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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「罪の声」鑑賞感想

ポスター画像

2020年11月公開
監督:土井裕泰
原作:塩田武士
脚本:野木亜紀子
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あらすじ:1984年に日本を混乱させた事件は昭和最大の未解決事件と言われた。2018年、その事件に巻き込まれた人物が真相を調べようとする一方で新聞社でも特集を組むために事件の掘り起こしを目指す。
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 いろいろとひどい作品です。令和の三大クソ映画とまではいかないですが。時効になっているし、30年も経てば関係者が口を割って真相が明らかになるだろうということで調べてみたら何もかもきれいさっぱり真相がわかってしまうという驚愕の物語です。紳士服を作るテーラーと新聞記者が真相を明らかにしました。
 いやいや、そんなわけあるかい!
 警察はミスをするし、隠蔽したり、事件化を嫌がったり、証拠をねつ造したり、ゴミクズ組織だったりしますけど、警察の捜査能力はテーラーと新聞記者の1万倍はあると思いますよ。その警察が散々調べて、未解決になったんですから、30年後に調べてもほとんど何もわからんでしょう。その警察が今作に一切登場せず、テーラーと新聞記者の調査だけですべてがわかるなんて、あるかよ!
 実際のグリ森では、警察は録音テープの声の主まであと一歩だったみたいです。でも、彼らが事件と関係しているという証拠を見つけられないので任意同行みたいなことをできなかったようです。グリ森の警察は各県警の連携や現場の判断などで大きなミスをしてますけど、それさえなければ複数犯と思われる犯人の1人くらいはせめて刑務所送りにできたはずです。まあ、でも、今作の警察が作中の真犯人にたどり着いていなかったという描写もないので実は警察も彼ら犯人グループを知っていたのかもしれませんけども。
 今作の犯人グループは、犯行目的が食品関連会社の株価操作によって金を手に入れることだった、もうひとつは学生運動に参加していた犯人グループの1人が体制の打倒をもう一度夢見た、というわけですが、それらの派手な犯行の一部始終でいろいろと足がついています。だからこそ作中のテーラーと新聞記者は真相にたどり着きました。だったら作中の警察も犯人逮捕にたどりついてもいいようなものですけどね。
 それでですよ、今作についてですけど、マスコミがいい人すぎますし、出てくる人物がどいつもこいつもしゃべりすぎますし、というよりもマスコミ以外のすべてが悪という感じがしました。1984年のマスコミがスクープ合戦に奔走したことを反省するとか言ってますが、反省してないでしょう。
 あと、おじさんは謝罪せず逃亡、お母さんも謝罪せず病死ですが、謝れよおおおお!!! 反省を促す作品なのに、肝心の2人が謝らないなんて、あるかよ!
 あと、それ以外にもおかしな点は山ほどあります。ああ、なんかこれだけいろいろ悪い部分があるとクライマックスでちょっと泣いた私がバカみたいです。
 原作のほうは、グリコ森永事件を小説として書きたいと思った元記者の作品を原作としていて、発生日時や場所などはグリ森と同じだそうです。でも、この映画は社名などを変えているのに、南海なんば駅近鉄百貨店の紙袋、阪神パークレオポン、スーパーマーケットのジャパンはなぜそのままなのですか。

 グリコ森永事件を扱った作品でおすすめなのはNHKが放送した「未解決事件」のfile.01です。もちろんドキュメンタリーですが、再現ドラマも作中でやっています。この番組の中で秀逸だったのは事件当時に捜査を指揮していた大阪府警のおっさんが滋賀県警の独自行動を知らずNHKのスタッフからそのことを聞いて「そんなことあるかよ!!!」という場面です。最高でした。この「未解決事件」は三億円事件などもやっていますし、面白い番組です。