概要・あらすじ
アメリカで製作された映画で、監督はキャスリン・ビグロー。前回監督作2008年のハート・ロッカーに通じる内容。9・11テロ後、CIAは巨額の予算をつぎ込みビンラディンを追うが、何の手がかりも得られずにいた。そんな中、CIAパキスタン支局に若く優秀な女性分析官のマヤが派遣される。マヤはやがて、ビンラディンに繋がると思われるアブ・アフメドという男の存在をつかむが。
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面白かったです。
何をやってもうまくいかず、被害が増えていき、時間が流れてしまう、苦しい展開が続きます。それが飽きさせません。
観終わったときほかのお客さんが「難しすぎたなあ」と言っていました。でも、至極単純な内容です。ビン・ラディンの行方を追うだけですから。アクションも多いですし。
また、アメリカ寄りの視点に偏ってしまっているという感想を見つけました。
ビン・ラディン側による自爆テロでパキスタンのホテルが被害を受けます。そのときホテルの従業員が傷ついていました。彼らは欧米人ではないし、現地の人間です。欧米に協力しているつもりもないでしょう。そんな人間たちも巻き込まれているのですから、アルカイダは極悪だと思えてきます。
マヤたちによる逮捕者の拷問もそんなテロを防ぐためなのだからしかたないという感じです。しかも、その拷問を批判しているのがアメリカ政府だったりします。イスラム社会側からの批判が、デモという形で描かれているものの、そのデモもマヤに対して牙をむくものでした。
アメリカ寄りの視点になっていますねえ。
ただ、そんな描き方だからこそエンタメに振り切っていて、楽しめてしまうのです。
それで、気になった部分としては演出のしかたです。映画評論家でもある宇多丸さんが『チャカチャカ演出』という言葉を使っています。それが今作でなんとなくわかった気がします。
それは、やたらとカットが入るというものです。やたらと視点が切り替わるのです。観ていて疲れるし、誰の視点で観たらいいのかわからなくなるのです。
それでも、157分という長尺をあっという間に楽しめたというのは、CIA宣伝のエンタメ映画として良作の証拠なのでしょう。(82)