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ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「ウルヴァリン:SAMURAI」(2D字幕)を観た感想(ネタバレ)


 2013年9月公開。アメリカ。
 ジェームズ・マンゴールド監督、クリストファー・マッカリー、マーク・ボンバック脚本。ヒュー・ジャックマン主演。

 1945年8月9日、長崎にローガン(ウルヴァリン)はいた。捕虜として閉じ込められていた。そのとき上空に2機のB29が出現し、空襲警報が鳴り始めた。陸軍兵士の矢志田は少し悩んだが大勢の捕虜を逃がし、さらにはローガンを自由にしようとした。直後、原子爆弾が投下されて高熱を伴った猛烈な爆風が彼らを襲った。
 現代、ユキオと名乗る日系女性がローガンの前に現れる。矢志田が余命幾ばくもない状態であり別れを告げたいから東京まで来いという。ローガンは渋々東京に向かった。病の床に臥せっている矢志田はローガンの不死をなくして人間として自然に老いて死ねるようにしてやろうと言う。矢志田がなぜそんなことを言ったのか。そして、ここで矢志田の孫マリコと出会う。マリコはヤクザから命を狙われているという。ウルヴァリンの戦いが日本で始まった。

 アメコミヒーローの映画が日本における原爆投下について語るとは、衝撃的でした。少しくらいは原爆を投下したことを罪だと認識するようになったということでしょうか。
 ローガンと矢志田は枯れ井戸に隠れたことで助かり、そのあと地表に出てみるとそこは想像を絶する地獄と化した長崎が広がっていました。その様子を見たローガンの表情が印象的でした。
 さてさて、それから現代へと一気に舞台は移ります。はるばる日本から出迎えられたローガンが東京までやってきました。連れてきたユキオ(演じるのは福島リラ)がたいへん変わったお顔をされていますが。それは良しとして。
 今回の映画で、日本はどんな感じで描かれているのか不安であり楽しみでした。それがけっこう意外と普通の、現代の東京なんですね。電車の下を車でくぐって、ネオンで輝く街並みを走っていくという。日本といえばネオン街なんでしょうかね。
 ところが、地理に少々難があるようです。矢志田はアジア最大手の企業を経営しているようでして、大邸宅を持っていました。その大邸宅が東京を一望できるところにあるのです。ですが、海を挟んでいます。そうなると、東京湾の反対側ということになるはずの場所なのですが、東京タワーがはっきりと見えるしそれ以外の超高層ビル群も川の対岸のように見えています。東京湾の反対側となると木更津などになりますが、そこから東京の街並みがあんなにはっきり見えるはずもなく、地理がおかしいです。しかも、この大邸宅が海を見下ろす崖の上でした。千葉市から木更津にかけた海岸線に崖などありません。遠浅の浜辺もしくは埋立地です。
 地理へのツッコミは置いて、大邸宅の周囲になんとサブマシンガンを持ったスーツ姿の男たちが何人もいるのです。いやいやいや、ここは日本でしょう。おかしいですってば。
 さて、そのあと矢志田は死んでしまい、東京タワーのすぐ近くにある増上寺で葬儀が行われました。
 そこでもサブマシンガンを持った人たちが警備しています。そして、なんと忍者の登場です。しかも、この忍者の日本語が片言です。見た目は日本人なのですが。
 葬儀の途中でマリコはヤクザの襲撃に遭いました。ローガンはマリコを守りつつ寺を脱出します。増上寺を出た2人が向かった先はなぜか高田馬場、そのあと上野駅でした。車や電車で逃げた描写はいっさいなかったので、増上寺から歩いて高田馬場経由で上野駅まで行ったということになります。びっくりですね。直線で12キロくらいあるのではないでしょうか。このあたりのツッコミはわかる人だけついてきてください。
 そのあとなぜか、喪服姿のままマリコは新幹線に乗りました。もうわけわかんないです。ローガンが理由を聞いてみると、矢志田の実家あたりへ逃げるとのことでした。
 この新幹線が衝撃的ですよ。なんと、車内の電光掲示板に『東京→長崎』と表示されています。まさかの長崎新幹線開業ですよ。しかも、車両はどう見てもフル規格の新幹線軌道しか走れないような車体ですからね、長崎新幹線は全線フル規格で開業したことになります。何より、東京から直通ということは、JR東海東海道新幹線を16両編成で座席配置もほぼ同じ車両で統一していてそれ以外の編成が入ることを拒んでいるわけで、16両編成の長大編成のまま長崎まで行くということです。す、すごい。
 しかも、この車両は世界のどこの高速鉄道にもないであろう天井に窓です。なんということでしょう。
 さらにさらに、高速走行中の新幹線車両の屋根の上でローガンはヤクザと戦うのですが、なぜか新幹線にないはずの遮断機の音が聞こえていました。
 そしてそして、追っ手から逃れるために途中下車したのは大阪でした。その大阪がなぜか東京みたいに坂だらけの街でした。たしかに谷町九丁目あたりとか坂がありますけど、東京に比べると大阪はほぼ平坦でしょう。
 いいんです、こんなツッコミに何の意味もないことくらいわかっていますけど、お願いですから言わせてください。すみません。
 ああ、すっきりした。これだけツッコミを入れさせてもらったら十分です。ほかにもまだまだおかしな場面がありましたけどもういいです。法務大臣に見えない法務大臣とか果物をリアカーで売るおじさんとか長崎から東京まで車で行くとかその移動も高速道路じゃなくて峠道とか。
 さて、そういうツッコミとは別に、残念に思ったのは物語終盤の矢志田です。実は、矢志田こそが黒幕でした。生きていて、ウルヴァリンと同じアダマンチウムで作られた鎧を着ていました。孫のマリコを殺そうとするし、ローガンの不死を吸い取って自分が不死になろうとするし、それが残念なのです。
 ローガンは矢志田を原爆から救ってくれたのに、その恩を仇で返したのです。そんな物語はやめてほしかったです。矢志田は良い人であってほしかったです。だいたい、マリコとユキオ以外の日本人はどいつもこいつも悪者ばっかりでしたけどね。日本は悪いヤツばっかりですよ、まったく。それが残念です。
 そんなわけでたいへん残念な内容の映画となってしまいましたが、スタッフロールのあともまだまだ続きますので席を立たないでください。おそらく、スタッフロールの後が最も楽しい場面かもしれません。
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