やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「イニシェリン島の精霊」鑑賞感想

ポスター画像

2023年1月日本公開

監督、脚本:マーティン・マクドナー

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あらすじ:住民全員が顔見知りの島で、パードリックは長年の友人コルムから絶縁された。ふたりは毎日通っていたパブで会ってもコルムがパードリックを必死に拒絶する。パードリックは一緒に住んでいる姉の力も借りようとしたが、事態は悪化する一方だ。コルムの真意がわからないままパードリックは苦悩する。

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 コルムのおっさん、本当にやりやがりました。予告をご覧の方ならお分かりでしょうが、パードリックが話しかけてきたらコルムは指を切り落とすというのですが、それは本気でした。見ていられません。映画館の座席で私は硬直しました。

 この映画は難解かもしれません。コルムは指を賭けてでもパードリックと絶縁したいのです。その理由はいったい何なのでしょうか。舞台は1923年4月のアイルランド沖の島です。そのときのアイルランドといえば英国から独立しようとして戦っていたのですが、北アイルランドが英国統治下になりました。そのことに反発してアイルランド国内で内戦が始まります。1923年6月まで続く戦いです。

 コルムは命より大切な指を賭けて、退屈でしかないパードリックに成長を促したと見るべきでしょうか。コルムと姉はどうやら知識人だということがわかります。そんなふたりはパードリックを見限り、さらにパードリックの大切なものがさらに失われていく状況です。成長しない男は何もかも失っていくのですが、追い込まれた彼はとうとうコルムにとんでもないことを仕掛けるわけです。さらに、島には醜悪な警官や商店主がいます。死刑を喜ぶ上に罵詈雑言を撒いて殴る警官、島の醜悪なゴシップを喜び島民の手紙を盗み読む商店主、こんな島は退屈を通り越して早く出ていかなければなりません。コルムはそれを言いたいのでしょうか。

 それとも、パードリックとコルムは内戦に陥ったアイルランド民族を表しているのかもしれません。それにしてもIRAはこんな時代にすでに存在していたのですね。

 面白いのでぜひご覧ください。