2013年11月23日公開
監督:高畑勲 脚本:高畑勲、坂口理子
製作:氏家斎一郎
原作:竹取物語
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今は昔、竹取の翁というものありけり。誰もが知るかぐや姫のお話である。しかし、姫は罪を犯し罰を受けた。
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公開3日目に行きました。そのシネコンで最も広い200人以上入る部屋なのですが、観客はおそらく3人ほどでした。こりゃやべえ。
上映時間137分はジブリ最長だそうです。でも、テンポが良いので長さを感じません。
とと様(地井武男)が竹の中から姫を見つけたところから私は既に涙目でした。当然、かぐや姫は月へ帰りますが、そのときも泣いていました。
とと様とかか様(宮本信子)の声としゃべり方、そして、この絵。まるで日本むかし話ではありませんか。しかも、最初は『今は昔〜』というナレーション付ですよ。懐かしくて懐かしくて、冒頭で泣いたのはおそらくそのせいです。
ただ、泣いたとはいえ、ところどころでよろしくない場面もありました。
赤ちゃんの姫が家の中に入ってきたカエルを追いかける場面です。後半の場面で、都の屋敷で入ってきた虫をかぐや姫(朝倉あき)が逃がします。その虫がバッタなんですよ。これがカエルだったらなあ。
とと様が姫を見つけてしばらく後、今度は黄金や豪華な衣装を見つけてきます。とと様は「姫をこんな山の中で一生を終えるのではなく都で幸せにさせるために天がお授けくださった」と判断しました。山の暮らしを捨てて都の大きな屋敷に引っ越した姫たちですが、姫は山の人たちと仲良く楽しくやっていたのです。都の高貴な姫君としての暮らしが窮屈で退屈で、以前の山のことが懐かしいし帰りたくてしかたないのです。
今回のかぐや姫は基本的にそういうお話なので、屋敷に入ってきた虫がバッタではなくカエルで、昔を思い出しつつそのカエルを逃がしてあげるなどなどの場面があればよかったと思います。
あと、月へ帰らなければならないことを告白するのが急でした。観客はみんな知ってることだけど、後半で急にかぐや姫が打ち明けるのでびっくりでした。
それで、とと様もかか様も大切なかぐや姫とお別れしたくないから当然悲しみますよ。
かぐや姫の噂は御門にまで伝わりまして、宮中へ迎えようとしました。それが叶えば、とと様に官位が授けられるそうです。とと様はかぐや姫が帝に好かれていることと同時にその官位も喜んだのです。
かか様とかぐや姫はそのことが悲しいです。とと様は竹の中から黄金などを見つけてから変わってしまったのです。そんなとと様は、変わってしまったと自覚することなくかぐや姫と別れました。そのことも驚きでした。
救いがない終わり方ではありませんか。かぐや姫が本当に願っていたことに気づかないとと様のままでお別れです。それもまた悲しい結末です。
それと、予告で流れていた屋敷から飛び出すかぐや姫の場面ですが、あれは夢オチとなりますのでご注意ください。夢オチというのは早計でして、倒れたかぐや姫の周りに妖精さんが集まって、屋敷に元通り帰したと観るべきなんでしょうけど。ちなみに私はこの予告の映像は未完成だと思っていましたが、あれは完成品でした。よく動いているものの、個人的には、あくまで個人的にはあまり好かない絵です。「日本むかし話」として観るなら良い絵ですが、懐かしいですが、なんか、物足りないというか。日本アニメの典型的な絵とピクサーのリアル指向の絵に毒されてしまったのでしょうかね。
それともう一度夢オチがあります。山で仲良しだった捨丸(高良健吾)との再会がクライマックスでありますが、それがやや夢オチ気味でした。まあ、でも、捨丸は別の女性と結婚して子供がいますからね、再会したかぐや姫と逃げたりしたら、それはそれでちょっとね。
ファンタジーだから、これくらいの演出は当たり前でしょうかね。
とにかく、かぐや姫は畑から瓜を盗んで食べたから、その罪に対する罰を都で受けることとなったわけです。違うけど。
泣いてしまったけど、悪くないけど、物足りないかぐや姫でした。
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