殺しました。
 そこで市川海老蔵は井伊家へ復讐に向かう……というものです。
 ひたすら悲しくつらい話が続く映画でした。
 武士の面目でもある刀を売った瑛太と、刀を売らずに置いていた市川海老蔵、武士の面目を貫こうとする井伊家の家老、武士の面目なんてバカバカしいし生きるためならどんなことでもするべきだと考えるようになった市川海老蔵
 市川海老蔵は、瑛太が井伊家の庭で切腹させられる直前に妻子を助けてもらえるように懇願したことを井伊家家老(役所広司)に問いただすシーンがあります。なぜ少しでも慈悲をみせなかったのか、と。
 いや、でも、ある日突然玄関先に現れた知らない人から「助けてください、3万円ください」とか言われてもまず助けません。警察呼びます。
 井伊家にしてみれば迷惑なだけですよ。武士の面目以前の問題です。
 そりゃあ、瑛太満島ひかりはめちゃくちゃ貧しくてたいへんですけど、それとこれとはまた話が別ですよということで。
 じゃあ、仕方ないですねってわけにもいかないなあとも思いますが。
 ネコの対比も泣かせるところです。瑛太側にいるネコと井伊家家老の膝に乗っているネコ、どちらも白ネコですが、やせ細っているのと太っているのと、ちがうんですよねえ。
 さて、映画のクライマックスは木でできた刀を持った市川海老蔵と井伊家の大立ち回りです。これは必見ですな。作中では市川海老蔵が強いですよーという描写がないものですから、見た目だけはめちゃくちゃ強そうですが、何十人も相手に暴れん坊将軍とかそういう状況になっていて大迫力です。大迫力だけど、刀は木! しかも説教しながらですよ。
 これはすごいなあ。観てよかったです。