2023年1月公開
監督:大友啓史
脚本:古沢良太
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あらすじ:1549年、美濃支配を盤石にしつつある斎藤道三の娘:濃姫と尾張の織田信秀の息子:信長が政略によって結婚した。文武に長けた濃姫は信長の首を取り、尾張を父のものにしてやろうと躍起になっている。そんな濃姫と信長が夫婦としてうまくやっていけるのか。
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東映70周年記念作品ということで力が入っているようですが、どうせ面白くないんでしょうと思いきや……面白いじゃないですか。168分の長尺が気になりません。
等身大の人間として描かれる信長と、歴史資料がないから描き放題の濃姫、歴史ドラマではなく、恋愛ドラマのような、夫婦のドラマになっていました。少女漫画みたいな映画だと誰かが言っていました。
1549年の出会いから1582年の本能寺まで描かれるのですが、合戦の場面はいっさいございません。このあたりの脚本は思い切りましたね。さらに、前田利家、丹羽長秀、柴田勝家、羽柴秀吉などの有名武将は添えるだけです。光秀と家康だけは本能寺のきっかけとなる描き方になっています。今作の本能寺は必見です。そう来ましたか!
歴史ヲタクは、こんなの史実と違うとお怒りになりそうですが、ドラマですからね。あくまでドラマだし、もしかしたらこれが史実の可能性もゼロではないわけですし、ファンタジーとして見ることもできますし、そんなにお怒りにならないでください。合戦をどうしても見たいという方は本作を観ないでください。まあ、でも、いい加減に比叡山焼き討ちと第六天魔王の件は描き方を変えていただきたかったです。比叡山は焼かないといけなかったし、焼いてくれたおかげで今の日本がありますし、魔王も武田信玄の手紙に調子こいて返事しただけじゃないですか。
木村拓哉の信長と宮沢氷魚の光秀は秀逸ですし、家康を演じた斎藤工もこんな演技できるのねと感心しました。作中の家康はデブなので斎藤工だとはわかりませんが。それよりも綾瀬はるかの濃姫がめちゃくちゃかっこよく描かれています。前半の鷹狩では濃姫にこてんぱんにやられる信長がかわいそうになります。そんな鷹狩が本能寺の変で生きてくるわけです。大河ドラマ「秀吉」の本能寺は泣きましたけど、今作も泣きました。
若くてかっこつけることしか考えていない本当にうつけだった信長がだんだん変化していき、ちゃんと織田信長になっていくのも良くできています。
今作で好きな場面は、信長と濃姫がお忍びで京都の街を散策するところです。ただ、この散策もたいへんなことになってしまいますけどね。お忍びデートの結末で、濃姫もやっぱりただの弱い人間だったことがわかります。にもかかわらず信長を炊きつけてしまったのです。
説明セリフの無さも邦画大作にしては珍しいことなのですが、せっかくの本能寺で信長と光秀が説明セリフを口にしたのが残念です。
めちゃくちゃ良い作品というわけでもないですが、邦画大作でもたまには悪くならないものなんですね。