2021年8月公開
監督、脚本:黒崎博
・・・
あらすじ:太平洋戦争末期、京都大学の研究室が海軍の指示に従い、原子核爆弾を開発しようとしていた。学生の石村が日々ウランをかき集め、実験を繰り返す日々だ。弟が戦地へ向かい、研究室でもうまくいかない研究に業を煮やして戦地へ行こうとする学生が出る。果たして、彼らの研究はどのような結末を迎えるのか。
・・・
RXではありません。
全方位に言及しているし、偏りがほとんどなくていいんじゃないかなと思います。
米軍が原爆を落とした正当性、米軍が空襲しながら笑う声、日本上層部の暴走、沖縄戦、疎開、増える死者、丸め込まれている日本国民、原子爆弾を作る意味を問う研究者たち……
広島には触れたのですが、長崎にはいっさい触れていません。エンディングで福山雅治が歌ったことだけが長崎への目配せといったところでしょうか。
脚本の唐突さなど気になるところもありますし、終盤で石村がやろうとしたことも実験に執念を燃やす研究者の姿勢を表すのであれば、まあいいかなと思うのですが。
作中では原子力がエネルギー問題を解決するんだと言っています。戦後は日本もそうですし、世界中の電力を原子力が支えたのは事実です。戦後の原子力まではっきりと見据えたわけじゃないけど、当時としてはそれが未来の人類を救う技術だと考えていたわけですし、ついこないだまでそうだったんですよ。
ただ、ちょっと、東日本大震災やチェルノブイリの問題をうまく避けた感じもあります。原子力って、本当に危険です。作中でも放射線の危険性を訴えていましたが、当時はまだ危険性をそこまで知らなかったはず……それはさておき放射線の問題をクリアして原子力を制御できれば人類のエネルギー問題は大きく変わるわけですな。
エネルギー問題があるから戦争が起きる。問題を解決して戦争を防ぎたいという研究者でした。彼らは彼らなりに研究を続けます。
それにしても、アメリカってやっぱり広島長崎の実行犯なわけで、奴らの罪を責めたいですな。ま、とはいえ、現実は誰もアメリカに文句言えないんですが。