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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

ドラマ「チェルノブイリ」鑑賞感想

2019年5月米国公開
監督:ヨハン・レンク
脚本:クレイグ・メイジン
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 レガゾフ博士からあなたも5年後には死にますと告げられたシチェルビナ副議長のあのときの顔ったらありません。このおっさんかわいいなと思いました。正直なところざまあみろと思ったのですが。シチェルビナ副議長はツンデレですね。以降のシチェルビナ副議長は我が身のことのように事故対応へ本腰を入れることになったのですから。やはり当事者になってみないとわからないものです。プリピャチ市民の避難はシチェルビナ副議長の功績ですよ。モスクワでの報告会議にシチェルビナ副議長は絶望したような表情で出席しています。このときはいよいよシチェルビナ副議長がかわいく見えました。おっさんがかわいいなんて、、、。「ゴルバチョフのクソ野郎にも言えよ!!!!!」このセリフは最高じゃないですか。ゴルバチョフといえば、ゴルバチョフ書記長が出てきたときは(この人知ってるー!ニュースで見たことあるー!)となりました。
 さて、レガゾフ博士のセリフについて、前述の5年後に死ぬ以外にも「6000万人です」などもそういうところやぞとツッコミを入れました。そんなレガゾフ博士は、博士でなければただのおっさんですが、かっこいいおっさんです。
 レガゾフ博士、シチェルビナ副議長、ホミュック博士の3人はまるでXファイルシリーズの3人のように思えました。レガゾフ博士はモルダー捜査官、政府の官僚でありレガゾフ博士の監視役ではありませんがシチェルビナ副議長はスカリー捜査官です。ホミュック博士のほうがスカリーじゃないかと思われるかもしれませんが、ホミュック博士はローンガンメンの3人です。ホミュック博士は実在の人物ではありませんし、当時の多くの識者を融合した存在ということでローンガンメンのように私には見えました。
政府の陰謀と戦いつつ、人々の脅威に対処する、Xファイルシリーズのようでした。チェルノブイリの最後も政府の陰謀に負ける形でレガゾフ博士は連行されましたが、真実を明かすことのできないまま終わるXファイルのようでした。
 ディアトロフ副技師長、こいつはめちゃくちゃ腹立ちます。なんだこいつ。黒鉛が原子炉内部に落ちる欠陥が小さく思えるほどディアトロフに苛立ちました。しかもこいつはバリバリ放射線を浴びているくせに長生きしています。悪い奴が長生きするのは本当だったのですね。
 それにしても、作中でやたらとタバコを吸いますね。シチェルビナ副議長は吸わないようですが。レガゾフ博士の喫煙は印象的です。自分の命がわずかであると知る前から吸っていますし、医学を否定している節があります。あと、猫が出てきます。レガゾフ博士が飼っていますし、チェルノブイリ周辺でも風を感じている猫がいました。あちらでは6割の家庭に猫がいるようです。
 重大な欠陥を国家体制のために隠蔽するとは、どうしようもないヴァカかなと思います。改善すればそれはそれでソ連の科学技術の進歩ということで輝かしい功績を残すことができそうなものですが、レガゾフ博士の「安いからです」で納得しました。
 裁判の休憩で血のついたハンカチを見せるシチェルビナ副議長にレガゾフ博士が語った言葉は、泣きました。捨て駒だというシチェルビナ副議長を労うこの場面は泣きます。彼らは正しく命をかけたのです。
 福島第一原発も1号機、2号機、3号機が炉心融解を起こしているようです。内部にある燃料の取り出しが2019年4月に始まりました。ロボットが作業しています。この作業はこの先何年もかかります。2号機と3号機の間にある通路では350マイクロシーベルト毎時の放射線が出ているようです。防護服やマスク無しで通路を通ることはできますが長時間立ち止まることは危険な線量だそうです。ドラマチェルノブイリのレントゲンとシーベルトについては換算することが難しいですが、0.018レントゲン=20マイクロシーベルトという感じでしょうか。技術力の高い日本でも炉心融解という事故を起こしてしまい、これから先途方もなく長い年月をかけて事故を終息させます。原子力は事故がなくても廃棄物処理が人間の手に余ります。
 チェルノブイリとフクイチを乗り越えていけば、人類は新たな段階へ進んでいくことができるのでしょう。科学技術の発達を願います。作中のレガゾフ博士はそれを望んでいるでしょう。私は原子力を否定しません。ですから、放射性廃棄物最終処分場も受け入れます。ただし、核兵器は絶対にダメです。事故ではない実験でビキニ環礁は住めないところになっています。
 ちなみに、現在のチェルノブイリは観光地化しているようです。2020年の来客数を10万人と予測しているみたいです。アウシュビッツも観光地ですし、広島も長崎もそうですね。これが少しでも終息の足しになればいいです。私も事故後のフクイチ周辺へ3回行きました。浪江などのごく一部では日常がありました。だけど、フクイチから数キロの付近は人のいない廃墟が並んでいました。
 さて、一方でチェルノブイリ原発事故処理はウクライナ政府の責任で続いていますが、ロシア連邦が全責任を負うべきでしょう。
 いずれは原子力のない世界へ、きっといつかは人類は克服します。人類は常に発達していくのです。しかし、犠牲が多すぎました。とても直視できません。ああ、でも、人類はきっと乗り越えていきます。