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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画『風立ちぬ』を観た感想


 2013年7月20日より公開のジブリアニメ映画。宮崎駿監督。
 零式戦闘機設計者として知られる堀越二郎をモデルとした主人公の青年技師二郎が、関東大震災や経済不況に見舞われ、やがて戦争へと突入していく1920年代の日本でどのように生きたかを描く。
 幼い頃から空にあこがれを抱いて育った堀越二郎(声:庵野秀明)は、震災の混乱の中で少女里見菜穂子(声:瀧本美織)と運命な出会いを果たす。やがて飛行機設計技師として愛知の三菱に就職し、その才能を買われた二郎は、同期の本庄らとともに技術視察でドイツや西洋諸国をまわり、見聞を広めていく。そしてある夏、二郎は避暑休暇で訪れた軽井沢のホテルで菜穂子と再会した。やがて2人は結婚する。菜穂子は病弱で療養所暮らしも長引くが、二郎は愛する人の存在に支えられ、新たな飛行機作りに没頭していく。

 面白かったです。
 どうせ零戦を土台にした反戦映画なんだろ? それで、どんな感じで反戦の主張を展開するんだ? そんな感じで映画館に向かったのですが、観てみたら反戦映画とか何かそういう主張を盛り込んだ映画ではなかったです。
 二郎が淡々と飛行機を製作していく、ただそれだけの映画でした。
 特高と菜穂子の病気以外に大した山場もなく、けっこう単調な内容でした。飛行機製作で大きな失敗があって一度は諦めて一念発起するとかそういう展開があったわけではありません。
 山場がないのに、面白かったのはジブリの底力なのかな、と思います。
 相変わらず、ジブリの映画は飯がうまそうです。シベリアというお菓子が出てくるのですが、うまそうでした。
 二郎がバカみたいに好青年でして、飛行機の図面に向かっているときと、そうじゃないときの人間性がよくわかりましたよ。
 反戦の主張がまったくなかったわけではありません。ただ、その主張を軽井沢で出会った白人にさせていました。それが物語に良い影響を与えたと思います。
 二郎が政治的な発言を一切せずひたすら愚直に飛行機製作にのめりこんでいる姿を描いているので、映画に筋が通っているように感じられました。
 あとは、絵ですね。セリフによる説明ではなくて絵で説明してくれるのです。やはり映像作品はこうでなければいけません。
 最も驚くのは関東大震災の表現です。大地が揺れる様をあんな感じで描くのは衝撃的です。
 夢の中で出会うカプローニ伯爵も、アニメならではの表現がすばらしいです。ジブリ独特の絵はこういう場面で最高の輝きを見せます。
 こんな内容で泣くわけないと思いきや、二郎と菜穂子が黒川家で結婚式を挙げるとき泣いてしまいました。クソッ!
 現実のほうでは、二郎は本当に特高から狙われたのでしょうか。もしそうだとしたら、だからこそ日本は戦争に負けたし、零戦のあとの新型機開発が遅れたのですよ。何やってんだか。
 それにしても日本はわずかな時間でよくもまあ世界標準の航空機を開発しました。凄まじい躍進です。戦争さえなければ、戦争に勝っていれば、エアバスボーイングのような航空機メーカーが日本にもあったかもしれません。本当に惜しいです。
 代わりに、新幹線の登場と自動車産業などの躍進があったので、それはそれですね。
 バカみたいに戦争だの何だの悲しい場面ばかりでお涙頂戴ではない描き方が良いです。
 さて、この映画のダメなところですが、二郎の声です。庵野秀明監督にさせたのはダメでしょう。いくらなんでも。宮崎駿め、絶対にふざけたな! 一番最初のセリフで頭を抱えてしまいました。
 風立ちぬの予告は数ヶ月前から4分間という長いものが流れていました。そのたびに頭を抱えていましたが、本編でもやっぱり聴くに耐えないものでした。あれはダメだ。
 あと、劇中の飛行機のエンジン音なども人の声を加工したものなんですよね。それも気持ち悪かったです。
 宮崎駿め、いい加減にしていただきたいですな。
 それでは最後に、個人的に熱かった場面に触れます。それは、劇中で軽空母が出てきた場面です。今、ちょうど『艦これ』というゲームにドハマリしているので、軽空母やそれ以外の艦船が登場したときテンション上がりまくりでした。
 軽空母は鳳翔だそうで、ほかに駆逐艦や戦艦の姿も見えました。あれらは何だったのでしょうか。気になります。
 そもそも劇中で最後に飛行を成功させた機体は何だったのでしょう。主翼が折れた形をしているから零戦ではないと思うのですが。
 最後の最後に、結婚したあとの菜穂子がかわいいです。おすすめ!でも、これだけの有名な作品となると、上映中に携帯電話をパカパカしたりしゃべったりする客が多くて、劇場内の環境があまりよくないですね。(212)