2013年8月より劇場公開。
1972年10月から1974年9月まで続いたテレビアニメの実写化。
紀元前5世紀に宇宙から飛来したウイルスXは800万人に1人の割合で適合する人間のDNAに取り付く。歴史の中で彼らはヴァンパイア、ゾンビ、悪魔と恐れられた。第二次大戦に某国が軍事転用するもののその技術は失われた。しかし、21世紀に新たにウイルスXと適合した人間はギャラクターと名乗り、人類奴隷化を開始する。
ギャラクターは人類の兵器が通用せず欧州が陥落した。一方で、ISOという国際組織が『石』に適合する人類をギャラクターと対峙させて危機的状況を脱しようと試みる。
監督は「家政婦はミタ」などのヒット作を生み出した佐藤東弥。主演に松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽など。
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公開前からおそらく酷評されるであろうことが予想されてしまったガッチャマンの実写化でした。案の定、公開後は酷評されてしまいました。
それでも観なければいけなかったのです。特に理由はありませんが。
事前に酷評を知っておいたおかげでそこまで悪くないかなと思いましたけど。
CGや特撮の技術が向上して、ガッチャマンもいける!と判断されたのでしょうね。確かに、映像はそんなに悪くないです。ただ、ですね。
作中の日本はギャラクターが侵攻しておらず世界中から逃れてきた人々で溢れています。そういう状況の市街での場面がきついです。CGや特撮を必要としませんが、撮影のためのセットを作らなければいけない場面でむしろ安っぽいです。このことは、現在放映中の仮面ライダーやスーパー戦隊でも言えると思います。8/18放送の仮面ライダーウィザードなんて、広々とした駐車場のど真ん中になぜかバス停が設置されていましたし。
それで、映画が始まってみると、本編の前にアニメ「おはよう忍者隊ガッチャマン」が流されました。初めて観たのですが、ガッチャマンをコメディタッチに仕上げた作品ということで、旧ガッチャマンとはキャラが大違いです。はっきり言って、悪い意味ではなくてふざけているのですが、それをシリアスなはずの本編の前にやってしまうのはダメなのではないでしょうか。「本編は真剣に観る必要がありません」と宣言しているような気がします。
それで、本編が始まってみると、ガッチャマンたちはどうして戦わなければいけないのか討論する場面を軸としてアクションを繰り広げます。
実写化の醍醐味であるはずのアクションは前半ですぐに終わります。クライマックスの格闘は鈍重で、あまり身体が動いていないです。
さて、作品に対する批判として剛力演じるジュンが松坂演じるケンに恋をしている点です。実は、なんと、今調べて知ったのですが旧ガッチャマンでもジュンはケンに恋していました。そんなところを踏襲する必要はなかったんじゃないかなー。
ガッチャマンの宿敵ベルク・カッツェが東京に仕掛けようとしている作戦ラスト・スーサイドの内容を知ると思われる者がギャラクターを裏切って亡命を希望しています。それを保護する任務についたガッチャマンですが、大勢の人々がいる中からその亡命者を探します。探している途中でケンが好きだったというナオミのことを聞き出そうとジュンがしつこくケンに話しかけます。任務の途中で何やってるんですかね。もうだめだ、こいつ。
ジュンはちょっと黙ってろ。
剛力は八重の桜にも出演していましたがものすごく演技が下手だと思っていました。それはこのガッチャマンでも改善されていないと思います。演技がうまいならまだ許す余地がありましたよ。
さて、その後も上からの命令を忠実に守って任務遂行しなければいけないわけですが。ケンがかわいそうだなと思う場面もありました。
ケンは上司である南部博士の命令に従います。自分たちの命よりも人類を救うことを優先しろということです。すると、そのことに対してほかの4人が反発します。南部博士と彼ら全員がいる場所で、4人がケンを責めます。こんな任務やってらんねえ、命令ばっかり聞いてないで仲間を大切にしろとリュウたちが激怒するわけです。
え? なんで? もともとそういう命令を出した南部博士が目の前にいるのに、どうして南部博士じゃなくてケンを責めるの? ケンは彼らのリーダーなので、中間管理職としてたいへんだなあと思いましたけど、こいつら頭悪いなとも思いました。
そもそも石に適合できる人間にしかギャラクターと戦えないわけで、その適合者である彼らが自身に課せられた任務に疑問を抱いたらダメなんですよ。疑問を持たないようにするのも南部博士の大切な仕事だったはずなのに、それができていないではありませんか。実戦の訓練も大切ですが、彼らの気持ちに気配りをしておかなかった南部博士の重大なミスでしょう。
その点、原作のガッチャマンでは彼ら5人は人間的に出来上がっていたのでそんなことを教育しておく必要もなかったわけですが。
今作の南部博士は人類のためにガッチャマンは犠牲になって当たり前という考え方を、最後の最後まで変えませんでした。疑問を持ちつつ出撃した彼らを見た博士は安心していました。このおっさん、人としてダメじゃないですか。
ところで、リュウが母親のことを理由に除隊したいと悩んでいましたが、その件はどうなったのでしょうか。
ほかにも、クライマックスでガッチャマンはどうやってタートルキングを人工衛星まで動かすことができたのかなどのツッコミどころがありますし、この映画はダメな作品なんですけど、映像はそれなりだったし、そこまで酷評するほどのこともないかな……。
スタッフロールのあともまだまだ続きますので帰らないでくださいね。続編があるみたいですから。アベンジャーズのスタッフロール後みたいに「ガッチャマンは帰ってくる」くらいのことをやればいいのに。
この映画製作は日本テレビが主体です。その日本テレビが放送中のアニメ「ガッチャマンクラウズ」が9月1日までWEBで無料放送していますのでぜひご覧ください。こちらは本当におすすめの良作です。ガッチャマンクラウズのガッチャマンも自分たちの任務で悩んでいますが、次元が違いますよ。(222)