2015年3月公開
監督:三池崇史 脚本:斉藤ひろし
原作:さだまさし「風に立つライオン」
企画:大沢たかお
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あらすじ:ケニアにある長崎大学熱帯医学研究所へ島田航一郎(大沢たかお)は1987年に赴任した。そこからさらに離れたところにある病院へ1ヶ月派遣された島田はアフリカの現実を知る。ボランティアとしてその病院で医師として従事を続けることを希望し、少年兵の心の治療をしていく。
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実在した医師のことを、友人だったさだまさしが歌にして、その歌に惚れこんだ大沢たかおが小説化を熱望しました。2013年小説化、さらに2015年映画公開となったのでした。
アフリカの驚くべき現実です。少年が兵士として紛争に参加して、大勢死んだり傷ついています。アフリカの民族紛争を描いた映画はホテルルワンダ、マシンガンプリーチャー、ブラッドダイヤモンド、ロードオブウォーなどけっこうな数があります。アフリカに限らずキリングフィールドやアンダーグラウンドなどもあります。それらに比べると派手な戦闘場面がないので落ち着いて観ていられます。殺し合う場面がなくてもアフリカの悲惨な現実を知ることができる作品になっています。
ただ作品として長すぎです。インタビュー形式にして、島田とはどんな男だったのかを大勢に語らせる手法で映画が進みます。でも、そのインタビューを削っても十分島田医師のすばらしさが伝わります。
さらに、映像で演出したことをその直後にセリフで説明しているのもよろしくないでしょう。そういうところを削っていけば短い時間で島田医師のすばらしさを伝えることができたのではないでしょうか。
せめて120分を切ってほしかったです。
島田は夜な夜な「がんばれ」と叫びます。それは自分への励ましや戒めでした。島田は「がんばれは自分に言う言葉であって他人に向ける言葉ではない」と言っているのにアフリカの少年が島田に向けて「がんばれ」と言った場面があったのは残念です。
アフリカでは死に至るようなひどい傷を負う少年がいて、一方で日本ではアフリカの少年兵に比べたら大したことのない病気のために医師に診てもらっている、それが映画の中で対比になっています。今の日本人にとってはそれでもつらい病気なのだからアフリカと対比にされるとなんだか申し訳ない気持ちになりますよ。
むしろ日本での場面はばっさり切り捨ててもよかったのではないでしょうか。
ケニアでの撮影は病気が蔓延する中での少々危ない撮影だったらしいですが、もう少しアフリカで心身の治療をする場面を長く撮ってもよかったのではないですか。病院の外へ車で出ていって部族の村を訪ねる場面があります。それを増やしてもよかったのではないでしょうか。
それにしても、三池崇史監督は何でも撮りますね。(30)