あらすじ:
ある日、プリンのことでけんかしたしんのすけ(声:矢島晶子)と妹のひまわり(声:こおろぎさとみ)。そこに「ひまわり姫をお預かりします」という謎の男二人が現れた。ほいほい喜んで渡された紙にサインをしてしまうしんのすけだったが、次の瞬間、上空に現れたUFOに野原一家は吸い込まれてしまう。到着したのは“ヒマワリ星”という見知らぬ星。星の王ゴロネスキーは「ひまわり様が姫にならなければ地球もヒマワリ星も消滅する!」と叫び、急激な展開に茫然とするひろし(声:藤原啓治)とみさえ(声:ならはしみき)。しかし、しんのすけがサインしたのは全て了解するという「宇宙契約書」であった。ひまわりが姫になるということは家族が離ればなれになるということ。妹を選ぶのか、地球の未来を選ぶのか、果たしてしんのすけの選択はどうなるのか。
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以下、ネタバレ。
宇宙といっても範囲はけっこう狭くて、太陽系の地球軌道の中から出ることはないです。何しろ、ヒマワリ星は太陽の反対側にある地球の兄弟星なのですから。
また、ひまわりが姫になる必要はありませんでした。ヒマワリ星にひまわりがいればそれだけで良いのです。
それと、今回は悪との戦いではありません。ヒマワリ星のキングがまるで悪い人に見えます。明らかに悪役の笑い方をするのですが、そういうキャラのようです。悪い人は出てきません。
さて、ひまわりがヒマワリ星にいなければいけない理由ですが。地球とヒマワリ星はヒママター(簡単に言えば平和をもたらす物質)を分け合っています。ところが、地球がヒママターを出すことができなくなりました。そのため地球では争いが絶えなくなり、200年後には地球が崩壊してしまうというのです。分け合っているヒマワリ星も兄弟星を失うわけにはいきません。でも、ひまわりがヒマワリ星にいればヒママターが大量に放出されて地球も救われるのです。
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ここで問題になってくるのは、家族の別離です。ひまわりはヒマワリ星にいなければならない。でも、しんのすけ、みさえ、ひろしはひまわりといっしょに地球に帰りたい。家族がいっしょに暮らすことが大切なのか、それとも地球の安寧が大切なのか。平和のために家族が犠牲になってもいいのか。
今回のクレしん映画のテーマは家族愛でした。
正直なところ、ひとつの家族の絆が地球のためになるなら、その絆とやらは犠牲になってほしいですよ。だからこそ、家族の絆は地球より重いということをもっと強く訴えてほしかったです。いつも強いメッセージのあるクレしん映画シリーズですが、今回はあと一捻りほしいです。
また、かったるい場面が多いです。もっと絞れば良い映画になったのではないでしょうか。
とか言いつつ、しんのすけがサインしてしまったことの重大さに気づいたあたりから泣いていましたが。大切な人のために本気になる人たちの姿が美しいです。
今回は、家族が家族のためにがむしゃらになるその姿を観るべきものなんですよ。そこに集中すれば、この映画は高得点です。去年の「黄金のスパイ」はよろしくなかったですが、今回は良いです。戦国大合戦やオトナ帝国に比べるわけにはいきませんけれども、しんのすけの見せる成長に涙せずにはいられないものでした。