2013年春日本公開のディズニーアニメ長編。監督はリッチ・ムーア、製作総指揮にはあのジョン・ラセター。
あらすじ:アメリカで長年親しまれているアーケードゲーム「Fix-It Felix」の悪役キャラ:ラルフは嫌われ者の悪役を演じ続けることに嫌気がさした。皆に認めてもらうためヒーローのメダルを探しにゲームを飛び出した。手に入れたはいいもののお菓子の世界で繰り広げられるレースゲーム「シュガー・ラッシュ」に入りこんでしまう。そこでラルフは仲間はずれにされているヴァネロベに出会う。
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結論から言えば、面白いです。さすがはジョン・ラセターが関わっているだけあってすばらしい映像美です。ゲームの外の世界、人間の世界とゲームの中の世界の絵に差をつけていますし。それはヒーローズドューティというゲームにおける絵の違いにも表れています。世界ごとの絵の違いに感動です。
ゲームの世界にあるルールが複雑のようですが、うまく説明できていると思います。サイバグがシュガーラッシュの世界で死んだとみせかけて実は生きていたあたりはもうちょっとはっきりしてほしかったです。サイバグはどうしたら死ぬのかわかりづらいです。
冒頭でのセミナーというか互助会というらしいですが、あんな感じの話し合って慰めあう場面を、アメリカ映画はたびたびネタにしますよね。あんな互助会に対してアメリカの社会は冷たいのか、批判しているのか、それとも別の何か、気になります。
伏線もしっかりしております。「ターボする」という言葉は重要ですよ、最後までその言葉を忘れずにいてくださいね。
あと、ゲームごとの小道具もよく生きています。細かいところまで演出などが行き届いております。丁寧な映画です。
ただ、どうしても気になる点があるわけで、それがけっこう大きいです。
最初の10分から20分は、この映画が「その人にはその人の役割があるなんてそんなことはない、新しい可能性を見せてやるぜ」ということを教えてくれるのかなと思って、期待に胸を膨らませることができます。
ゲームの中では、悪役は悪役としての役割があるわけで、でも、この映画はきっと新しい道を示してくれる、そんな夢を見せてくれるんだろうなと期待しました。
ところが、結局は、その人にはその人の役割があるんですよね。その人がやるべきことがあって、守るべき場所があって、最後にはその場所に戻ってしまうんですよね。
がっかりの終わり方ですよ。
そりゃあ、もちろん、ラルフはヴァネロベを救うことに成功しますよ。壊すことが仕事のラルフもその能力を逆手にとって道路を作ることができました。新しい可能性をちょっと見せてくれましたけど、その能力を生かしてくださいねということですよ。
一時的に息抜きをするため違う世界に行きましたというような映画ですな。
それと、ヴァネロベのようなキャラは大嫌いです。生意気で勝気で嫌味ばっかり言いやがってふざけやがって。にもかかわらず、ヴァネロベとラルフの絡みで3箇所ほど目頭が熱くなりましたけどね。
結末にがっかりな部分もありますが、映画全体としては十分に合格の作品です。ジョン・ラセターが少しでも関われば良い映画になるんですね。おすすめです。(123)