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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「クロニクル」を観た感想

 2012年製作、2013年9月27日より日本公開。
 監督:ジョシュ・トランク
 脚本:マックス・ランディス

 2012年シアトル。平凡な日常生活を送る高校生アンドリュー、スティーブ、マットはある日特殊な能力に目覚める。彼らの能力は日を追うごとに強くなっていき、雲の上で飛ぶことすらできるようになった。しかし、アンドリューは父親からの暴力などもあり、その力を人に向けてしまうこともあった。
 そんな様子を彼らは自分たちで買ったカメラで撮影していくのだった。

 某ラッパーの宇多丸さんがクロニクルの評論をしたことでその存在を知りました。さらに、なんと地元でも2週間限定公開ということでもはや観る以外に方法がありませんでした。しかも、いつでも誰でも1000円で鑑賞可能です。
 確かに、この映画は面白いです。お近くで鑑賞できるならぜひどうぞ。
 冒頭は平凡な日常を描いた青春映画なのですが、突然、本当に何の脈絡もなくきっかけがやってきます。そんな日々を、アンドリューの持っているカメラだけで撮影しています。前編がそうです。こういうのをファウンド・フッテージ形式というのですね。
 第9地区のように、知らない間に神視点へ移っていくのではありませんでした。彼らの持つカメラで撮りようのない場面も、無理なくほかのカメラで、例えば店に備えられている防犯カメラや同じくカメラを持って常に撮影して回っている女の子の映像を混ぜていきます。
 本編が83分しかないですが、それでアンドリューたちがどのような人間なのかをしっかり描いているのも良いです。
 アンドリューは周りの環境のせいもあり、ねじれた性格となっていました。そのためマットたちを信じません。マットはいとことはいえ、友人でもあります。マットのアンドリューへの思いをアンドリューは汲み取ることができませんでした。
 私自身もそうでした。マットはそんなにアンドリューのことを大切に思っていないように見えていました。マット自身も自分のことでふらついているところがあるようです。マットが女友達に「自分は変わった」ことを訴える場面があります。それも単なる宣言で、どうせ変わらないと見ました。
 でも、そんなことはありませんでした。クライマックスのアンドリューの暴走に、マットは全力で立ち向かうのです。アンドリューを助けるために文字どおり必死になりました。大勢の前でその力を出してしまったところに一番驚きました。まさか、そうまでしてアンドリューを助けようとするなんて。
 こうしてみると、マットに最も感動したようです、私は。
 アンドリューは、まさに厨二病というべき少年であり、私も力を手に入れたらこんなふうになってしまうのだろうかと怖くなる映画です。自制心を育てないといけません。アンドリューが母親の身体の向きを変えたときは少し光明が差しましたが、何が何でも父親がきっかけを作ってしまうのが悲しいです。
 さて、超能力が強くなっていく描写について、最初のうちは小さなおもちゃを浮かす程度で、でも、空を飛んだあたりからはずっと鳥肌が立ちました。宇多丸さんの言うとおりマン・オブ・スティールよりもはるかに力を手に入れたことがわかる映像でした。
 この映画の続編やスピンオフを作れそうですが、それをやってしまうとクロニクルをダメにしそうなので、クロニクルはここで留めておきましょう。(272)