2021年9月日本公開
監督:アンドリュー・レビタス
脚本:デビッド・ケスラー、スティーブン・ドイタース、アンドリュー・レビタス、ジェイソン・フォーマン
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あらすじ:アメリカを代表する写真家として称えられるユージン・スミスは水俣水銀公害を撮影することになった。雑誌ライフに写真を載せるため撮影していたが、金と暴力で妨害してくる者たちがいた。彼の写真はライフへ掲載されることになるのだが、そこへ至るまでに何があったのか、ユージン視点で1971年の水俣を映し出す。
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チッソ株式会社はフィクションでもなかなかないレベルの極悪企業です。15年間、水銀公害の事実を知りながら隠蔽して、金と暴力で市民を黙らせてきました。
しかも、この映画によりますと、熊本県警まで関係者の家に乗り込み何もかもめちゃくちゃにしていたようですな。もう最悪ですな。
これが日本で起きたことですよ。1970年といえば高度経済成長期、伸び盛りのときです。今の日本がほぼ出来上がった頃でしょう。そんなときに警察すらグルになっていたのはもう最悪です。
あと、この映画が地元で公開されていないという情報をSNSで見ました。そんなの、絶対デマですわということで確認したところ数秒でデマだということがわかりました。そもそも水俣市に映画館がないし、水俣市に近い大きな都市の八代市にも映画館がないし、熊本市まで行かないと映画館がないんですよ。熊本市とその周辺の映画館6館で公開されていて、公開館数がむしろ多いということをご理解いただきたいです。
さて、気になるのは、作中の水俣です。
水俣駅が1970年頃のものとは似ても似つかない建物です。駅の構造も日本では絶対ありえないものでした。車両も当時の国鉄では見たことのないものですし、海岸線を走る鉄道の様子もありえないと思います。あのあたりで海岸線を走るのは阿久根のあたりなのではないかということで確認したところ水俣市と津奈木のあたりでものすごく海岸線を走っていました。すみませんでした。
ただし、駅だけはやっぱり当時のものとは違います。肥薩おれんじ鉄道がこの映画に協力しているようですがおそらく車内の様子だけは本物なのでしょう。
あと、民家も石を積んだものなんてありえないでしょう。農家の納屋よりも小さい倉庫みたいな家が10軒くらい並んでいる様子も、いくらなんでも日本のアレな地域でしか見ないものだと思いました。
しかも、海辺で釣った魚をさばく場面がありましたけどマスでした。九州南部の海ではマスが獲れるんですか? すごいですね。
そういうところはちゃんとしなさいよ。
というわけで、水俣、四日市、神通川、阿賀野川の犠牲の上に日本は豊かになりました。そして、今フクイチです。
この映画は水俣水銀公害だけを責めているのではないということもご理解くださいね。世界のすべての公害を責めていますよ。