やくもとうずしおをがっつりと

ほぼ毎日19時更新。「映画鑑賞感想」は配信やDVDなど自宅で見た映画、『映画「タイトル」感想』は映画館で観た映画の感想です。稀に旅日記をやっています。

映画「藁の楯」を観た感想(ネタバレ)


 2013年4月26日から劇場公開開始の邦画。木内一裕の同名小説を映画化。三池崇史監督。孫娘を殺害された政財界の大物:蜷川(山崎努)が新聞やWEBに容疑者清丸国秀(藤原竜也)を殺した者に10億払うことを掲載した。清丸は福岡の警察署に出頭して、福岡から警視庁まで移送することとなった。その移送途中、清丸の警護として銘苅(大沢たかお)と白岩(松嶋菜々子)の敏腕SPと奥村(岸谷五朗)、神箸(永山絢斗)の刑事、福岡県警の関谷刑事(伊武雅刀)がつくこととなった。

 これ、すんげえ面白いじゃないですか。三池監督は、遇の音も出ない畜生が出るような映画をやらせたら完璧なんじゃないか思えてきました。それより何よりエンターテイメント作品は三池監督にお任せですよ。
 ひたすら任務に忠実な銘苅、ちょっと揺れ動く白岩、忠実なようで実はこいつが犯人でしたという奥村、実は任務に忠実だった神箸。4人の警護担当それぞれが面白いですし。関谷刑事は読めないですが。その関谷刑事も実はまじめな警察官であり、最後はあんなことに。
 まじめな人間がひどい目に遭う作品でした。まず、神箸刑事は新幹線車内で10億に目のくらんだヤクザに殺害されるし、次に関谷刑事が新神戸駅で借金を苦にして清丸を襲うおじさんを殺害して連行されていくし、白岩は清丸に殺されるし、無事なのは銘苅だけです。銘苅だって警視庁本庁前で清丸に刺されますけど、生きてました。これで死んでましたってことになると、ひどすぎましたけどね。
 それにしても作中の警察官はどいつもこいつも家庭や自身に問題を抱える人たちばかりですな。本当にもう。
 岸谷五朗は悪役を演じることもあるので、今回も裏切る側なのかなと思っていました。でも、清丸を守ったり、警護チームをまとめようとします。そのことこそが岸谷五朗演じる奥村の狙い:殺害以外の方法で10億を得るためだったわけですから、こいつはやられたなあと思いました。
 関谷刑事の読めない感じは警察官を長年やってきたからこその感じってことなんですね。それと、伊武雅刀の福岡弁は「僕達急行」のときの九州弁そのもので、ちょっと笑ってしまいました。
 序盤の移送は、福岡市内から何百台もパトカーを並べて東京まで向かうというものでした。それがどう見ても西部警察だったので楽しかったです。笑いました。さらに、その巨大な移送部隊をタンクローリーが襲いますが、次々と押しのけられるパトカーが西部警察そのものです。そして、吹き飛ぶタンクローリーね。さらに、そのタンクローリーのナンバーが5963ね。
 何より、そのタンクローリーを吹き飛ばしたのが神箸の射撃ですよ。パトカーの上に立って、拳銃を構えて、運転手を狙う姿、爆発炎上するタンクローリーを背にして傷ついた警察官を引きずっていく姿、かっこよすぎでした。
 残念だったのは、パトカー大部隊による移送を断念して新幹線にこっそり乗り換えたときです。小倉駅から乗るのですが。撮影に使われたのが台湾高速鉄道だったのです。JRの協力が得られなかったのでしょうか。それがあまりにも残念です。JRって新幹線大爆破のときもそうですけど鉄道が被害を受けるような映画に協力してくれませんなあ。
 ただ、駅構内の案内表示や車内の広告などをすべて新幹線そのものにしていたのはがんばりました。
 九州自動車道福岡〜北九州を走行する場面もおかしいといえばおかしいんですけどね。対面通行区間がないのに対面通行だったり。日本国内でアクション映画を撮影するのは難しいということです。なんとかなりませんかね。
 もうひとつ残念なのは、銘苅が白岩を殺したクズ清丸の口に銃口を突っ込んだ後です。いきなり警視庁前に場面が飛びます。私としては、この飛ばし方はうまいとは思えません。移動している場面がほしかったです。ただ、警視庁前まで清丸を連行した後の裁判です。死刑判決を言い渡された(幼女殺害した上に警官を殺害してしまったのだから死刑かどうかわからない状態から死刑確定したでしょ。)後の清丸の最期の言葉が最悪の最高ってやつでした。クズの中のクズでした。
 清丸の畜生ぶりや序盤のアクションなど、見どころ満載のお腹いっぱいになる映画でした。三池映画三大畜生の誕生です。(164)