やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「許されざる者」を観た感想

 2013年9月公開の邦画。監督、アダプテーション脚本:李相日
 クリント・イーストウッド監督が1992年に製作した同名映画を明治維新直後の北海道に舞台を置いてリメイクした。撮影は阿寒湖や上川町などすべて北海道。
 渡辺謙主演、柄本明柳楽優弥忽那汐里佐藤浩市などが出演。

 旧幕府軍だったために新政府軍から追われていた釜田十兵衛(渡辺謙)は北海道に逃れて、アイヌの女性と結婚し子を2人授かっていた。1880年、妻を亡くして極貧生活を送っていた釜田一家のところへ馬場金吾(柄本明)が現れる。鷲路村の女郎の顔をボロボロにした男2人に莫大な賞金が懸けられているから稼ぎに行こうという。
 十兵衛は断ったものの、生活は苦しくなるばかりで子2人といっしょに冬を越すことが難しいと考えた彼は先に鷲路へ向かった金吾を追うことにした。
 一方、鷲路では警察署長の大石(佐藤浩市)が力を振りかざしていた。

 イーストウッドのほうの「許されざる者」が私は好きです。名画だと思います。それを日本がリメイクするとはなんと恐ろしいことをするものだとガタガタ震えました。
 今回の作品を観るまでは不安しか感じていませんでした。でも、いざ鑑賞してみると、良い塩梅で改変できているではありませんか。
 明治維新での旧幕府勢力、薩摩長州、侍、農民、北海道開拓、アイヌ、それらの要素を無理なくひとつの作品に盛り込むことができているではありませんか。
 邦画の大作にたびたび出演している佐藤浩市の演技が今回はいつもの佐藤浩市ではないですし、残忍な極悪署長でした。
 その署長にボコボコにされた元長州藩士(國村隼)が村を追い出されるとき署長も含めて大声で罵る様が、あまりにも哀れです。颯爽とかっこよく現れたこの男も所詮は終わった時代の侍であり、こんな村を罵ることしかできない状態に追い込まれるだけの小悪党に成り下がっていたのでした。維新で侍の精神など廃れてしまったのです。
 そして、何より、十兵衛が人斬り十兵衛と言われた過去の残忍な殺人鬼になり果ててしまうクライマックスはただ畏怖を感じるしかありません。
 北海道の雄大な自然が美しいです。あまりにも厳しい自然です。海辺の寒々しさは十兵衛一家を飢えさせていますし。一方で、冬の前の緑が茂る森もあり、薄らと雪化粧した荒れた山もあり、いろいろな面を見せてくれました。
 ただ、人々が背負ってしまう重い罪というテーマでありながらアイヌの沢田が罪を逃れたのは納得いきません。償う場面がほしいです。
 ところで、薩摩からやってきたという男たちが土佐弁をしゃべっていたように思うのですが、気のせいでしょうか。それに金吾のテンガロンハットや署長の衣装や沢田の立派すぎるリボルバー式拳銃など、ちょっとおかしいかなと思います。
 でも、クリント・イーストウッド許されざる者同様に好きな映画となりそうです。(235)